32:運営反逆編開始・再起動するやべーやつ!
みなさまいつもご感想ありがとうございます!たくさんの反応が戴けて嬉しいです!
なかなか全てにはお返しできませんが、ちゃんと全部見ていますよ!疑問やご指摘には頑張って応えていきます!
また先日、「まだゲーム開始から一週間もしてないのに、どうしてザンソードさんは『サムライマスター』という字面的にかなりの上位職になれたのか」というご質問に頑張って頭を回した結果、「ザンソードさんが無職だからです」と答えることになりました。
というわけで、ちょくちょく名前が出てくるザンソードさんは無職ということになりました……!
本編に出てきたら優しくしてあげてください、よろしくお願いします……!(´;ω;`)
ゲーム開始から七日目。メンテナンスでログインできなかった昨日は大変だった。
学校で文化祭があったんだが、クラスの女子たち(+なぜか一部の男子たち)に『仮装屋』というコスプレ衣装を貸してくれる出し物屋に連れていかれ、女物のドレスを着せられることになったのだ。
そうしたらみんなキャーキャー騒ぐわ、衣装を作った手芸部の先輩は「あぁ素晴らしいッ! とんでもない逸材発見ですわーッ!」と鼻息を荒くしてメイクまでしようとしてくるわで大変だった。
しかもたまらず逃げ出したところで、ゴリゴリマッチョな担任教師と衝突して転倒。
ヤツは俺のことをクラスの男子とは気付かず、「大丈夫ですかい、お嬢さん? よければこの後、オレと一緒に文化祭デートでも……!?」とナンパしてくる始末。当然俺は逃走したのだった。
そんな不幸すぎる体験から一日。俺はゲームにログインするや、さらなる不幸を味わうことになる。
「なっ、なんだこりゃー!?」
街の広場に降り立った瞬間、目の前に表示されたメッセージ。それを見て俺は大声を上げた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・アップデートに伴い、戦闘システムのバランス調整を行わせていただきました。
主な変更点は以下のものになります↓
1:一部のプレイヤーの暴走を受け、サモナー系ジョブの効果によって仲間になったモンスターのステータスを、『0.8倍』に弱体化させます。
2:一部のプレイヤーの暴走を受け、巨大モンスターの再召喚までの時間を10分から『一時間』に変更します。
加えて大変申し訳ありませんが、『ギガンティック・ドラゴンプラント』のレーザー攻撃の威力を減少することになりました。どうかご理解くださいませ。
3:一部のプレイヤーの暴走を受け、仲間になるボスモンスターは一種類に付き一体までということになりました。
またボスモンスターは憑依状態であるものを除き、一度に一体までしか召喚出来ないことになりました。
加えて大変申し訳ありませんが、『バニシング・ファイヤーバード』の飛行持続時間および高度を、『15分と20メートル』から『5分と10メートル』に減少することにしました。本当にご理解ください。
4:一部のプレイヤーの暴走を受け、アーツ『滅びの暴走召喚』の再使用までの時間を、10分間から『一時間』に変更します。また召喚できるモンスターの数は一度に百体までとします。どうかどうかご理解くださいませ(運営・サモナー開発担当より)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「おっ、おのれクソ運営ッ!? これ全部俺に対するいやがらせじゃねーかッ!」
一部のプレイヤーとか言ってるけど、絶対に俺対策だろ!? なんて仕打ちだコンチクショウ!
……まぁ一日経って冷静になってみれば、俺もすこーしだけ暴れすぎたかなーという自覚もなくもないが、それにしたってこれはあまりに酷すぎる。俺のコピーを大量発生させないためだろうが、まさかここまで徹底してくるとは。
さらに修正報告はまだまだ続いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5:仲間になった憑依モンスターたちのスキル【飛行】の勢いを弱体化させます。
それにともない、『リビング・ウェポン』を宿した矢のホーミング能力がほとんどなくなることになりますが、どうかご理解ください。複雑軌道で迫ってくる矢はとても回避できるものじゃありません。
また、『シャドウ・ウェポン』のスキル【闇分身】も弱体化させます。分身数を、九体から三体に変更します。MPを消費するアーツでもないのに、百を超える矢の雨は降らせるのはまずいです。サモナーのジョブにそんなことをされては、正規弓使い職の『アーチャー』が完全に泣きます。アーチャーのアーツだって矢が十本に分裂するのが限界なんです。
サモナー開発担当は何を考えていたんでしょうか? どうかご理解ください(運営・アーチャー開発担当より)。
6:ダメージアップ系スキルの倍率を、どれだけ同時発動しても十倍までとします。
行動することによってスキルが追加されていくシステム上、今後どんどんスキルが追加されていくことを思うと、「これゲームが進むたびにプレイヤーたちが際限なく火力インフレしまくるんじゃねぇか?」とやばいことに気づきました。ほぼ確実に毎回すべてのダメージアップ系スキルを発動する人もいて恐いです。
またスキル【根性】系統に、『再発動まで5秒かかる』という制約をかけました。幸運値爆上げで三十回以上も連続発動されては堪ったものではありません。
幸運値のシステムを考えたステータス開発担当は何を考えていたんでしょうか? どうかご理解ください(運営・スキル開発担当より)。
7:ステータスの仕様変更については特に何もありません。他の担当者が色々調整してくれたので、極振りを禁止する必要もないでしょう。
ステータスの開発担当者である僕とサモナーの開発担当者である者は、あのイベントのあとで他の者たちからさんざん罵られましたが、そもそもチーム全体の連携がうまく取れていないことが悪いと思うんですよ。あと僕に比べたらサモナー開発担当のほうがめっちゃやらかしてると思いません?
