2:銀髪美少女ユーリちゃん爆誕!
視界いっぱいの光が収まると、目の前には石畳の上に木造の建築物が建ち並ぶファンタジー世界が広がっていた。
様々な装備をした者たちが行き交う様は、まさにゲームの中って感じだ。
「なるほど……ここが『始まりの街』ってやつか!」
いや~最新のVRゲームってすごいなぁ! 描写のリアルさはもちろんのこと、雑踏から聞こえてくる数多の音もどこかから漂う美味そうな食べ物の匂いも、しっかりと感じられる!
すごいクォリティだぜ。これなら街を歩き回るだけで満足しちゃえそうだ!
そうして俺が物珍しげにあたりを見回していた時だ。不意に後ろから声がかかってきた。
「おーい嬢ちゃん! 嬢ちゃんってば!」
あん? 嬢ちゃん? ……それなら俺じゃないなぁ。
そう思って無視していると、いよいよ肩を掴まれた! 驚いて後ろを振り向くと、そこにはムッキムキで浅黒いスキンヘッドの男が!
「ひえっ、蛮族が現れたーッ!?」
「って蛮族じゃねーよッ! 失礼な嬢ちゃんだなぁッ!?」
プンスカと怒るスキンヘッドさん。って、嬢ちゃんって俺に向かって言ってんの!?
そっ、そういえばさっきから声が高くなってるし、腰のあたりまで髪の感触があるような……いや、まさか、そんな!?
「なっ、なぁスキンヘッド! 俺の見た目ってどんな風だ!?」
「あぁん? そりゃおめぇ……銀髪に真っ赤なおめめのお嬢様って感じだが?」
ファッッッッ!? おおおおおおおお、俺がお嬢様ぁあああああああああッ!?
急いで近くにあった噴水を覗き込みにいくと、そこには確かに、目が死んでいること以外はパーフェクトな美少女がいた!! ゲームを始めたばかりなので服装は簡素な黒いドレス一枚だが、銀色の髪に驚くほど似合っていた。
恐る恐る白い頬をペタペタと触ってみると、水面に映っている女の子も同じ動作をして……!
「って、どうしてこうなったぁー!?」
「なっ、なんだなんだぁッ!?」
女の声で絶叫を上げる俺に、スキンヘッドがビクンと跳ね上がるのだった。
◆ ◇ ◆
数分後。
「――がっはははははははは! それで、ランダムエディットした結果が絶世の銀髪赤目美少女ってか!? いやぁオメェ最高だなぁユーリ!」
「ってよくねーし全然最高じゃねぇよ! ああもうっ、やっぱり俺ってば不幸だー!」
馬鹿みたいに笑うスキンヘッドの隣りで、俺は綺麗な銀髪をガシガシと掻き毟った!
あれから俺は噴水の縁に腰かけ、妙に絡んでくるコイツに事のあらましを話してやった。
……そしたらこの通り大爆笑である。まず現実での不幸っぷりが嫌になったからゲームに逃げてきたと言ったら笑われ、ランダムエディットで女の子になっちまったと言ったらさらに笑われ、ついでにサモナーと弓を選んだと言ったら、もう抱腹絶倒のバカ笑いだ。
チクショウッ、人の不幸がそんなに面白いかオラァァアアアアッ!?
「クソッ、人のことを笑いものにしやがって! てかゲームを始めた理由や見た目がこうなっちまったのはともかく、なんで職業と武器を言ったら笑われたんだよ! サモナーと弓は最強だって、攻略サイトに書いてあったぞ!」
「ブフゥーーーーーーーッ! あ~そいつぁご愁傷様だなぁユーリ。そりゃ荒らし連中が書いたウソだよ」
「は?」
「たまにいるんだよなぁ、誰でも編集できる攻略サイトにそんなガセ情報を載せるヤツ。実際のところ、サモナーはよわっちぃ不遇職で弓は全然当たらない最弱武器なのによぉ」
「はっ……はああああああああああああああああああああああああああッ!?」
なななななななんだそりゃああああああああああッ!? じゃあ俺はこんな見た目になっちまった上に、性能まで残念なことになっちまったってかぁ!?
「ハハハハッ! まぁガセ情報が書かれたら良識ある連中が直すようにしてるんだが、そいつらだってすぐに気付けるわけじゃねぇ。ガセが書かれてから修正されるまでの数十分間の間に、たまたまお前はサイトを覗いちまったってことだな!」
「そ、そんな……不幸だーーーっ!」
おのれッ、俺のとんでもない不幸っぷりはゲームライフさえも邪魔しやがるのかッ!?
ていうか何度かサイトをチラチラ見たけど、いつもサモナーと弓は最強って書かれてたぞ! ……まさか俺が覗くタイミングとガセ編集がされるタイミングが、たまたま毎回重なってたってことなのか!? うぎゃああああああああああああああッ!
