18:宿敵との共闘!
「いくぞポン太郎たち、『パワーバースト』! 『スピードバースト』!」
迫りくる触手たちに向かって漆黒の矢を連射する! 俺の支援を受けたポン太郎たちはレーザーのように放たれていき、次々と触手を貫き落としていった!
一本、二本と、その数を減らしていくが、
『グガァアアアアアーーーーーッ!』
全ての触手を落とすことは出来なかった! 仲間にしたばかりのポン六郎からポン十一郎はまだレベルが足りず、肉厚の触手に突き刺さるだけにとどまってしまったのだ!
咄嗟に回避しようとするが遅い。四本の触手が俺に巻き付き、全身を強く絞め上げていった!
「ぐあああああああッ!?」
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スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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頭の中に何度もスキルの発生メッセージが届く! ってマズイマズイマズイマズイッ!?
いくら幸運値を上げても【根性】は確定で発動するスキルじゃない。99%まで発動率が上がろうが、1%の外れをどこかで引けばお終いだ!
絞め上げられた白い肌を鬱血させながら俺は焦った。
『キシャシャァァアアアーーーーーーッ!』
その時だった。ポン太郎からポン十一郎たちが戻ってきて、俺を拘束している触手を攻撃し始めたのだ。
舎弟たちは腕を拘束していた触手をグルッと取り囲み、全員で円形に回転してノコギリのように触手を削っていった! 自律行動による攻撃のため俺のダメージアップ系スキルを受けられない状態だが、それでも力を合わせて十秒ほどで触手の切断に成功した!
よし、これならいける! 俺は自由になった腕でポン太郎を握り、短剣を振るうように縛り付けている触手を斬り裂いていった。無数のダメージアップ系スキルによって脱出に成功する。
『グガガァアアアーーーー!』
そんな俺に対して再び何本も触手を放ってくるギガンティック・ドラゴンプラント。
だが何度も食らうか。俺は一度ブーツを触り、そこに宿っている『リビング・アーマーナイト』へと命令を飛ばす!
「マーくん、スキル【瞬動】だ!」
『ッ――!』
次の瞬間、俺の身体は風となって駆けていた。一瞬にして触手の群れを回避し、大きく距離を取って弓を連射する!
これがアーマーナイトのスキル【瞬動】だ。五秒間の間、移動速度を十倍に出来るらしい。
レベルダウンしてしまったせいかリビング・ウェポンたちを召喚しまくる『邪剣招来』のアーツは使えないが、これだけでも十分ありがたい。
「さぁ、今がチャンスだ! 『ハイパーパワーバースト』、『ハイパースピードバースト』!」
射出したポン太郎たちに特大の支援をかける! それによって猛加速した舎弟たちは百メートル頭上にあるドラゴンプラントの顔面に突き刺さり、クリティカルダメージを叩き出した!
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スキル【ジャイアントキリング】発動! ダメージ一割アップッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【アブソリュートゼロ】発動! ダメージ二倍ッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ三倍ッ!
スキル【非情なる死神】発動! クリティカルダメージさらに三割アップ!
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ダメージアップ系スキル群と合わせて合計12倍以上のダメージが発生する。それによってギガンティック・ドラゴンプラントは苦しみの声を張り上げた。
「さぁ、どんどんいくぜ! アーツ発動『サモンリターン』!」
このままいけば押し切れる。そう思いながら俺がポン太郎たちを速攻で呼び戻し、再び弓につがえた時だった。
不意にドラゴンプラントの背後からデカい触手がニョキニョキと伸びると、その先端にパァっと花を咲かせたのだ。
まるでお日様のように大きな花だ。一体なんのつもりだと俺が思った瞬間、
『グゥウウウウウウウウウウウガァアアアアアアアアーーーーーーーーーーッ!』
花の花弁から光が溢れ、特大のレーザーを放ってきたのである!
「ってなんだそりゃーーーーーー!?」
スキル【瞬動】の発動を命じる時間もなかった! 触手攻撃の何十倍もの速さでレーザーは俺へと直撃! 一瞬にして視界は真っ白に染め上げられた!
「うわあああーーーーーーっ!?」
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スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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……あまりの衝撃に吹き飛ばされながらも、俺は少しだけ安堵する。
発狂していたコリンのように他のプレイヤーにとっては堪ったものじゃないだろうが、俺はスキル【根性】頼りのプレイスタイルだ。盛大に一度焼き払われるより、触手による継続ダメージのほうが脅威だった。
ただでさえ脇や肩が丸出しだったアイドル衣装を焼き焦がしながらも、俺はすぐに起き上がって体勢を立て直そうとする。
だが、ここで異変に気付いた!
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ダメージエリア『灼熱地帯』に踏み込んでいます! 最大HPより毎秒1%のダメージ発生!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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「な、なにぃ!?」
咄嗟に足元を見れば、ヤツの放った灼熱光線によって地面はドロドロに溶けていた。
ってあいつの攻撃、当たったところをダメージエリアに変える効果もあるのかよ!? 広さの限定されているボスエリアの中で乱発されたら堪ったもんじゃないぞ!
