36:犯罪姉妹・ユーリ&シルちゃん爆誕!
「もうもうもうっ、本当にもうっ! なんでアンタ、人のチャンネルで宣戦布告なんてしてんのよ!? これはアタシが目立つために、頑張って色々調べて作ったチャンネルなのよ!?」
「チャンネル自体の知名度は上がっただろ? よかったじゃないか」
「そりゃそうだけどぉ!」
PK集団を抹殺してから小一時間後。俺は集団のリーダーであるシルと一緒に、ついに東の果てに辿り着いた。
目の前には月光に照らされた巨大な城塞都市、『ヘルヘイム』の姿が。ここまで来るのにすっかり夜になっちまったなー。
「てかシル、なんでついてきてんだよ?」
「ぐっ、ぐぎぎぎぎぎぎぎ~~~! ア、アンタに文句を言うためについてきてたら、いつの間にか戻れなくなっちゃったからよ! 何よこのあたり、モブモンスターのレベルが40とかあるんですけど!? 一人で歩いてたら殺されるわっ!」
「そりゃあ現状行ける限りの世界の果てだからな。安心しろ、お前のことは俺が守る」
「ってカッコいいこと言うな!? アンタのせいでこんなところに来ることになったんだからねーーーッ!」
グシャグシャと赤い髪を掻き毟るシル子さん。そんなことしてるとハゲるぞ。
「はぁぁぁ……つーか魔王様。アンタ、この街に何の用があってきたのよ?」
「決まってんだろ。この街の支配権を乗っ取って、丸ごと俺のギルドホームにするためだよ。ワールドマップで見る限り一番デカい街みたいだしさ。真ん中に城もあるし理想的だな~」
「ちょっ、はぁあああッ!? アンタなに言ってんの!? そんなこと出来るわけがっ、」
「出来ないとは限らないだろう? ギルドの建設説明のところには、『建設権利』と『保有している土地』さえあればそこを拠点に出来るって書いてあるからな。土地の大きさの制限とかは書いてないだろ」
そう言うと、シルは「いやいやいやいやいや、そんなわけが……ええ、そうなの……?」とメニューを開いて建設説明のページを睨み始めた。
やがて本当にそういった記述がないことを認め、肩をガックリと落とす。
「あぁ、マジで制限とか書いてないわね……ここの運営ガバガバすぎでしょ。
そんでアンタもアンタで、制限の記載がないからってよく街ごと乗っ取ろうなんて考えついたわよね……普通ムリとか思うでしょ」
「人間に無理はないって信じてるからなッ!」
「いやなんでそんな闇落ちしたヒロインみたいな見た目で熱血系なのよ……!?
ンで魔王様、どうやって街の支配権を奪い取るわけ? まさか領主NPCをぶっ殺すとか……」
「アホ言え、そんなことしたら犯罪者として追い回されるだろ。方法は街に入ってから考えるから安心しろ」
「って無策でここまできたんかーい……!」
天を仰ぎながら深いため息を吐くシル子さん。最初は邪悪顔だった彼女だが、今では疲れ切った表情が板についてきた。
プレイヤーキラーをやっているような邪悪女だからな、きっと勇者である俺から放たれる正義オーラに当てられて精神力を削られてるんだろう。俺を見習ってまともになれよ。
そうして俺はシルを引き連れ、『聖上都市ヘルヘイム』へと入っていった。
◆ ◇ ◆
聖上都市ヘルヘイムの建物はどれも白色で塗りたくられていた。街の各所に教会らしき建物が点在しており、白いカソックを着たオッサンたちがたまに道をすれ違っていく。
どうやら宗教が盛んな街らしい。ちなみに俺は『気合と根性』教だぜ。
「おーい魔王様ー、露店でこの街の情報を聞いてきたわよー。ついでにおやつも買ってきたわ」
「おうありがとうな。ちなみに俺は魔王じゃなくて勇者だぞ」
「いや、アンタのどこに勇者要素があるっていうのよ……!」
シルが買ってきたフランクフルトを受け取り、二人でかじりながら街を散策する。
