175:終幕への絶唱
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「「オォォォォオオオオオオオオオオオオオッ!」」
――どこまでも広がる宇宙を舞台に、俺とペンドラゴンは激突を果たした。
最初から全力全開だ。周囲に展開した武装と共に、最古の女王に攻め掛かる。
「最上級アーツ連続発動ッ! 獅子王流大剣術『獅吼断絶斬』ッ、狼王流刀剣術『狼王瞬烈破』ッ、犀王流槍術『犀王富嶽迅』ッ!」
膨大なMP消費により実現した絶技の連打。次々と武器を切り替えながら、必殺アーツを叩き込んでいく――!
「まだだ! 獄道呪法『断罪の鎌』ッ、修羅道呪法『斬魔の太刀』ィイイッ!」
「チィイイッ!?」
俺の攻撃を剣一本で対処するペンドラゴン。されど最強奥義の乱れ撃ちは次第に彼女を押していき、刃の先がその身体を掠めていった。
そして発動するMP全回復能力。莫大な魔力が再び俺の中に満ちる。
「さぁ、一気に行くぜッ!」
徹底的に攻撃あるのみだ。大剣によって彼女を薙ぎ飛ばすと、俺は次に弓を握った。
もう片方の手には複数本の矢を持ち、周囲に展開したポン太郎軍団憑依武装を複数に分身させる。これで準備は完了だ。
「喰らいやがれッ! アーツ発動、『暴龍撃』三十連打ーーーーーーーーッ!」
『ガァアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーッッッ!!!』
ここに具現化する魔龍の軍勢――!
放たれた武装群はドラゴンとなって宇宙を翔け、最古の女王へと殺到した。
一発一発が幾人ものプレイヤーをまとめて屠るほどの超攻撃だ。これならば彼女でも対処しきれないと思ったが、しかし。
「――まだだァッ! 最上位スキル連続発動ッ、【剣の極み】【修羅の悦楽】!」
彼女の身体から闘気が立ち昇る。
スキル【剣の極み】と【修羅の悦楽】。どちらもザンソードとキリカが使っていた剣士系ジョブの切り札スキルだ。
そこへさらに、ペンドラゴンは強力な異能を重ね掛けする。
「代償型強化系スキル【終幕への一刀】ッ!」
瞬間幾撃。ペンドラゴンの闘気が莫大に膨れ上がるや、魔竜の軍勢が一瞬にして斬滅された。
遅れて周囲に放たれる剣圧。大爆発でも起きたかのような衝撃波が伝播し、小さな星々がまとめて消し飛ばされる。
「ッ、何だこの威力は……さっきのスキルの能力か」
「ああ。スキル【終幕への一刀】は、毎秒一割のHPとMPを消費する代わりに、斬撃の威力を十倍にする。
これを、HP・MP回復スキル【剣の極み】【修羅の悦楽】と組み合わせれば……」
「息切れすることなく必殺級の攻撃をしまくれるってわけか」
ハッ、おもしれえ。それでこそ燃えるってもんだ。
俺は態勢を立て直すと、再びペンドラゴンと向き合った。虚空を踏む足に力を籠める。
「そんじゃあ――!」
「再開とゆくぞォッ!」
掛け声と共にぶつかり合う。激突した刃から火花が噴き上げ、暗き戦場を彩っていく。
「「死ねぇえええー------ッッッ!!!」」
――そこからの戦いは、まさに決死の殺し合いとなった。
流星の如く宇宙空間を乱れ舞い、必殺の攻撃を幾重も交わらせる。
一撃、十撃、百撃、千撃。一瞬の内に全力奥義をぶつけ合い、一瞬ごとに互いの限界を超越していく――!
「ペンドラゴンッ!」
「ユーリィィィィッ!」
笑いながら、叫びながら、あらゆる力を出し尽くしていく。
数々の師範たちから習った高等アーツを全て放った。数々の最高級レアアイテムから製造したキメラ軍団を全て呼び出した。
爆殺武装を全て呼び出し、強力な使い魔たちも次々とぶつけ、これまで培ってきた全部をペンドラゴンに披露する――!
