145︰開戦、『絶滅大戦ラグナロク』!
『――これでいいかッ!? これでパクリじゃないかぁ!?』
涙目でツインテールを作るアザトース。プレイヤーたちに俺のパクリだと言われた件が相当心に来たらしい。
「ははっ……まぁ銀髪赤目なんて、ネトゲーじゃそんなに珍しくないらしいからなぁ」
俺の場合はランダムキャラエディットの結果だが、あえてこの組み合わせをするプレイヤーは多いようだ。アリスなんかもそうだし。
運営もたぶん、『こんな見た目にしとけば外れはしないだろ』とテキトーに設定したのだろう。ヤツらのことだから間違いないぜ。
『くっ……なんという屈辱。ユーリといったな、貴様殺す』
「殺すな殺すな。お前の敵は女神だろうがよ」
恨めしげに睨んでくるアザトース(ツインテール化)に苦笑で返す。
開幕早々、魔王サイドはカオスの極みだな。まぁこういうアホらしくて騒がしい空気は嫌いじゃないぜ。
『よし――では気を取り直して、絶滅大戦の正式なルールを教えよう』
こほんっと咳ばらいをし、アザトースは説明を始めた。
その内容をまとめるとこんな感じだ。
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1:本日に限り、魔王側プレイヤーは『魔王墳墓ユゴス』の設置された土地にログイン。女神側プレイヤーも『女神の霊樹ユグドラシル』の設置された土地にログインすることになる。街から出ることは出来ず、絶滅大戦まで待機。
2:戦場となるのはブレスキ世界全土。また絶滅大戦開始より、世界中に存在する全てのモブNPC・野良モンスターは一時消失する。
3:勝敗の付け方は単純。片方の陣営を絶滅させたほうの勝利。(※倒されたプレイヤーは特殊エリアに転送され、イベント終了まで観戦することしか出来なくなる。またイベント開始時以降にログインしたプレイヤーも、本日限りはそのエリアに降り立つ)
4:大戦開始時より、世界中の端が『死のエリア』に変異。そこにいる限り常時ダメージを受け続ける。また『死のエリア』は、徐々に世界の中心に向けて浸食していく。そのため、僻地に隠れ潜み続けることは出来ない。
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「――なるほど。一つ目のルールがあったから、今日は街がこんなことになっていたのか」
ごった返したヘルヘイムの街を見渡す。きっと女神側の本拠地である『雪原都市ニブルヘイム』も騒がしいことになっているのだろう。
アリスなんかは人混みに酔っちゃいそうだから心配だな。あとコリンもちっちゃいから押し潰されそうだ。
「世界全土が舞台になるのと殲滅戦ってのは把握済み。ダメージエリアが迫ってくるルールも、公式サイトに書いてあったな」
四つ目のこのルール、バトルロイヤル系のゲームでは定番だと聞く。
ただしどこに向かってダメージエリアが迫るかは、ゲーム開始までランダムなのが常だそうだ。
世界の中心に向かって――ってのも、今日初めて聞いたしな。これは色々と考えねば。
「ともかくルールはわかったぜ。ただ、気になることが一つあるんだが……」
俺は手でメガホンを使って、魔王アザトース様に質問する。
「おーいアザトースー! んで、お前はどういう役目なんだー!? 一緒に戦ってくれるのかー?」
そう問いかけると、彼女が肩がビクッと跳ねた。
他のプレイヤーたちもそのへんは気になっていたらしく、「超強力お助けキャラみたいなー?」「魔王様のいいとこ見てみたーい!」と声を上げる。
そんな俺たちに対し、アザトースはしばし押し黙った後……、
『じ……実は妾は霊体だから、現世への干渉はできなくて……つまりその……!』
「「「「「つまりー?」」」」」
『つっ――つまり、妾の役目はおぬしらを応援するだけなのじゃーッ!』
「「「「「って使えねぇえええええええッ!」」」」」
その瞬間、魔王側プレイヤーたちの心が一つになった……!
