14:動き出したやべーやつ!
「フランソワーズ、装備をもらいにきたぞー!」
「まぁユーリさんっ! ワールドメッセージで知りましたわよ!? ダンジョンの最速ソロ攻略、おめでとうございます!」
ゲーム開始から三日目。俺は服職人のフランソワーズの店を訪れていた。
いやぁ、地下墳墓での戦いは楽しかったなー! 最初に潜った時にはあやうく死にかけたが、頭のおかしい装備でHP1プレイを始めてからはサクサクだぜ!
これからさらに装備を揃えて、もっともっと強くなってやる!
「ふふっ、スキンヘッドに『不遇要素満載で攻略を目指すヤツがやってくる』と聞いた時は驚きましたけど、本当にやってしまいましたわね。そんな方の装備を作れて嬉しいです!」
「おうっ! この調子で二日後のバトルイベントでも大活躍して、フランソワーズの装備を宣伝しまくってやるからな! それじゃあさっそくもらえるか?」
「ええもちろんっ!」
彼女が笑顔で応えると、『アイテムボックスにフランソワーズさんからプレゼントが送られました』というメッセージが表示された。
頭と身体と足用の装備一式みたいだ。さっそくアイテム画面からそれらをタップしてみると、俺の身体が光に包まれ――、
「ってうわああッ!? 覚悟はしてたけど、マジで女の子用のドレスかよ! しかもなんかアイドルっぽい……!?」
次の瞬間、俺の服装は黒と白を基調としたゴシック風のドレスに変わっていた!
しかし肩や腋がざっくりと露出してたり、長くてフリフリなスカートが何重にもなってたりと、なんとも目立つ格好だ。
思わず恥ずかしくなってしまう俺に、フランソワーズはハァハァしながら告げてくる。
「ふふふふふふふふふ! 流石はユーリさん! その通り、歌手やアイドルが着ているようなドレスをイメージしてみましたわ!
アナタの長くて綺麗な銀髪に似合うようにゴシック調の色を選び、髪の片方の一房だけを黒いシュシュでまとめてワンサイドアップに!
そして羨ましくなってしまうようなツンと突き出たお胸を強調するよう胸部には白い布地を選んで、後はそこを中心に黒で彩っていき――!」
「わ、わかった! わかったからっ!」
クネクネしながらめっちゃ早く話すフランソワーズを止め、俺は早速性能を確認することにした。
どれどれ~、
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・頭装備『死神の髪飾り』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・体装備『死神のドレス』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・足装備『死神のブーツ』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
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「おーっ! 幸運アップはもちろん、MPアップはありがたいなぁ~!」
これでポン太郎たちを支援するためのアーツがもっと使えるようになったぜ!
サモナーの戦いはモンスター依存だからな。あいつらを強化できるようになればそれだけ戦闘力が上がるってもんだ!
「うふふっ、喜んでいただけたようで何よりですわ。……最初はHPや防御値を強化してあげたいと思ったのですが、ユーリさんは幸運値極振りなんですから、半端に耐久力を伸ばしても他のプレイヤーの劣化にしかならないでしょう?
それならば長所をさらに伸ばしてあげるのが一番かと思いまして」
「ああ、大正解だよフランソワーズ! 俺、HPが1になる装飾品を付けて戦ってるからさ!」
「ぶぇえええッ!? こ、幸運値以外がゼロの上にHP1でダンジョン攻略しちゃいましたの!? ……本当にユーリさんのプレイスタイルは異常……あ、いえ、ユニークですわねッ!」
ふはははは、まぁな! 男だったら目指せオンリーワンってやつだ!
俺が上機嫌に笑ってると、ふとフランソワーズが考え込むような表情を浮かべた。
「どうしたんだ?」
「ああいえっ。その、ユーリさんって攻撃のほうはどうにかなってるようですが、敏捷値のほうは大丈夫かなと思いまして。
この先モンスターもどんどん人間離れしたスピードになってきますし、移動するにも時間がかかってしまいますわ」
あ~たしかになぁ。後半になってきて、プレイヤーたちの足がめっちゃ速いことを前提とした広大なダンジョンが出てきたりしたら面倒だな。
防御のほうはもう全部スキル【根性】で何とかすることにしたから諦めたけど、移動速度を上げる手段は欲しいところだ。
……あ、そうだ!