「この数か月間ッ、俺は本当に楽しかった! この『ブレイドスキル・オンライン』と出会えて幸せだった!
だから、全部余さず喰らってくれよペンドラゴン! 色んな仲間やライバルたちからもらってきた総力を!」
「あぁいいぞッ! ならばこそキミも喰らうがいいッ! これまでの数年間ッ、並び立つ友もなくッ、ようやく見つけた悪鬼もとっくに誰かのモノでッ! ゆえに寂しく磨き続けた悲しい女の独力をなぁ!」
光の刃が無尽に奔る。あらゆる俺の攻撃総てを、彼女は斬滅していった。
まさに究極。まさに最強。超常の電脳界に何年も君臨してきた彼女の技量は、もはや人外の領域へと達していた。
――それでも、
「諦めるがいいッ!」
「お前がなァッ!」
俺に向かって放たれた神速の刃に、【神殺しの拳】を叩きつける。
確かにペンドラゴンは強敵だ。あらゆる攻撃が通じない。――だが同時に、俺もまた彼女の攻撃を防ぎきっていた。
まさに完全な互角状態。互いに互いを殺しきれず、何度もぶつかっては弾かれ合う。
「アハッ、アハハハハッ! あぁ楽しいなぁ、ずっと戦っていたいくらいだ!」
「同感だぜペンドラゴン。――だけど悪いな、永遠にお前とバトるわけにはいかないんだよ」
俺はちらりと上空を見た。そこには巨大ウィンドウに映る、数多の宿敵たちが。
彼らの瞳に炎を見る。視線だけで、みんなの思いが伝わってくる。
「みんな、俺たちみたいに熱いバトルがしたいってウズウズしてやがる。この戦いが終わったら、アイツらの相手もしてやらないとな」
「ほう、相変わらずお優しいことだなぁキミは。……安心したまえ。キミを倒して屈服させたら、私が代わりに始末しておくさ。キミはこれから私だけの宿敵になるんだよ、裕理」
「っ!? お、お前、最後に名前のイントネーションが……え、まさかお前、俺のリアルを!?」
「ふふふふ、何のことだか……!」
ってこぉぉおおおっわ!? なんて女王様だッ! これ、負けたらマジで俺食われるじゃねえか!?
「はぁー……ま、いいか。どうせ負ける気はないからな」
「減らず口を」
「お前もな?」
――本当はもう疲れてるくせに。そう指摘すると、ペンドラゴンは微笑を浮かべたまま押し黙った。
……しかし、それは俺も同じだ。本当はもうふらつきそうだ。でも、そんな無様な姿は絶対に見せない。俺もペンドラゴンも、見てくれているみんなのために最期まで『最強のプレイヤー』たらんと、残る気力を振り絞る。
「さぁ、これが最後の手札だ。グリムが宿してくれた一手、装備に宿った『異界のアーツ』。今こそ使わせてもらうぜ……!」
俺のドレスから闇の炎が立ち昇る。――それと同時に、ペンドラゴンの鎧からも白き光が溢れ始めた。
「ッ、お前、それは……」
「ふふふ、奇遇だねぇユーリくん」
って、お前も同じ切り札を隠してたのかよ……。まぁこの技はかつて、ペンドラゴンを撃退した時に得た素材から発現したアーツだからな。それもおかしくはないか。
「おいペンドラゴン。『この技』って詠唱付きのアーツのはずだぜ? 詠唱中に攻撃を喰らえば失敗だ。俺を相手にして、唱えきれると思ってるのかよ」
「それはこちらの台詞だよ。さぁ詠唱を始めるがいい――舌ごと切断してやるからなぁッ!」
「やってみやがれッ!」
かくして俺たちは、幾度目の激突を開始した――!
共に刃をぶつけ合いながら、終わりの呪法を謳い上げる。
「『昏く沸き立つ地獄の炎よ、解放の時はやってきた』」
「『輝き溢れる浄土の光よ、解放の時はやってきた』」
刹那に響くは、闇と光の共鳴歌。
殺意と闘志の絶唱を口に、俺たちは終幕へと向かっていった――!
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