30:出禁
なにげに初めての死亡体験だったなぁ。
俺は『復活の神殿』という場所で蘇った後、観客たちの集まった広場に戻ってきた(ちなみにバトルロイヤル用の特殊フィールドに放り捨ててきた弓は、なんかすごい必死そうに回転しながら次元の壁を破って戻ってきた。すごい)。
俺の姿を見た瞬間、数万人のプレイヤーたちが「キャァアアアア! 魔王様でたーっ!」と歓声を上げたり「ギャァアアアアッ!? 魔王様でたーッ!?」と絶叫を上げたり、広場はにわかに騒がしくなる。
「うわっ、近くで見ると本当に綺麗すぎる!? ス、スクショ撮ってもいいかな……!?」
「やめろッ、あんな見た目だが中身は鬼畜だ! 参加者だったオレにはわかる!」
「すげぇ……弓なんて接近されたら邪魔になるだけのゴミだと思ってたけど、マジで躊躇なくゴミみたいにポイ捨てして殴り合いで決着付ける人初めて見た……ッ! 遠距離武器使いのくせに打撃戦に移る判断が速すぎる……!」
「なんか弓を打つより殴り合いのほうが慣れてなかった……? え、あの綺麗さでスケバン姉貴……ッ!?」
ざわざわと俺を遠巻きに囲うプレイヤーたち。ふふふ、有名人になるというのはいい気分だ。
よし、ここはファンサービスしないとな!
「ありがとーありがとー! 注目してくれるお前たちのためにも、やっぱり二回目のバトルロイヤルにも出てやるかぁ!」
「「「すいません魔王様やめてくださいッ!」」」
ってまた止められた!? 解せぬッ! 俺は出るぞコンチクショウッ!
そうして、さっきぶっ倒したプレイヤーたちから恐れられたり、サモナーや弓使いのプレイヤーたちから「オレたちも頑張ってみようと思った!」と感謝されたりしながら騒がしく過ごしていた時だ。不意に背後が光り輝いたと思うと、なんとオーディンの爺さんが転移してきたのだ!
突然の事態に周囲のプレイヤーたちと共に驚く。
「なんだ、襲撃か!? バトルか!? いいぜこいよ、相手になるぜ!」
『って違うわッ!? おぬしだけとはやりたくないわいっ!』
「そうなのか? 俺は人間をぶっ倒す喜びに目覚めたところなんだが」
『ひえっ、やべーやつを覚醒させちゃった……!?』
爺さんは一瞬ガチで怯えたあと、咳払いをして表情を改める。
『あーゴホンッ! ワシが会いに来たのは他でもない。第一回目のバトルロイヤル優勝者であるおぬしを讃えに来たのじゃ! 諸君ッ、ユーリ殿に今一度盛大な拍手を送ってやってくれ!』
その瞬間、多くの拍手とワァァァァッという声が再び広場を埋め尽くした。まぁ俺に負けた一部のプレイヤーたち(コリンのやつとか)は青い顔をして黙っていたが、「フィールドで会ったらヨロシクな~?」と協力プレイしようぜ宣言すると、ビクンッと震えた後なぜか壊れたオモチャのように涙目になって拍手し始めた。不思議なやつらだぜ。
拍手がある程度収まってきたところで、爺さんは言葉を続ける。
『ユーリ殿だけでなく他の戦士たちにも説明しておくぞい。
今回手に入ったイベントポイントは、なんと限定アイテムや限定スキルなどと交換できるのじゃ! また一度手にしたイベントポイントは無期限で持ち越しできるため、あえて取っておくのもいい。イベントのたびに交換できる景品を増やしていく予定じゃからのぉ』
お~限定アイテムに限定スキルか! それは魅力的だなぁ!
今回の戦いで三万ポイント近く手に入れたから、これくらいあれば何でも交換できるだろう。それに第二回から第五回まで全部のバトルロイヤルに出てやるんだからな! まだまだ稼いでやるつもりだぜ!
