23:弓手数極振りユーリさん
ゲーム開始から四日目。犬と猿を仲間にした俺が最後に向かったのは、『炎鳥の山脈』というダンジョンだった。
攻略適正レベルは25で、ダンジョンというか普通に山だ。ひたすらボスのいる山頂を目指して山登りしなくちゃダメで、絶えず上空から炎を纏った鳥モンスターたちが火の粉を吐いてくる面倒な場所である。近距離職は奴らを片付けるのに苦労するだろうな。
だが、鳥モンスターなんて弓使いである俺にとっては格好の獲物だった。天に向かって弓を構え、ポン太郎たちを射出する!
「いけ、ポン太郎からポン十一郎!」
『キシャシャシャシャ~!』
元気にすっ飛んでいく舎弟たち。憑依しているアイツらのスキル【飛行】のおかげで、どれだけ上空の敵に放とうが矢の勢いが減衰することはない。
我が物顔で空を飛んでいる鳥たちを驚かせながら、次々と仕留めていった。
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・ポン十一郎のレベルが25になりました! 進化可能です!
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「おっ、ついに十一郎も進化出来るようになったか! これで全員『シャドウ・ウェポン』になれるな!」
『キシャ~!』
喜びの声を上げるポン十一郎。そんな末っ子を称えるように、ポン太郎からポン十郎が周囲に集まってバイブレーションし始めた。バトルイベント前に間に合ってよかったよかった。
頼れる舎弟たちを引き連れて山登りを続ける。すると、頂上手前に差し掛かったところで周囲が濃密な霧に覆われ始めた。
なるほど、扉じゃなくてここを突き抜けるとボスエリア突入ってわけか。
もちろん引き返すつもりなどない。俺は霧の向こうへと一気に駆け出した。
◆ ◇ ◆
『ピギャァアアアアアアアアッ!』
「うわぁ、カッコいいやつが出てきたなー……!」
ついに辿り着いた山頂。そこで俺を待っていたのは、全身真っ赤な巨大鳥だった。
名前は『バニシング・ファイヤーバード』。攻略サイト曰く、常に飛んでいることから25レベルのボスの中でも最難関とされる強敵らしい。
孔雀のように尾羽を広げた姿は壮観だ。こりゃあぜひともゲットしたいぜ!
「いくぞ、ファイヤーバード!」
『ピィーーーー!』
俺が弓を構えるのと同時に、奴が上空へと一気に羽ばたいた! そうして空を陣取ると、尾羽から無数の炎弾を射出してきた。
その数たるや百以上。一発一発は小さいが、つねにHP1の俺にとってはかなり効く攻撃だ。
だが、
「進化したポン太郎たちには通じない。いけっ!」
『キシャーーーーー!』
十一本の漆黒の矢を次々と天空に放った。その程度で何するものぞという顔のファイヤーバードだが、次の瞬間驚愕に染まることになる。
漆黒の光を放ちながら全ての矢が十本に分裂し、合計『110』もの数に達したのだ。
それらはファイヤーバードの炎弾を一つ残らず貫き落とし、奴の身体へと突き刺さっていった!
『ピギギィイイイイッ!?』
「はっ、見たかよ。これが『シャドウ・ウェポン』に進化したコイツらのスキル【闇分身】だ!」
苦しむ炎鳥を見上げながらニッと笑う。
スキル【闇分身】は文字通り、九体の分身を生み出す能力だ。それぞれのステータスは本体の半分くらいな上に十秒くらいしか効果が続かないスキルなのだが、矢として使うならそれだけ持てば十分だ。
突き刺さった全ての矢に俺のダメージアップ系スキルが適用され、ファイヤーバードは絶叫を張り上げた。
「戻ってこいお前たち」
さらにハイサモナーとしての職業特性が発動する。MPを消費することなく十一本の矢が時空を超えて戻ってきたのだ。
これで手数を気にする必要はなくなったな。サモナーのころは十一本しかない矢をいちいち『サモンリターン』で呼び戻してたが、今はデフォルトで戻ってくる上に一本が十本に分裂する。実質手数は無限だ。
『ピッ、ピィィイイ……!』
「悪いなファイヤーバード。このまま終わりまで持っていくぞ」
弓使いとしてデカいだけの鳥に負けるわけにはいかない。手にした弓に誇りを感じながら、戦慄の声を上げるファイヤーバードに向かってひたすら矢を打ちまくった。
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スキル【ジェノサイドキリング】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【アブソリュートゼロ】発動! ダメージ二倍ッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ三倍ッ!
