176:決着の時
「『昏く沸き立つ地獄の炎よ、解放の時はやってきた』」
「『輝き溢れる浄土の光よ、解放の時はやってきた』」
全ての想いを刃に込め、いざ宿敵と切り結ぶ――!
「『今こそ我が手に宿るがいい。我は破壊を司る者、死を撒き散らす悪鬼なり──!』」
刀に加えて鉄拳のラッシュ、さらには虚空より武装たちを放ち尽くし、ペンドラゴンに絶えず攻撃を加える。
しかして彼女は怯まない。白き刃が斬撃に舞う。
「『今こそ我が手に宿るがいい。我は救済を司る者、魔を討ち滅ぼす戦姫なり──!』」
超絶技巧の剣技が振るわれ、俺の攻め手が総て斬滅されていく。ついにはこちらの首筋にまで斬閃が奔るも、咄嗟に拳を叩きつけることで無力化した。
“やるな!”
“キミもな!”
一瞬の内に繰り広げられる攻防。その中で進む滅びの詠唱。互いの身体より邪炎と聖光がそれぞれ沸き立つ。今ここに、最古のVRMMORPG『ダークネスソウル・オンライン』における必殺呪法とされるアーツが、時空を超えて発現を果たす。
「「『原初の力よ、此処に具現せよ! 異界の地にて必滅を吼えろッ!』」」
最後に詠唱が重なり合い、そして――!
「──付与呪文発動、『業炎解放・煉獄羅刹』──ッ!」
「──付与呪文発動、『閃光解放・天壌修羅』──ッ!」
かくして次瞬、互いの武装より超絶の力が迸る。
俺の武装群からは闇よりも黒き炎が噴き上がり、ペンドラゴンの一刀からは日輪よりも白き光が溢れ出した。
極限にまで増幅された絶滅の炎光。それらは宇宙の中心にて、鬩ぎあい、滅ぼし合い、絡み合い、そうしてついには溶け合って、混沌色の熱閃となり暗黒の世界を染め上げていく。
「『業炎解放・煉獄羅刹』。発動者の武装に『溶断』の能力を与え、攻撃力を急上昇させる技だ」
「『閃光解放・天壌修羅』。発動者の武装に『放光』の能力を与え、攻撃力と機動力を上げる技さ。……ちなみに一度、キミはこいつを見ているはずだよ」
ペンドラゴンの言葉に「あぁ」と頷く。
以前、雪原にて彼女を撤退に追い込んだ際、光となって消えていく謎の力を見せた。その正体がコレってわけか。
「もはや次はないぞ、ユーリ。熱光の放出により加速した私の剣技は、ヒトの反射速度を優に超える」
正眼となるペンドラゴンの構え。剣術の基礎にして、最速・最強の打ち込みを可能とする型だ。俺を一閃に斬り裂くつもりなのだろう。
「ハッ、上等じゃねえか」
対する俺は構えを変えない。片手に刃を、もう片方の手に鉄拳を握り、様々な武装たちを浮遊させて彼女を睨む。
どう見ても邪道の型だろう。だけどこれが俺の構えだ。
ゴミ職業と最弱武器とクソステータスから始まったがゆえに、得てきた力を全部使うことを決めた俺だけのスタイルだ。
「さぁ、いくぞペンドラゴン。最強勇者のユーリ様を討ち取ってみやがれ!」
「ふはっ、馬鹿を言え。――キミは勇者というよりッ、『ラスボス』のような存在だろうがァーーーッ!」
同時に虚空を踏み砕き、俺たちは最後の激突を開始した――!
「うおおおおおおおおッ!」
先に刃を届かせたのはペンドラゴンだ。
剣から放出されたエネルギーをブースターにして一気に接近。そして俺が気付いた時には、すでにこちらの肩口にまで振り下ろしていた。
まさに神速、まさに閃光。彼女自身の言葉通り、反応することすら出来なかった。
だが、
「させるかッ!」
「っ!?」
袈裟斬りにされる寸前で、片手の刃を挟み込んだ!
反応できたわけではない。ただ、俺は最初から『対応できないこと』を前提に、武装を盾とすべく腕を動かしていた。
俺は、ペンドラゴンという女を信じているからな。彼女が“私の剣技は、ヒトの反射速度を優に超える”と言うなら、冗談抜きでそんな打ち込みをしてくるのだろうと予測していたさ。
宇宙に響く鋼の衝突音。防御に成功した俺は、周囲の武装に敵を貫けと命じたが――、
「まだだァッ!」
鍔迫り合いも一瞬、瞬く間にこちらの刃が押し込まれる。
俺には衝撃発生スキル【魔王の波動】があるが、スキルと呪法に強化されたペンドラゴンの力は、ソレを上回っていた。
俺自身の筋力値はゼロだ。スキルによる衝撃を圧殺されてしまえば、押し負けるのは必然だった。
周囲の武装が殺到するよりも先に、受け止めていた俺の刃が肩口に食い込む。
「これで終わりだッ! 私のモノになれッ、ユーリィーーーッ!」
そしてついに、こちらの刃ごと彼女の光刃が皮膚を突き破り、俺を真っ二つにせんとした。
命散るまで残り0.1秒。加速された知覚の中、肉が裂けていく苦痛を感じる。俺のことを応援してくれているプレイヤーたちが、悲鳴を上げているのが聞こえた。
いよいよ迎えた敗北の時。そんな絶望的状況で――俺は、ニッと勝ち誇った笑みを浮かべた!