コリンの言っていた通り本当にチートみたいな化物だ。俺は転がるように灼熱地帯から脱出し、弓をつがえてヤツを睨み上げる。
だがそこには、悪夢のような光景が広がっていた。
『グゥゥゥゥゥゥウガァァァァアア……!』
唸り声をあげる巨大竜樹の背後より、七枚の花が咲き誇っていたのである……!
それらは一斉に光を放ち、俺の立っている場所に目掛けて特大のレーザーを射出した!
「なっ――!?」
その光景を前に俺は思った。これは完全に詰みだと。
レーザーの攻撃には耐えられるかもしれないが、その後のダメージエリア変換効果でお終いだ。七つもの特大レーザーが炸裂したらどれだけ広範囲が灼熱地帯になるかわかったもんじゃない。
そうしていよいよ光に飲まれそうになった、その時。
『ッッッッ――!』
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スキル【瞬動】発動! 移動速度激増!
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命じてもいないのに勝手にスキルが発動する! さらに俺の足はひとりでに駆け出していた!
それによって俺は間一髪のところでレーザーを掻い潜り、ギガンティック・ドラゴンプラントの足元へと迫っていた。
「これは……まさかマーくん、ブーツを通して俺の足を無理やり操ってるのか!? スキルの発動も勝手に出来るのかよ!」
『ッ――』
“フン、その通りだ”とでも言っているようなキザな呻きが返ってきた。
ってマジかよそれ。いちいちスキルの使用を命令しないで済むなら、発動速度は格段に速くなる。
だが勝手な判断で身体まで動かされたらプレイヤーは大変だ。もしもモンスターと不仲になったらどうなるか……サモナーの憑依システム、色んな意味でやばすぎるな。
行動を乗っ取られることもあると世に知れ渡ったら、ただでさえ少ないらしいサモナー選択者はさらに激減してしまうかもしれない。
ああ――だけど、
「マーくん、俺はお前を信じてるぜ。なんたって拳でどつき合ったダチ公なんだからな!」
『ッ……!』
殴って殴られて仲間になった! それだけで身体を任せるには十分な理由だ! 俺は足から力を抜き、下半身の動きを全てこいつに委ねる。
そうして弓をそこらへんに投げ捨て、ポン太郎からポン十一郎を両手に握れるだけ握り締めた!
「これで正解なんだろう、マーくん! 接近戦を挑めばヤツもレーザー攻撃を放てない。だからお前は近づいて行ってるんだな!?」
『ッ……ッッッ――!』
“フッ……応とも! さぁ、いくぞ宿敵よ。貴様を倒すのはこの私だ。運命を決するその日までは貴様に力を貸してやろう!”って感じの呻き声を出すマーくんと共に、俺はギガンティック・ドラゴンプラントに飛び掛かった!
「頼んだぜマーくん! アーツ発動、『ハイパースピードバースト』ッ!」
スキル【瞬動】の加速下にあるマーくんにさらに速度上昇のアーツを発動した瞬間、俺の身体は音速を超えた!
重力さえもぶっちぎり、塔のようにそびえるドラゴンプラントの身体を駆け上がっていく!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
『グガァァァアアアーーーーーッ!?』
驚愕の声を上げるドラゴンプラント。ヤツは俺を弾き飛ばすために無数の触手を放ってきたが、ダチ公と力を合わせた俺は止められない!
手にした十一本の矢を振るって触手を次々斬り飛ばしていき、前へ前へと進み続ける!
壁走りなんて無茶苦茶な動きが出来るのは、マーくんのおかげだけじゃない。
手にしたポン太郎たちのスキル【飛行】によるものだろう。プレイヤーを浮かせるほどの力はないようだが、それでも重力に逆らい続けるのに一役買ってくれている。本当に舎弟たちには感謝するばかりだ。
「ありがとうなお前たち。さぁ、いくぞーッ!」
俺の叫びに応え、マーくんが前へと大きく跳ねた! その瞬間、ついに俺は百メートルの高さを乗り越え、ギガンティック・ドラゴンプラントの頭上にまで飛び上がった!
『グッ、ガガガガァーーーッ!?』
ドラゴンプラントの口から悲鳴じみた叫びが響いた。それも当然だろう。体長百メートルを超えるコイツにとって、『敵を見上げる』という事態は初めてだろうからな。
俺はそんなヤツの顔を見てニッと笑うと、十一本の矢を振りかざした!
「これでも一発、くらっとけーーーーーーッ!」
両手に握った漆黒の矢を全て顔面に叩きこむ!
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スキル【真っ向勝負】発動! 接近戦ダメージ一割アップ!
スキル【ジャイアントキリング】発動! ダメージ一割アップッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【アブソリュートゼロ】発動! ダメージ二倍ッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ三倍ッ!
スキル【非情なる死神】発動! クリティカルダメージさらに三割アップ!
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合計『18倍』のダメージ。それが十一発分発生した!
『グガギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?』
絶叫を上げるドラゴンプラント。一撃にして『198倍』のダメージを受けた巨大竜樹は、轟音を立ててその場に倒れ込んだのだった。
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