僕は被害者です(運営・ステータス開発担当より)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ってチーム内でギスギスしてんじゃねーよ!? 本当にクソ運営だなッ!」
一番の被害者は俺だっつのッッッ!
もう文面を見ているだけでもイライラする。たまにプレイヤーを和ませるために公式説明にネタ文章を忍ばせるゲームもあったりするが、クソ修正を食らった俺からしたら全然和まねーよバカ! 焼け石に水だわ!
他にも『現実の通貨でゲーム内通貨を購入できたり、逆にゲーム内通貨を現実の通貨に変換できる』とか『ストーリークエストの実装にともない、各地に多くの街が実装された』という報告があったが、サッと流し見て俺はメッセージウィンドウを掻き消した。
ろくに戦えなくなった状態で新機能なんて楽しめるか。
「はぁー……つまりまとめるとこういうことか。モンスターたちは弱体化し、ボスモンスターを出しまくって蹂躙も出来ず、弓は絶対命中能力も数も失い、火力にも制限が付いて、【執念】は5秒に一度しか発動しなくなったと」
うーん、かなりきつすぎるなぁ。
モンスターの弱体化についてはまぁ何とかなる。あのバトルロイヤルで【魔王の眷属】っていうモンスターのステータスを常時1.3倍にするスキルを覚えたからな。これでプラスマイナスほぼゼロだ。
ボスモンスターのラッシュは諦めるとして、次は弓についてか。
「出てこいポン太郎」
『キシャシャ~……!』
漆黒の光を放つ矢を召喚すると、普段よりも飛び方が弱々しかった。たしかにこれでは急激な軌道変更はできなさそうだ。
“ユーリの姉貴、運営組のやつらにヤラれた……もう駄目だ……!”って感じの悲しそうな声を出すポン太郎を胸に抱き締めてやる。よしよしよし。
う~ん、矢の雨を降らせることが出来なくなったことはどうしようもないが、命中率はどうにかなりそうだ。
バトルロイヤル中に【魔弾の射手】っていう射出したものにホーミング能力をつけるスキルを覚えたからな。
試しに『ドラゴンプラントの種』というアイテムを取り出し、少し離れたところでエサを探していたハトに投げつけてやる。
すると、
『クルッポ~!』
「あっ、外した……」
……種はハトに向かって飛んでいったのだが、それまでだった。咄嗟に飛び立っていくハトを追うこともなく地に墜ちる。
「あーなるほど……ホーミング能力といってもこの程度か。狙った獲物が大きく動くと、それには対応出来ないんだ」
止まっている相手には当たるだろうが、動きの速い相手にはあまり効果がなさそうだ。
まぁさっきのはただの種で、ポン太郎たちにわずかに残っている飛行能力と合わせればもう少しホーミング能力は上がりそうだが、これからは絶対必中とはいかなそうだな。
俺はドラゴンプラントの種を拾い上げながら、もう一度深く溜め息を吐いた。
「はぁ~……そんで最後に【執念】の連続発動不可かぁ。これは本当にどうしようもないな……」
もうHP1でプレイするのは無理ってことか。
かといってHP1じゃなくなったら幸運値を跳ね上げるスキル【逆境の覇者】などの効果がなくなるし、そもそもHPが1じゃなくても俺は防御ゼロだからすぐ死ぬし。もうどうしろってんだよ。
もう幸運値極振りはやめて、今から他のステータスに振るか? バトルイベントで大量にレベルアップした時に手に入ったステータスポイントは実はまだ振ってないしな。
そんなことを考えながら、俺はステータスウィンドウを開き……、
「――こうなったら意地だコンチクショウッ!」
俺は大量にあったポイントを全て幸運値に捻じ込んだ!
よし、これで覚悟は決まった。どうせ今からステータスを組みなおしても、まともなステータス構成にはならないんだ。だったら極振りを貫いてやる。
それにここで退いたら俺は運営に負けたことになる。今回の変更でやつらは『サモナー・弓・幸運値極振りの組み合わせはゴミに戻った』と思い込んでいるだろうが、そうはいくか。
「俺はこの不遇要素満載スタイルで、さらに強くなってやる。イベントというイベントで結果を出しまくって、やつらを困惑させまくってやる……!」
そのたびにピンポイントで修正されようが、俺は絶対に諦めない。
というかイベント優勝者のステータス構成に対して連続であからさますぎる規制をしてては信用問題だ。それは確実に負の話題となり、『頑張ったら弱体化させられるゲーム』としてプレイヤーたちが大量に離れていくことになるだろう。
そう……気合と根性で優勝し続ければ、いずれやつらのほうが先に根負けするのだ。
意地でも活躍し続けてやつらを黙らせてやる。アイテムを獲得しまくって売りさばき、例のゲーム内通貨現金化機能でふんだくってやるのもいいだろう。
男としてやられっぱなしで終わるかよ。俺は運営のやつらにも手出し出来ない、本当の『ラスボス』に成り上がってやる……!
「見てろよクソ運営……! 最強のプレイヤーとして常にトップを走り、このゲームを楽しみまくってやるからなぁ……!」
そう決意したらさっそく行動だ。
たしかイベントポイントを使って、限定アイテムや限定スキルを手に入れれるんだったな。
メニューからそのページを見てみると、『手に入るアイテムは全種類一つまで。また限定スキルは三つまでしかセットできません』と書いてあった。イベントで活躍できなかったプレイヤーと差をつけ過ぎないためだろう。
「よし、どうせポイントは山ほどあるんだ。色々試してみますか」
そう呟きながら、俺は街の中で戦闘が出来るという『修練場』なる場所に向かって行った。
・運営はやべーやつを本気にさせました。
↓↓『クソ運営滅べ!』という方より『ブックマーク』に『ポイント評価』、お待ちしてます!