170:衝撃の真実
――ユーリたちが決着をつけた頃。ヤリーオとクルッテルオもまた戦いを終えていた。
「ふぃ~、やってやったっスよ……!」
「しんどかったぁ……! 情報ギルドのボスのくせに、なんで戦闘力まであんのよ」
肩で息をする二人。されど彼らの視線の先には、致命傷を負ったマーリンの姿が。
二人はトップ勢の意地に懸け、女神側の強敵を打倒することに成功したのだ。
「ハァ、やられたわぁ……。全力を出して負けると悔しいものねェ」
光の粒子と化していくマーリン。「今度本気で鍛えようかしら」と呟く。
そんな彼に、クルッテルオが鼻高らかに近づいた。
「ふふん、大戦のほうも私たちが勝ってやるんだからっ! アンタとペンドラゴンが考え出したっていう、地獄の戦術も乗り越えたわけだしね~」
「地獄の戦術……あぁ、『浸透戦術』のことかしらン?」
浸透戦術――それは第一次世界大戦の頃に開発された攻め手の一つである。
特殊兵器による支援攻撃を行いながら、全方位より歩兵を前進。そして穴の開いた部分から雨水のように洩れ込んでいく様から、浸透戦術と名付けられた。
今回、女神側が行った策もまさにそれだ。
特殊兵器の代わりに偽ユーリ軍団の『ジェノサイド・バード』を用い、ゲーム世界で再現してみせたのだ。
「キリカにやられて負け犬エリア送りになった時、掲示板を覗いたら書いてあったわ。『ペンドラゴンはあえて背後から壁が迫る状況を作り上げ、味方プレイヤーたちが全力にならざるを得ない地獄の行進をさせた』って。それで数に勝る自軍から、慢心や甘さを取り除かせたとか」
敵も味方も地獄みたいな気にさせるとか、とんでもないやつねーとクルッテルオは呆れる。
「でも、ユーリが頑張ってくれたおかげで、『ジェノサイド・バード』の爆撃による死者はゼロに終わった。結局こちらはほとんど数を減らすことなく白兵戦に持ち込めたんだから、もう打ち破ったようなもんよ!」
薄い胸を張るクルッテルオ。敵軍の知将を倒せたことに、酷く上機嫌なようだ。ヤリーオのほうも「目立てた目立てたっ!」と鼻息を荒くしている。
そんな二人に対し――マーリンは光と消えながら、ぽつりと一言。
「まだ、地獄の策は終わってないわ」
「「え」」
二人の身体が固まった。思わぬ一言に、思考が数秒空白となる。
「え、え……?」「終わってないって、どういうことスか……?」
困惑しながら聞きただす二人。しかしマーリンはもはや消えるまで秒読みだった。それに教えてやる義理もない。
されど、
「まぁ、もう間に合わなさそうだしね。アタシを倒したご褒美として、これだけは教えてあげるわン」
身体が砕け、天へと昇っていくマーリン。
唇が粒子と化す刹那、最後に一つだけ言い残す。
「この世界にも、宇宙ってあるのよ?」
◆ ◇ ◆
「――はぁぁぁ、スキンヘッドくんとの戦いに熱中し過ぎたのが敗因だな。昔のオレなら、どんな不意打ちにも反応できたんだが」
「お、昔はすごかったアピールか老兵?」
「うるせぇ新兵、少し鈍ってただけだ。お前今度はサシで挑むからなユーリ」
悔しげに睨んでくるアラタに「バッチコイ」と返してやる。
戦いは終わった。特殊ルールに乗じた形ではあるにしろ、俺たちはVR界のベテランに勝利することが出来た。
今や、アラタもアンジュも昇天を待つだけの身だ。アンジュのほうをちらりと見れば、ザンソードが何やら話しかけていた。
「おぬしは強かった。あと抱き締めたとき柔らかかった」
「ひえ」
捕まってしまえ。
……まぁその後すぐにスキンヘッドが蹴っ飛ばしてくれたけどな。
そんな仲間たちを見て、アラタがなぜか笑みをこぼした。
「ふふ……キミの友達は面白いな、ユーリ。ウチの弟にも、あんな愉快な友人たちが出来るといいんだが」
「へえ、弟いるのかよアンタ」
「ああ、ちょっとネガティブ気味なヤツがな。
そうだ、今度ブレスキを勧めてみることにするよ。どんな苦難にも負けないキミの姿を見せたら、元気を出してくれるかもだからな」
へ~そりゃいいや。俺がビシバシ鍛えなおしてやるぜ。
そんな話をしていたところで、いよいよアラタは光の粒子と化していく。
「ちなみに、ユーリ。ペンドラゴンは本気でキミを愛しているぞ」
「へー……んンッ!?」
とんでもない一言に咽てしまう。
えっ、愛!? 愛って、えッ!?
「アイツとは昔からの付き合いなんだが、オレはアリスさんを選んじゃったからなぁ。それに最近は結婚資金を溜めるために仕事漬けで構ってやれなかったし、相当こじれてたんだろう、うん……」
「うんじゃねーよッ! え、愛ってあの愛なの!? ラブって意味での愛なの!?」
いや、いやいやいやいやいやいやイヤー……あー、うん……まぁ、喫茶店での別れ際、俺の言葉にアイツがめちゃくちゃルンルン気分で去っていくのは見ていた。
自分はどうしようもない女だ、期待した相手を追い詰めすぎて壊してしまう――と吐露した彼女に、手を握りながら「俺のために頑張ってくれてありがとう。俺は絶望が大好きだからお前のことめっちゃ好きだぜ」的なことを言ったら、ちょっと泣きそうなくらいに瞳を輝かせていた。
その後、額にキスまでされたしな。うん。
「――って、あああああああああッ!? お、俺落としてた!? アイツのこと落としてたのッ!?」
「心当たりがあるようだな。まぁ受けいれるにせよ断るにせよ、どうか強い意志を持ってくれ。本気のアイツはもう滅茶苦茶だぞ」
「うるせーよわかってるよッ!」
くっそ、あのあらゆる手を使ってくるペンドラゴンにガチアプローチされたら、リアル住所調べられてベッドに潜り込まれてもおかしくないぞ!?
今度ウチに婚約者を連れてくるっていう兄ちゃんに対して、俺も婚約報告カウンターを決めなきゃいけなくなるぞ!? 婚約報告カウンターってなんだチクショウッ!
「そ、そりゃアイツはめちゃくちゃ綺麗だけど……えぇ……?」
まさかの情報爆弾に頭を抱えてしまう。
そんな俺を放置して、天へと昇っていくアラタ。本当にとんでもない事実を教えてくれたものだ。
ゆえに俺は、彼のことを恨めしげに目で追ったことで……気付いてしまった。
「さぁユーリ、そろそろ気合いを入れなおせよ。――極上の愛が、堕ちてくるぞ」
アラタの言葉を耳にしながら、『始まりの街』の空を見上げる。
そこには、無数の巨大槍が流星の如く落ちてきていた――!
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