28:いくぞ、ダチ公ッ!
前回、最後に「次回、決着!」とか書きましたがそんなことはありませんでした・・・
『ユッ、ユーリさんの暴虐が止まらない! というかお願いだからもうやめてぇ!? 記念すべき初イベントが魔王の襲撃イベントになっちゃってますからーーーーーーーーーッ!?』
実況役のナビィがよくわからないことを言ってるけど、よくわからないってことはどうでもいいってことだから無視するぜ!
みんなから馬鹿にされている『サモナー』『弓使い』『幸運値極振り』の名誉を守るために、正義の勇者である俺はひたすらプレイヤーたちを倒しまくっていた!
差別をなくして平和な社会を作り上げるためには暴力を振るうことが一番だ。必殺アーツ『滅びの暴走召喚』によるモンスターたちの百鬼夜行が終了すれば、すかさずファイヤーバードによる空爆を再開。さらには俺もポン太郎たちを打ちまくり、彼らのスキル【闇分身】との組み合わせによって上空から何十本もの矢を絶え間なく降らせ続けた。
「わかったッ、もうその三つが強いことはわかったからーーー!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 実はユーリさんのこと何人かで組んで襲撃しようとしましたごめんなさいッ!」
「もう三大不遇要素のことはネタにしませんから許してぇええええええッ!」
泣いて逃げ惑うプレイヤーたちだが、今後の『サモナー』『弓使い』『幸運値極振り』プレイヤーたちのためにも容赦はしない。一人を犠牲に十人を救うのが正義っていうから、つまり逆に考えれば、正義の味方である俺が一万人以上を抹殺すれば十万人を救ってるってことになるからな! たぶん!
というわけで背を向ける者には、プレイヤーたちを倒しまくって急成長したゴブリンキングとウルフキングを追っ手として投入。
さらに一度目の召喚から10分過ぎたことでギガンティック・ドラゴンプラントを再召喚。街の外周を再び焼き払い、戦うことを恐れて中心部から離れている者たちを何千人と絶滅させた。
そうしている内に時間が経ったことで、必殺アーツ『滅びの暴走召喚』を再び発動。街の外周から焼き出されて逃げるように集まってきた者たちに向かって、大量のモンスターを投下したのだった。
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・18260人のプレイヤーを倒しました……!
上級領域・レベル40に到達したため、これ以降、倒した相手のレベルが低いほど獲得経験値にマイナス補正が発生します。
一部の相手とは10レベル以上差があったため、経験値を獲得できませんでした。
ユーリさんはレベル44までアップしました。ユーリさんにイベントポイント+18260……!
・遅れていた処理が完了しました。
条件:『プレイヤーを10人キルする』達成!
スキル【暴力魔】を習得しました!
【暴力魔】:プレイヤーに与える『衝撃』がわずかに上昇(のけぞりやすくなる)。
条件:『プレイヤーを100人キルする』達成!
スキル【暴力魔】はスキル【殺戮狂】に進化しました!
【殺戮狂】:プレイヤーに与える『衝撃』が上昇(のけぞりやすくなる)。
条件:『プレイヤーを1000人キルする』達成!
スキル【殺戮狂】はスキル【魔の波動】に進化しました!
【魔の波動】:全ての敵に与える『衝撃』が上昇(のけぞりやすくなる)。
条件:『プレイヤーを10000人キルする』達成!
スキル【魔の波動】はスキル【魔王の波動】に進化しました!
