25:バトルロイヤル、開催!
この作品男ばっかりや・・・!
ゲーム開始から五日目。イベント開始となる朝十時の少し前にログインすると、始まりの街はプレイヤーたちでごった返していた。
誰もがステータス画面を開いたりして戦いに備えている。
「よし、俺も自分の状態をチェックしておこうかな」
ステータスオープンっと!
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名前:ユーリ
レベル:30
ジョブ:ハイサモナー
使用武器:弓
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:0 敏捷:0 幸運390×3×2+39+90=『2469』
スキル
【幸運強化】【執念】【致命の一撃】【真っ向勝負】【ジェノサイドキリング】【非情なる死神】
【アブソリュートゼロ】【ちゃんと使ってッ!】【逆境の覇者:HP1のため発動状態。全ステータス二倍】【神殺しの拳】【異常者】
装備
・頭装備『死神の髪飾り』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・体装備『死神のドレス』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・足装備『死神のブーツ』(装備条件なし MP+30 幸運+30 マーくん憑依状態)
・武器:『初心者の弓』
・装飾品:『呪いの指輪』(HPを1にする) 『邪神契約のネックレス』(HP1の時、幸運値三倍)
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「う~ん、相変わらずの幸運値極振りっぷりだぜ……!」
スキルと装備込みでついに2500に到達しそうか! 他の30レベルのプレイヤーの一番特化させたステータスが400そこらだっていうから、六倍はあるな。すごいぜ。
スクスクと伸びる幸運値に俺がニヤついていた時だ。同じくステータス画面を見ながら歩いていたらしいプレイヤーの身体が後ろから当たり、思わずよろついてしまった。
しかし、ガッシリとした男らしい腕が俺の肩を支えてくれた。
「大丈夫かぁ、素敵な衣装のお嬢さん? ここは混んでて危ない。オレと一緒に静かな場所にいかねぇか?」
うげぇ。支えてくれたお礼をしようとしたのに、頭上から下心丸見えのいやらしい声が。
まぁそれでも恩があることには変わりない。さっさと礼を言って離れようと相手の顔を見上げる。すると、
「「って、お前かよッ!」」
……そこにいたのはまたしてもスキンヘッドの野郎だった。これでコイツにナンパされるのは三回目だ。
俺たちは顔を見合わせ、はぁ~~~と揃って溜め息を吐いたのだった。
◆ ◇ ◆
「チクショウッ、運命を感じる相手に声をかけたらいつもオメェだ! どうなってんだよユーリ!?」
「そんなの俺が聞きてぇよスキンヘッド!」
噴水の縁に座ってガミガミと言い合う。思えばこいつとはプレイ初日からこんな感じだな。
まったく困ったヤツだなと思いながら、そこの露店で適当に買ったジュースをジュルルルっと啜った。
ってンンンッ!?
「けほっけほっ! ってなんだよこれ……レモンとグレープとキウイを混ぜ合わせたような味だぞ。俺、すっぱいものは苦手なんだから勘弁してくれよ……」
「ガハハッ! このゲームはたまに変な味のもんが売ってるからなぁ。オレ様が代わりに飲んでやろうか?」
「ん、任せた」
酸っぱすぎるジュースをスキンヘッドに渡すと、ジュゾゾゾゾ~っと一気に飲みきってしまった。よくも悪くも男らしい奴だ。
そんなことをしていると周囲から声が。
「くそっ、なんでこんなムキムキ蛮族野郎があんな子と……!」
「爆ぜろ、爆ぜろ……!」
「フィールドで見つけ次第プレイヤーキルしてやる……!」
おぅ、なんかスキンヘッドのやつが注目されてるなー。俺と話してるだけなのに殺気がビンビン飛んできやがる。
「なぁスキンヘッド、お前なんか悪いことしたか?」
「あん? 特になんもしてねぇが?」
「だよなぁ、お前良いやつだし。あっ、そういえば何でもいいから装飾品アイテムってもってないか? 三つまで装備できるみたいだが、俺そういえば二つしか付けてなかったわ」
「そりゃもったいねぇな。じゃあユーリ、この『耐毒の指輪』をオメェにやるよ。そのへんのNPCが売ってるやつだから気にせずもらってけや」
「おうサンキュー」
毒状態になる確率が少し下がるという指輪をもらった。するとその瞬間、周囲のプレイヤーたちがさらにざわつく。
「こんな場所で、指輪をプレゼントだと……!?」
「うがぁぁああああ爆ぜろぉおおおお!」
「あの筋肉タコ野郎絶対にぶっ殺してやるッ!」
おおおおお、まるで飢えた獣に囲まれてるみたいだ! みんなやる気いっぱいって感じだな!