“超至近距離で、ペンドラゴンと顔を突き合わせた状態! これを待っていた――ッ!”
条件は全て満たされた。敗北までの刹那、俺は口の中に隠した『本当の切り札』をペンドラゴンに吹き付けた!
「っぁ?!」
彼女の右目に当たった切り札。これまでずっと装備してきた、俺の宝物――!
「大親友からもらった、指輪だぜ!」
ソレが直撃した瞬間、スキル【魔王の波動】が発動。わずかながらでも衝撃が発生し、ペンドラゴンの攻撃が鈍る。
そしてッ、
『キシャァアアアーーーーーーッ!』
「ぐぅううッ!?」
俺が真っ二つにされるよりも先に、ポン太郎たちの宿った武装群が突き刺さった――!
さらには鉄拳をぶつけることで、ペンドラゴンは勢いよく吹き飛んでいく。奇しくもその先は、俺たちの母星――『ブレイドスキル・オンライン』の大地だった。
宇宙空間であるがゆえに踏ん張ることも出来ず、彼女の身体は、やがて引力に囚われていく。
「ま――まだだッ!」
大気圏突入により燃え上がり始めるペンドラゴン。それでも「まだだ」「諦めるか」と声を上げながら、刃から光を放出し、星の力に抗い続けた。
「まだっ、私はぁ……!」
竜の咆哮がごとき彼女の叫び――やがてそれは、嗚咽交じりのものへと変わっていく。
「ここでッ、負けたらッ、私はキミにとって、『大勢のライバル』の一人になってしまう……っ! ようやく出会えた理想のキミがっ、遠い存在に――」
「ならねぇよ」
彼女の瞳が見開かれた。『瞬動』のアーツによって、俺が目の前に現れたからだ。
それと同時に燃え上がる肉体。ペンドラゴンと共に、流れ星となって墜ちていく。
「なっ、なんで!? 放っておいても、キミの勝ちだったのに……!」
「馬鹿言え、引力なんかにトドメさせられて堪るかよ。これは、俺とお前の決闘なんだぜ?」
「えぇっ、し、しかし――」
うだうだと何か言おうとする女王の唇。俺は人差し指を立てると、そこに柔らかく押し当てた。彼女の顔がボッと赤くなる。
「むぐぅっ!? な、ななっ……!?」
「うるさいっつの。――俺は決して、遠い存在になんかならねぇよ」
そうだ。俺にとって、全力でぶつかって来てくれる人間は、誰もが『最高のライバル』なんだよ。
その他大勢で括りなんてしない。手だって一切抜いてやらない。一人一人、大気圏に突っ込んででも全力で殺す覚悟が俺にはある。
「俺はいつだって相手になる。だから、何度だって来いよペンドラゴン! また宇宙まで追いかけてブッ殺してやるからッ!」
笑いながらそう言うと、ペンドラゴンは一瞬呆気にとられた後、やがてブフッと噴き出し始めた。
地上に向かって堕ち行く中、彼女の笑い声が空に響く。
「ふはっ、ふはははっ! そうかっ、また宇宙まで追いかけて、ブッ殺してくれるか! あぁ、まったくキミは最高だ……独り身の女をあまり喜ばせるなよ……っ!」
「おう。つっても他のみんなも相手にしないといけないからな。順番待ちが面倒だったら、みんなブッ殺して挑んできてくれ」
「うん、ぜひそうさせてもらうさ」
その瞬間、宇宙に浮かんだ巨大モニターから大絶叫が上がった。みんな、宇宙から巨大槍を落としまくるような女の相手が嫌と見える。まぁ頑張ってくれ、はっはっは。
「それじゃあ――ユーリ」
「ああ」
俺は片手を広げると、一本の矢を顕現させた。
俺をここまで導いてくれた原初の武装――ポン太郎を宿した、漆黒の矢だ。
それを高らかに掲げ、そして。
「またやろうぜ、ペンドラゴン!」
笑顔と共に、トドメの一撃を彼女の胸に突き刺した――!
・次回、最終回です!全部の力を出し切れたと思います!!!
弓「俺は!?」
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、「出版社からの待遇」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!
↓みんなの元気を分けてくれ!!!