「出てこい、マーくん!」
『ッ――! ッ――!』
俺の呼び声に応え、虚空から黒いモヤが出現した。
それを見てフランソワーズが飛び跳ねる。
「ひえっ!? なんですのそれ!?」
「こいつは召喚モンスターのマーくんだよ。昨日倒したボスモンスター、リビング・アーマーナイトが仲間になったんだ」
「えっ、ボスモンスターって仲間になるものなんですの!? そんなのβ時代には聞きませんでしたけど!?」
「ああ、パワーダウンしたついでに喋れなくなってるみたいだけど調教に成功したぞ。俺の幸運値が1200突破してるからかな?」
「1200ッ!? どうなってますのそれぇええッ!?」
驚きの声を上げるフランソワーズをよそに、俺はマーくんに指示を出す。
武器にモンスターを憑依させた場合、威力に筋力値が加算されるとしたら……、
「マーくん、俺のブーツに憑依してくれるか?」
『ッ――!?』
「なんだよ嫌なのかよ。じゃあドレスの中に入ってくるか?」
『ッ!!?』
そう言ってスカートをひらひらさせると、マーくんは『え、ええいっ、靴でいいわッ!』って感じでなぜか慌ててブーツに入っていった。するとやはりこうなった。
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装備アイテム『死神のブーツ』に憑依させました!
足装備に憑依させた場合、モンスターの敏捷値が移動速度に加算されます!
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「おー、やっぱり俺の思った通りだ! 一緒に戦ってレベルアップしていけば敏捷値も増えていくだろうし、これで移動速度問題は解決だな!」
アーマーナイトはかなり早いモンスターだったし、こりゃ期待できそうだな!
よーしこれで装備の一新は完了だぜ! おかげでステータスはこんなことになった。
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名前:ユーリ
レベル:20
ジョブ:サモナー
使用武器:弓
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:0 敏捷:0 幸運290×3×2+29+90=『1859』
スキル
【幸運強化】【根性】【致命の一撃】【真っ向勝負】【ジャイアントキリング】【非情なる死神】
【アブソリュートゼロ】【ちゃんと使ってッ!】【逆境の覇者:HP1のため発動状態。全ステータス二倍】【異常者】
装備
・頭装備『死神の髪飾り』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・体装備『死神のドレス』(装備条件なし MP+30 幸運+30)
・足装備『死神のブーツ』(装備条件なし MP+30 幸運+30 マーくん憑依状態)
・武器:『初心者の弓』
・装飾品:『呪いの指輪』(HPを1にする) 『邪神契約のネックレス』(HP1の時、幸運値三倍)
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……わぁお。
「すまんフランソワーズ、幸運値1200っていうのは間違いだったわ」
「あらっ、やっぱりそうでしたの!? まぁですわよね~! 他の一般的なプレイヤーのステータスが色々とスキル込みで300いけばすごいところですのに、極振りだからって1200は……」
「いや、1800超えてた」
「1800超えてたッッッ!?」
大絶叫を上げるフランソワーズ。
いやいやいや、俺だって驚いてるんだぞ? そっかぁ、改めて確認したらこんなことになってたなんて……!
「よーーーーしっ、今日中にキリよく2000を目指すぜ!」
「っていやいやいやいやいや目指さないでくださいましッ!? ねぇもうここまで上げたら十分じゃありませんッ!? そんな頭のおかしい幸運値でフィールドで暴れられたらレア素材乱獲祭りになってしまいますわよッ!? そしたら色々バランスがっ」
「いや、世間の幸運値極振りを舐めてる連中をわからせるためにも俺は鬼になるッ!」
「鬼にならないでくださいましーーーーーーッ!? 世間の幸運値極振りを舐めてる人たちッ、はやく考えを改めてぇッ!
あぁ誰ですのっ、ただでさえ幸運値オバケなこの人にさらに運が上がる装備を渡したのは!? ってわたくしだったーーーーーーッ!?」
顔を赤くしたり青くしたりビタンビタンと跳ねまわっているフランソワーズに別れを告げ、俺は店の外へと飛び出した!
「見てろよ、俺のことを騙した悪質βテスター連中めッ! 馬鹿にしまくってくれたサモナーと弓と幸運値極振りで、お前らの上を行ってやらーーーッ!」
二日後のバトルイベントに備えて新しく仲間になったポン太郎ファミリーズやマーくんのレベル上げもしたいし、他のダンジョンも攻略してやりたいし、やることがいっぱいだな! はっはっはっはっはー!
フランソワーズすこ
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