「今日は頑張ろうな、スキンヘッド!」
「おうよダチ公。オメェには負けねぇからな!」
そうして俺たちがコツンと拳を合わせた時だった。
不意にパンパカパーンッという軽快な音が街中に響き、何色もの紙吹雪が空から舞い降りてきた。
おっと、どうやらイベントの始まりみたいだな。
『――戦士たちよ! 今日はよくぞ集まってくれたッ!』
遥かな空から声が響く。すると上空に、王冠を被ったデカい髭の爺さんの映像が映し出された。いかにも王様って感じだ。
何万人ものプレイヤーたちに見上げられる中、爺さんは言葉を続ける。
『ワシの名はオーディン。このグラズヘイム王国の支配者である。
さて、本日諸君らに集まってもらったのは他でもない。世界中にモンスターを出現させた闇の支配者・魔王との決戦に備えて、諸君らの力を見せてもらいたいのじゃ。
ゆえにこれより――全プレイヤー参加型の、バトルロイヤルイベントを開催するッ!』
その瞬間、ワァーーーーーーーーッという声が始まりの街に響き渡った!
かくいう俺もワクワクだ。このゲームには今五万人以上のプレイヤーが存在しているというから、そいつら全員と戦ったら絶対に面白くなること間違いなしだぜ!
『フォッフォッフォ、説明を続けるぞ。
戦士たちの中には用事がある者もいるからのぉ。そこで今から深夜零時にかけて、一時間の休憩を挟みながら五回に分けてバトルロイヤルを開かせてもらう。
朝十時から昼十二時までを第一回。昼一時から昼三時までを第二回。昼四時から夕方六時までを第三回。夜七時から夜九時までを第四回で、最後に夜十時から深夜零時までを第五回という感じでな。
どれに参加するとしても、最後のほうまで生き残った者たちには豪華な褒美を約束するぞいっ!』
爺さんがそう言うと、目の前に詳しいルールが書かれた画面が表示された。
なになに~?
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・これより五回に分けてバトルロイヤルを開催いたします!
舞台となるのは始まりの街にそっくりの特別フィールドです。ランダムに転移されますのでご了承ください。
参加者様には運営より『イベント用回復ポーション』を20本配らせていただきます。使用すればHPかMPのどちらかをマックスまで回復できる優れモノですが、それ以外の回復アイテムは使用禁止にさせていただきます。
また、全てに参加するのも自由ですが、結果だけ楽しむのも構いません。
始まりの街上空に実況映像を表示するほか、ゲーム内通貨を賭けてどのプレイヤーがどれくらいまで生き残れるかギャンブルを楽しむミニゲームも開きますので、皆さまぜひとも楽しんでいってください。
そして、成績上位者のプレイヤーにはもちろん報酬ありです!
参加人数の中から残り一割になるまで生き残った者にはレアアイテムを。
残り百人になるまで生き残った者には激レアアイテムを。
残り十人になるまで生き残った者にはさらに激レアなアイテムを。
そして全ての参加者を倒し尽くした最後の一人には、オーディン様より特別な報酬が送られます。
またプレイヤーを倒した数によって別の報酬も送られますので、ぜひぜひ派手に暴れ回ってください!
※バトルロイヤルの映像は宣伝として動画サイトでも流す予定ですので、芋みたいに引きこもって最後まで生き残るとかマジでやめてください(運営より)
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「……なるほどなるほど。要するに暴れまくればいいってことか」
最後のほうに運営からの生々しい訴えがあったのは無視するとして、ルールは把握した。
もちろん男だったら第五回まで全部参加して、全部で優勝してやるだけだ!
横にいるダチを肩でつっつく。
「スキンヘッド、聞くまでもないが第一回目には出るよな?」
「あたぼうよぉ。オメェが出るもんには全部出てやらぁ!」
「よし、じゃあ全参加で決まりだな。今日は一日中やり合おうぜ!」
スキンヘッドのやつもやる気たっぷりで何よりだ。俺たちはにやりと笑いながら、『バトルロイヤルイベント・第一回目に参加しますか?』と表示された画面のイエスというボタンを速攻で叩いた。
その瞬間、俺たちの身体は蒼い光に包まれ始める。
周囲にいた多くの者たちも参加を決めていく中、オーディンが最後に大声で叫んだ。
『ではこれより、ルール無用のバトルロイヤルを開始する! 戦士たちよ、力の限り戦い尽くせーーーッ!』
爺さんの言葉を耳にしながら、俺の視界は光に飲み込まれていった。
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