【魔王の波動】:全ての敵に与える『衝撃』がかなり上昇(のけぞりやすくなる)。
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「お~、こりゃいいなぁ!」
メッセージさんが視界一杯に文字を表示される。
大暴れしたことでレアスキルをゲットしまくりだ。習得から進化まで駆け上がったのは【魔王の波動】だけではなく、モンスターたちにプレイヤーを10000人キルさせることでサモナー限定スキル【魔王の眷属】というのも獲得。さらに飛び道具での攻撃でプレイヤーを1000人キルしたことでスキル【魔弾の射手】なるものも手に入れた。
限定スキル【魔王の眷属】は使い魔となったモンスターたちのステータスを常時1.3倍にする超高性能なものだ。
そしてスキル【魔弾の射手】は、投擲・射出した武器にホーミング能力をつけるものらしいが……こっちはぶっちゃけいらないな。これからも憑依したポン太郎たちに当ててもらう予定だし。
『ピギョォオオオ……』
「おっと、チュン太郎はもうお疲れか? ありがとうな、助かったぜ」
プレイヤーを乗せて飛べるのは20分くらいって設定だからな。
俺はチュン太郎のもふもふな背中を撫でたあと異空間に消し、壊滅した街の広場に降り立った。
『始まりの街』そっくりだった和やかな景観は、今は見る影もない。数多くの建物がグチャグチャに壊れ、あちこちで炎が燃え盛る死の都と化していた。
視界の端にある生存者数を示すカウンターはギュルギュルと減っている最中だが、見渡す限り生き残っているプレイヤーはどこにもいない。
「おーいナビィ、これで優勝かー?」
『ちょっ、ちょっと待ってくださいユーリさんっ、いえユーリ様! まだ集計データの処理中で……ってああっ!? まだ、まだ十名ほど残っています! まだ戦いは終わってませーーーーーーーんっ!』
なぜか泣きそうなほど嬉しそうな声を上げるナビィ。
ああ、せっかく実況役の仕事を貰えたんだもんね。長く席に座っていたくなる気持ちはわかるよ。
「安心しろナビィ! 三大不遇要素の強さを知らしめるためにも、残ってる奴らは頑張って長く痛めつけるからよぉ!」
『って安心できる要素ないんですけどぉ!? あああああああッ! 誰かこの天然外道チンピラ美少女魔王を倒してーーーー!』
はて、俺は聡明正道イケメン優等生勇者なのだが何を言ってるんだろうかコイツは?
あんまりふざけた実況をしてるとポン太郎暴走族に囲ませてバイブレーションさせるぞと脅そうとした時だ。不意に背後の瓦礫の山が、音を立てて爆散した……!
「ハ……ハハッ!」
濛々と立ち込める土煙の中、全身を血塗れにしながら現れた男に俺は笑みを浮かべた。
ヤツもまた足を引きずりながらも、俺と視線が合った瞬間に鼻を鳴らした。
「へへっ、甘ぇなぁユーリッ! あの程度でオレ様が死ぬと思ったかーーー!?」
「いいや思ってなかったさ! さぁやろうぜぇ、スキンヘッドーーーッ!」
ああ、まさにお前は最高のダチ公だ! 男同士の決闘の約束を守るべく、スキンヘッドは俺の下へと来てくれた!
その瞬間、ワァアアアアーーーーーッという大歓声が上がる。それは、ナビィのマイクを通して響いた観戦者たちの叫びだった。
『いっ、生きていたーーー! 強力なプレイヤーがここに参上ーーーーッ!
優勝候補であるザンソードさんも倒れ、魔王ユーリの一人勝ちになるかと思った瞬間ッ! 積み重なった瓦礫の底より、トッププレイヤー勢の一人であるラインハルト・フォン・エーデルフェルトさんが姿を現したーーーーー!』
実況役であるナビィも(俺をナチュラルに魔王扱いしながら)歓喜の咆哮を張り上げる。
ってちょっと待て!?
「おいスキンヘッド……お前その見た目でそんな名前だったのかよ。ゴンザレスの間違いじゃないか?」
「誰がゴンザレスだッ! 思えば会った時から蛮族だのと言いやがって……よし決めた。
テメェ、オレ様が勝ったら罰ゲームとして一日言うこと聞きやがれ! モンスターの討伐からアイテムの採取までなんでも手伝わせて、一晩中ヒーヒー言わせてやるぜッ!」
「ハッ、だったらお前も負けたら言いなり決定だ! 朝から晩までそこらじゅうを連れ歩かせてやるよ!」
「いいぜェ、上等じゃねぇかッ!」
言い合いながら、俺たちは回復ポーションの瓶を取り出して飲み干した。
さぁ、これでMPのほうは万全だ。スキンヘッドのほうも全ての傷が消え、全身に闘気を漲らせた。
そうして俺たちは同時にポーションの瓶を投げ捨て、パリィンッという音が響いた瞬間――、
「「お前にだけは、負けて堪るかぁあああッ!」」
熱く拳を握り締め、まったく同じタイミングで駆け出したッ!
次回、決着!
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