ガックリと肩を落とす俺に、いよいよスキンヘッドは気の毒になってきたのか、背中を優しく撫で――さらに追撃を加えてきた!
「あ~ユーリ、元βテスターとしてはっきり言っておくぞ? 幸運値極振りは……ゴミもいいところだ」
「ゴミィッ!?」
「まぁ聞けって。幸運値はスキルの発動確率と、倒した敵からのレアアイテム排出率に関係したステータスだ。
それに加えて『クリティカルヒット』っていうのがあってな、このゲームじゃあ頭と心臓に攻撃が当たった時、低確率で三倍のダメージが発生するシステムがあるんだよ。幸運値を上げるとそれの発動率も上がるとされている」
「へぇ~、だったら弓でパンパン頭や心臓を射抜いてけば無双できるじゃねぇか。弓は当たりづらいって言ってたが、それだって幸運値を上げれば運よく当たりまくるようになったり……」
「いや、ならねぇ。弓の命中率を決定づけるのは、あくまでもプレイヤーの腕前だけだ。
……さぁ質問だユーリ。オメェ、狙ったところに矢を当てれる自信はあるか? 弓道の経験は? 仮に弓道経験者だったとしても、動く敵に当てることは出来るかぁ?」
は、はぁ!? そんなの……、
「無理に決まってんだろうがッ! 俺はズブの素人だぞ!? なんかゲーム的な補正がなけりゃぁ飛ばせるかどうかだってわかんねーよ!」
「そういうこった。素人だろうが振るえば当たる剣と違って、当たらねぇ武器に意味なんてねーよ。これが弓が最弱とされる理由だな。
そして、仮にオメェが弓道の天才だったとしても筋力値0じゃダメダメだ。筋力値が高ければ高いほど、弦が硬くてしなりも激しい強力な弓を使えるようになるんだぜ? 筋力値0でも扱える初期装備の弓なんて、オモチャだよオモチャ!」
お……オモチャァァアアアアアアア……! ステータスはゴミ扱いで、武器はオモチャ扱いかよッ!
え、じゃあなに? サモナーはどうなってんすか!?
「んで最後に、サモナーは……可哀想なナニカだな」
「可哀想なナニカッ!?」
「ああ。まずモンスターを呼び出して操れるとされるサモナーだが、下準備としてモンスターを倒して手下にしないといけねぇんだよ。この時ほかのプレイヤーの助けを借りたら必ず失敗するらしい。……だけどたとえ倒しても手下になる確率は低いし、さらにサモナーには相手にダメージを与えれる『アーツ』がねぇ。
たとえば剣士の職業で刀剣類を持ってたら、『ギガスラッシュ』っつー強力な斬撃のアーツを放てるようになるんだが、サモナーはモンスターを強化するアーツのみだ。仲間がいなきゃガチで無能だぜ?」
「えええええええ……じゃあ最初の一匹目を手下にするには、弓と同じくゲーム的な補正なしでタイマンで倒さないとダメなのかよ。しかも、手下になるまで何度も」
「そういうこった。まぁ普通のステータスをしてて普通の武器を装備してたなら、『始まりの草原』をピョンピョン跳ねてるウサギくらいどうにか倒せるだろうよ。……だけどそんなザコを仲間にしてもしょうがねぇし、何よりオメェさんの場合はなぁ……」
あーあー悪かったなスキンヘッドオラァァアアアアッ! どうせ俺はゴミステータスで最弱武器だよッ! 防御も0だから、たぶんウサギにすら噛み殺されるよッ!
ああ……不幸にもほどがある。深く溜め息を吐く俺の肩を、スキンヘッドがバシバシと叩いた。
「元気出せやユーリっ! キャラを作り直せばいい話じゃねぇか! ……まっ、その美少女すぎるアバターを捨てるのはちょっと惜しいがな。
イジりすぎたアバターにありがちな違和感がまったくないし、そいつぁマジでAI様にしか作れない最高の一品だぜ!? 乳も大きくて形がいいし!」
「って、嬉しくねぇよスキンヘッドー……! つーかお前、なんで俺に声をかけてきたんだ?」
「あんッ!? そんなもん、ナンパのために決まってんだろうがッ! このゲームは現実の顔がアバターのベースになるんだぜぇ!? だったらそんな美少女アバターをしてるやつぁ中身も美少女って相場が決まってんだよッ! なんでオメェ男なんだよ馬鹿ッ!」
「知らねーよ馬鹿ッ!」
……ダメージが発生しない街中なのをいいことに、しばらく俺たちはポコポコと殴り合うのだった。
・闇に飲まれそうなアバターになりました。
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』
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