「露店のNPCが言ってたんだけどね、なんかここの街、『聖上都市』って言うだけあって宗教連中がすっごい権力を握ってるらしいわよ」
シル曰く、この街は国教である『ユミル教』の聖地らしい。
ユミル教はとにかく悪を許さない。このゲームのラスボスである魔王がバラまいた邪悪なモンスターたちを容赦なくぶっ殺し、世界を平和にするのが教義なんだとか。
へーっ、なんか俺好みの好戦的な宗教だな。ちなみに俺もモンスターをいっぱい手下にしてるが、アイツらは俺の勇者オーラで邪悪じゃなくなったからセーフだろ、たぶん。
「じゃあ教会関係者に接触してみるか。もしかしたら『ユミル教総がかりでも倒せないモンスターがいるのだ。討伐をお願いできるか?』的なクエストが発生して、報酬に街を貰えるかもしれないし」
「いやいやいやいや、ポンと街は渡さないと思うけど……でもそういうクエストは絶対にありそうよね。
アタシもお金とか欲しいし、出来るだけ偉そうなNPCに話しかけてみましょうよ。そういうヤツのほうが美味いクエストをくれるものだわ」
「だな。それなら……おっ、あそこを歩いてるヤツなんて偉そうじゃないか?」
何やら遠くのほうに、道のど真ん中をズンズンと歩く神父がいた。後ろには何人かの少年修道士たちを引き連れていて、ものすごく偉そうだ。道を行く人たちも頭を下げてるみたいだしな。
ジーッと見つめると、やがて視界の端に『上位NPC 教皇グレゴリオン』という文字が。なんか合体ロボットみたいな名前だな。
それはともかく、
「しめたっ、アイツ教皇だ! たぶんこの街のトップだぞ!」
「ひゅーっ、流石は幸運値極振り! そりゃツイてるわね! じゃあさっそく接触してみましょうよっ」
オッサン目掛けて二人でまっしぐらだ! 俺たちの未来は明るいぜッ!
「「すいませーん、イイ感じのクエストくださーい!」」
そうして俺たちが話しかけた時だった。グレゴリオンというオッサンはギョッと目を見開き、
「我がスキル【教皇の心眼】が訴えておる……そこの赤毛少女、キサマ殺人鬼だなッ!? 戦士たちの間で『プレイヤーキラー』とも呼ばれてる人種だ!」
「ぎくぅッ!? そ、そんなことわかっちゃうの!?」
「そしてそっちの銀髪美少女、キサマは……いったい何なんだッ!? ブーツからボスモンスターの気配が漂っておるぞッ!?」
えっ……あーーー! そういえば俺のブーツ、アーマーナイトのマーくんを宿してるんだったな。
でも大丈夫だっ!
「安心してくれ、マーくんはいい奴だから。ユミル教の教義でいうところの『邪悪なモンスター』ではないぞ」
「えぇい黙れ黙れッ! モンスターである時点で、全ては抹殺すべき『悪』なのだッ! 者ども集えっ、この者たちをひっとらえろ! 死刑だ死刑だーーーー!」
『ははぁーーーーッ!』
教皇の叫びに応え、どこからか集まってくる衛兵たち。
俺たちが驚いてる間に周囲を完全包囲されてしまった。
そして俺とシルの前には、『アナタたちはヘルヘイムの法を犯しました。違反内容:「イベント以外でのプレイヤーキル数20件以上での街への侵入」「街中でのモンスター同伴」。これらがNPCに露見したため、ヘルヘイム巨大地下監獄まで連行されます』――というメッセージが。
かくして俺たちは、街に入ってから五分そこらで死刑囚になってしまうのだった。
……ってふざけんなゴラァーーーッ!? もうぶっ潰してやるわこんな街オラァアアアアッ!
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というわけで(記念日なのに)主人公が逮捕されましたが、これからもよろしくお願いします!
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