171:終わりの空
『な、なんだありゃー-------ッ!?』
戦場に悲鳴がこだまする。
誰もが戦いを止め、終わりの空を前に震えた。
――マーリンより、『ブレイドスキル・オンライン』の歴史は聞かされていた。
彼曰く、『北欧神話』の世界に『クトゥルフ神話』の宇宙神・アザトースが攻め込んできたというストーリーらしい。
世界に蔓延る怪物たちも、アザトースのスペースファンタジー的超技術によって生み出された存在だとか。
うんうん、そこまではわかる。少し突飛だが理解できない設定ではない。
SFを絡めた世界観いいじゃないか。宇宙って聞くとワクワクするしな。
メタ的な話、ファンタジー世界にはなさそうなメカメカしい武器を実装したい時にも、『宇宙技術で作りました』ってことにすればいいしな。そういう意味では幅の効く設定だ。
うん、宇宙って概念があるのはいい。それはいいんだが……、
「……宇宙って、エリアとしてちゃんと存在するのかよッ!? ペンドラゴンのやつそんなところにいたのかッ!?」
天の果て――成層圏より落ちてくる無数の巨大槍を見上げ、俺は盛大に突っ込んだ!
まったくの盲点だった。空の高さがどれだけあるかは気になってたが、まさかそこまで行けるとは思わなかった。
あの白づくめで美人で超絶目立つペンドラゴンが見つからなかったのも納得だ。どんな方法を使ったのかは知らないが、宇宙に行かれたら探しようがない。
「はっ、はは……。世界を覆うダメージエリアも、ドーム状じゃなくて壁だ。世界の中心の、そのまた空の上まで行けば、イベント終了まで影響を受けることもなくなる……!」
誰もが右往左往とする中、俺は静かに『敗北』を実感する。
ああ、認めよう。
戦略面では完全にこちらの負けだ。
発想のスケールが違いすぎる。
「流石は、VRゲーム界最古の女王」
電脳世界に降り立ってから二カ月程度の俺では、考えられない策略だ。
ペンドラゴンのヤツは味方ごとプレイヤーをこの街に縛り、誰も逃げられなくなったタイミングで絶滅させる気だったんだ。
あぁクソ負けた。戦略面ではお前の勝ちだよ、ペンドラゴン。
でもっ!
「バトルそのものの勝敗までは、絶対に譲ってやるものかよ。――盾よッ!」
俺は絶対に諦めない。最硬度の盾を七枚、頭上に展開する。
さらには盾を強化する防御系アーツ『閃光障壁』をMPの限り唱え続ける。
「『閃光障壁』『閃光障壁』『閃光障壁』『閃光障壁』ッ! 今さら逃げることは間に合わない……だったら足掻きまくってやらぁッ!」
頭上に迫る極大殺意の流星群。大気圏摩擦に炎上し、真紅に燃えた槍の豪雨が視界を満たす。
いよいよそれらに圧し潰される三秒前まで、俺は防御を固め続けた。
「さぁ、生き残れるかは賭けだ! 俺の運に命を懸ける――!」
そして、ついに訪れる運命の時。
冷や汗を流す俺の前に、二人の男が立ち……、
「馬鹿言えユーリ。不運なオメェは運じゃぁなく、オレ様たちを信じろや」
「ああ――拙者たちの命を、おぬしに捧げよう」
背中越しに微笑むスキンヘッドとザンソード。
彼らは拳と刀を構え、こちらに向かう巨大槍へと飛び掛かった――!
「お、お前らっ!?」
そんな宿敵たちの雄姿を最後に、俺の身体は衝撃によって吹き飛ばされた……。
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