マンガ版配信記念・特別回:「おえかきしよう、ユーリくんちゃん!!!!!!!!」
新人の馬路まんじです、今日から初投稿します!
「――よし描けた! おいスキンヘッド、この絵はなんだと思う!?」
「犬じゃねェの?」
「猫さんだよウワァァァンッ!」
ペンドラゴンとの決戦からちょっと経った日のこと。
俺とスキンヘッドは、街中で決闘――ではなく、画用紙に絵を描いていた。
今、『ブレイドスキル・オンライン』内では空前のお絵かきブームが起きていた。
というのもアレだ。完全VRなブレスキでは色々なファンタジー体験がリアル感覚で出来るため、漫画家さんたちが取材に訪れるようになったのだ。
んで、そこで彼らは、
『わー、ブレスキの感覚再現機能すごい。リアルと同じ筆遣いが出来るー。
――え、ゲーム内に絵描き道具も売ってるの!? しかもPCのファイルに保存できるの!? ってそれならゲーム内で仕事すりゃいいじゃん! リアルの身体は寝てる状態だから、腰痛気にしなくていいし!』
と、天才的なゲーム利用方法を大発見。
んでんで、その話が広まって多くの絵描きたちがブレスキにログインするようになり、一般のプレイヤーたちも漫画やイラストを描くのに興味を持っていった、って感じだ。
というわけで。トッププレイヤーのユーリ様こと俺もまた、流行に乗って絵に挑戦してるわけだが……、
「あああああああああああああ!!! 思い通りに描けないぞチクショォオオオーーーーッ!」
画用紙を破ってポイ捨てした!
くそっくそっ、どうやら俺には絵を描く才能はなかったようだ。
それだけでもイライラするんだが、さらにむかつくことに……、
「ほい描けたぜェユーリ。オメェの似顔絵だよ」
「うわああああああああああ俺そっくりだああああああああ!?」
……スキンヘッドの野郎が、実はめちゃめちゃ絵が上手いことが判明した!
手渡された絵はマジで俺そっくりだ。しかも写真のようにそのまま描くわけじゃなく、二次元的にさせた上に謎の技法やらを駆使して引き込まれるような魅力を出している。マジで上手いなオイ。
「がははは! オレ様ってば美大卒だからなァ。身体を動かすのも好きだったから体育教師になっちまったが、やっぱ美術教師になってもよかったかもなァ?」
「ぬぬぬ……無駄に多芸なやつめ……!」
半裸のムキムキマッチョのくせに文化人とかどういうことだよ……。
人は見かけによらないというが、これはちょっと意外過ぎるだろ。
「けっ、認めてやるよスキンヘッド。芸術面ではお前の勝ちだよ。でもなぁ、バトルだったら俺は負けないからな!? 何かを生み出すことはダメだが、壊すことなら俺が最強なんだからなぁ!?」
「最悪の人種じゃねェかそれ……」
なぜかドン引きしてくるスキンヘッドに腹立つ!
あっ、しかもさっき俺が破り捨てた画用紙を見て「……クトゥルフ?」とか呟きやがった!
犬だよチクショウッ!
「ばーかばーか! スキンヘッド嫌い!」
「オレ様も嫌いつったら?」
「寂しいからやめろ!」
――そうしてスキンヘッドと言い合いながら、お絵かきを楽しんでいた時だ。
目の前に『ギルドメンバーのコリン様から通信の要請が入っています』と表示された。
「ってなんぞなんぞ?」
ウィンドウをつつき、さっそく映像を繋げてみる。
するとそこには顔を赤くしたコリンと、その背後にて何故かシルによって鞭で打たれているザンソードの姿が……!
ってなんだその状況!?
「おいコリンっ、後ろの二人は何やってるんだよ!? ザンソードのやつ、『ロリカップルにいい様にされるとは……!』とか悔しそうに言いながらもニヤついてるけど、まさかそういうプレイ中か!?」
『って違いますよ! アイツが勝手に喜んでるだけですっ!
あぁそれよりも大変ですよユーリさん! 実はですね、偶然ザンソードさんが読んでいるところを見つけたんですが、ユーリさんの……えっ、えっちなマンガが描かれています!』
「はぁぁあああ!?」
なっ、なんだそれ!? 俺のえっちなマンガってどゆことぉ!?
なんでそんなもんがあるのかと大混乱する俺に、シルに責められていたザンソードが吼え叫ぶ。
『えっ、えっちな本ではござらん! いいでござるかッ、その本は一見えっちに見えつつも実は乳首すらも見えてないんでござるよ!? あくまで触手モンスターに挑んだユーリが服をちょっと破かれて囚われるだけの内容! つまりそれはバトルマンガッ、健全本でござる! 乳首見えなきゃセーフでござるぅううううう!』
『ってアウトよ馬鹿!』
激怒したシルにぶん殴られるザンソード。ぐふぅっと悶えつつもちょっと嬉しそうなのが気持ち悪い。
「シルにコリン。そいつ女の子にボコられると逆に元気になるみたいだから、もうどっかのモンスターに食わせといてくれ……」
『わ、わかりましたユーリさん。あと、一応回収した本の表紙を見せておきますね……!』
ウィンドウに突き出される触手まみれな表紙。
その中央には確かに、屈辱的な表情を浮かべる俺が描かれていた。
……って、このどこかで見たような絵のタッチ……まさか……。
『どうですユーリさん? 衣装の細部まで細かく描かれているので、もしかしたらアナタと近しい人が描いたんじゃって思うんですけど。ユーリさんの周りに絵が上手い人っています?』
「……ああ、すぐ近くにいるよ」
俺が静かに視線を向けると、スキンヘッドは顔を青くしながら後ずさりを始めた。
そしてゴニョゴニョと言い訳を始める。
「こ、これは違うんだぜユーリ……!? 実はこの前、ザンソードの野郎と飲んでてな。ンでオレ様の絵が上手いって知ったアイツが、百万ゴールドも出してエロ本描いてくれって頼んできたんだよ!」
「それで……?」
「そ、それでオレ様も酔ってたからなァ! オメェが本格的にエロい目に合う姿は見せたくねぇから断ったが、まぁアイツも可哀想なヤツだからな……ちょっとくらいのエロなら、ってな?」
「ってッ、ちょっとくらいでも描いて渡すなやボケぇええええええーーーーーーっ!」
怒りと共にスキル【武装結界】を発動! 無数の魔剣をエロハゲ野郎に投げつけまくる!
「うぎゃぁあああああああああ!? や、やりすぎだろユーリィ!?」
「うるせぇ死にやがれクソがぁ! テメェとの仲だっ、エロ本描いただけなら拳一発で許したが、それを売るとかどういうことだテメェーーーーっ!!!」
『……あ、スキンヘッドさんならエロ本描いてもパンチで許してあげるんですね……』
何やら呟くコリンをよそに、俺はクソ親友を追い掛けまわしたのだった――!