スキル【非情なる死神】発動! クリティカルダメージさらに三割アップ!
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そうして発動するダメージアップ系スキルの数々。それぞれの矢が二十四倍以上の威力となってファイヤーバードを襲っていく。
瞬く間にヤツは飛べるだけの体力もなくなり、地上に向かって堕ちてきた。
『ピィィ……ピギャーーーーーーッ!』
ここでファイヤーバードが意地を見せた。死力を尽くして翼を羽ばたかせ、落下方向を俺のほうに変えてきたのだ。
ナイスな特攻精神だ。こりゃあ男として受けて立たないとな!
俺は弓をそのへんに捨て、拳を握ってヤツを向かい入れる。
『ピギャアアアアアアアッ!』
「いいぜ、こいよファイヤーバード! 勝負だーーーッ!」
嘴を尖らせた巨大鳥に向かって、俺は拳を突き出した!
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スキル【異常者】発動! 弓を捨ててからの三秒間、近接ダメージ三倍!
スキル【真っ向勝負】発動! 接近戦ダメージ一割アップ!
スキル【神殺しの拳】発動! 拳撃時、手首から先を『無敵』化! あらゆるダメージ・衝撃・効果を無効化する!
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その瞬間、轟音と共に衝撃波が山頂に吹き荒れた。
発生した風が俺の髪を揺らす中、拳の先で巨大鳥が力を失っていく。
『ピギャ……ァ……!』
嘴を粉砕され、ズシィイイインッと地に横たわるファイヤーバード。これで勝負は決した。
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おめでとうございます! ダンジョンボス:バニシング・ファイヤーバードのソロ討伐に成功しましたッ!
ユーリとポン太郎ダブルツインマークツーセカンドたちは大量の経験値を手に入れた!
激レアアイテム『ファイヤーバードの手羽先』を入手しました!
調教成功! ボスモンスター:『バニシング・ファイヤーチュンチュン』が仲間になりました!
レベルが1になったボスモンスターを召喚出来ます!
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「俺の勝ちだな、ファイヤーバード」
さらにこいつの肉もゲットだ。
上空からの範囲攻撃が出来るモンスターみたいだからな。爆弾系アイテムと調合して、空襲の出来るキマイラを作り上げる予定だ。最後は敵に特攻させよう。
『ピィピィ……!』
「むっ?」
媚びるような声を出すファイヤーバード。こいつもレベル1になったことで、悲しいことにモンスター名が『バニシング・ファイヤーチュンチュン』になっていた。なんだチュンチュンって。
表示された説明文には『地に落とされ、ただのデカい鳥と化した敗北者。食べると美味しい』との文章が。お前美味しいのかよ。
こいつのステータスを見てみるとリビング・ウェポンと同じく【飛行】を持っているのだが、やはり飛べる高さや時間には制限が書いてあった。上に乗ってどんな場所にもスイスイ移動ってわけにはいかなそうだな。
「よし……今日からお前は俺のペット二号だ。よろしくな、チュン太郎」
『ピヨー!』
ふかふかの毛を撫でてやるとチュン太郎は嬉しそうに翼を広げた。
よし、これで必要な素材は揃ったな。さっそくキマイラを作り上げて明日のイベントに備えよう。
どんな内容かはいまだ不明だが、目指すは優勝あるのみだぜ!
・次回、掲示板挟んでいよいよイベント!
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また
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