『さて、次に優勝者への特別プレゼントについてじゃ!
今回開かれる五回のバトルロイヤル。それに優勝した者にはそれぞれ、「ギルドホームの建設権利」を授けよう!』
「ギルドホームだと……!?」
爺さんの言葉に、俺をはじめとした全プレイヤーたちがざわついた。
ギルドといえばプレイヤーたちが集まって作る組織のことだ。別のゲームではクランともいう。
たしかこのブレイドスキル・オンラインにはないシステムのはずだが……、
『フォッフォッフォ、驚いておるな!? ここで発表するとしよう! 明日行われるアップデートに伴い、ギルドシステムが実装される予定じゃぞい! ギルドでのみ参加できる特殊イベントやクエストも実装予定なので、どうか楽しみにしておってくれ!』
爺さんの発表にオオオォォォ~という声が響いた。
それはたしかに楽しみだなぁ。ギルドでのみ参加できるイベントといったら、やっぱりギルド間抗争とかだろうか!?
いいなぁ~抗争。してみたいな~。ウチの爺さんが子供の時から見せてくれた任侠モノ映画でよくやってるやつ! あれ一回やってみたかったんだよな~。
「敵の事務所への単騎特攻はロマンだよなぁ……」
『なっ、なんか優勝者が不穏なことを言ってるけど無視するぞい! またメンテナンスに伴い、ストーリークエストの実装や「動画撮影機能」なども追加されるので、どうか期待していてくれ。……あとスキルや職業の性能調整も当然行われる予定じゃからな……!』
オーディンの爺さんがそう言うと、なぜか全てのプレイヤーたちが俺のほうを注目した。
ってやだなぁ、サモナーで弓使いで幸運値極振りの不遇要素満載ユーリくんには調整なんて関係ないことっすよ! むしろ強化されるかも!? ワクワクだぜ~!
俺が胸を弾ませていると、オーディンの爺さんが「では最後に」と俺たちに言い放つ。
『えー……つい先ほど、わたくしどもは緊急の運営会議を行い――ってああ違う! ワシは大臣たちと話し合い、一つの決定を下した!
それは……ユーリ殿の圧倒的な強さを讃え、「第一回バトルイベント・殿堂入りプレイヤー」の称号を贈ることじゃぁあああッ!』
「で、殿堂入りー!?」
えっ、なにそれなにそれなにそれ!? なんかすごいアイテムとかもらえるのか!?
なんか知らないけどやったーーーーーーッ!
『殿堂入りプレイヤーとなったユーリ殿には、今回のイベント中、実況席に座ってバトルを解説する権利をやるぞいッ! というわけで全プレイヤーたちよ、次のバトルロイヤルからは魔王ユーリは座ってるだけだから安心して参加するのじゃァァアアーーーーーッ!』
「「「よかったぁぁああああああああああああッ!」」」
お、おいちょっと待て!? 俺は実況席なんて行かないぞ!? 俺は大暴れする予定なんだぞ!?
ってあああああああああ!? なんか目の前に『おめでとうございます! アナタはスペシャルコメンテーターに選ばれました! ※以降、今回のイベントには参加できません』とかメッセージが表示されたぁ!?
『ではワシは消えるからの! バイバ~イ!』
「「「オーディン様ありがとー!」」」
「って待てこらオーディン!? 俺に戦わせろ! もっとぶち殺させろ! 暴れさせろぉおおおおおッ!」
俺から逃げるように転移していくオーディン。
……こうして勇者である俺は、『サモナー』『弓使い』『幸運値極振り』を馬鹿にしていた連中を見返してやることが出来たものの、邪悪な運営の策略によって『出禁』という処分を食らうのだった……!
おのれ運営……次はお前らに復讐してやるからなーーーーーーっ! チクショウがぁー!
※【悲報】主人公ユーリ、主人公なのに出禁を食らって大会終了……ッ!【完!】
次回からギルドや運営と戦っていきます。
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