街に吹き荒れる「使えねぇ!」コール。まさかあんなに仰々しい登場をしておいて、ただのマスコットだとは誰が思ったものか。
人々は口々に「補助魔法くらい使えねーのかよー!?」「アンタただ可愛いだけかよー!」「やっぱオレらの大将はユーリちゃんだわー!」と叫び、そのたびにアザトースの顔が真っ赤になって震えていく。
『うっ、うるさいうるさいうるさぁいっ! 女神ユミルのほうも同じなんだから、妾ばかり責めるなぁ~!』
いよいよブチキレ始めたアザトース。
いやまぁ激怒してるっていうより、子犬がキャンキャン吠えているようなそんな印象しか感じないんだけどな。何とも可愛らしい魔王様だ。
「ははは……癒されはするけど、これじゃあ雰囲気出ないよなぁ」
仕方がないか……。俺は群衆の中から前に出ると、足元に召喚陣を出現させた。
数多の視線が一気に集まる。それらを背中で感じながら、俺は虚空に呼びかける。
「現れろ、『バニシング・ファイヤーバード』」
声に呼応し、召喚陣より炎の巨大鳥が姿を現した。
俺の相棒の一人、ボスモンスターのチュン太郎だ。彼はこちらの意思を汲み取り、俺を背に乗せ羽ばたいた。
魔王側のプレイヤーたちの頭上まで飛翔する。
『な、なんじゃおぬしはっ』
「アンタはちょっと大人しくしてろ」
『は、はい!?』
同じく空にいるアザトースを黙らせ、俺はプレイヤーたちを見渡した。
そして、
「――お前たち、そろそろ気合いを滾らせろ。殺し合いの時は近いぞ」
静かに、重く、呼びかける。
その瞬間、浮ついていた空気が引き締まった。プレイヤーたちの顔付きが変わる。
「さぁお前たち、よく考えてみろ。……敵の戦力は倍以上。そのうえ無数の刺客プレイヤーたちと、俺のスタイルを真似た集団までいやがる始末だ。普通に考えたら勝てないだろう?」
その言葉に、反論する者はいなかった。
全員わかっているはずだ。俺たちは最初から劣勢であり、勝てる可能性は皆無に等しいと。
だがしかし、
「それでもお前たちは、こうして戦場に集まってくれた……! 劣勢になるのはわかっていたはずなのに……勇気を出して参戦してくれたっ!」
そのことが誇らしくて堪らない。
有利な軍勢に与することなら誰だってできる。だが、不利を承知で戦場に立てるヤツはそうはいない。
俺は心からの尊敬を込めて、8万人の勇者たちを見つめた。
彼らの瞳もまた、己が選択の誇らしさに輝く。
「今回の『絶滅大戦』は、ネットゲーム史上最大規模のイベントだと聞く。戦いの様子は動画サイトで生配信されるそうだ。
視聴者たちは思っているだろうよ。これで魔王側が勝ったなら、そいつはきっと奇跡だと」
――ならばこそッ!
「起こしてやるぜっ、奇跡ってやつを! 魅せてやろうぜ、俺たちが勝つ瞬間をッ!
ネットゲーム界の歴史に、新しい伝説を刻んでやろうやァァァーーーーッ!」
「「「「「オォオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」
一斉に吼える大軍勢――!
その咆哮は大地を揺らし、空気を熱く染め上げる。
よーし、みんな気合いは十分みたいだなッ! 俺は最後に『わ、わらわ、忘れられてる……?』と呟くアザトースに向き直り、ビッと親指を突き出した。
『ふぇ……?』
「ふぇじゃねーっつの。そらアザトース、場は暖めてやったぜ?」
深紅の瞳と目を合わせる。
たとえこいつがNPCで、設定だけの魔王様だろうが、それでも『王』ならやるべきことがあるだろうがよ。
「……この戦いは、アンタが女神とおっぱじめたものなんだろう? だったら手下に舐められんなよ。無力だろうが堂々としろ。そして開戦の号令は、お前自身で吼え叫べ」
『おぬしっ……。ぅ……うむッ!』
俺の言葉に、アザトースもまた表情を改めた。
彼女は黒き翼を広げ、覇気ある声を響かせる。
『――魔の使徒たちよ。決戦の時はやってきた! 血に飢え牙剥く獣がごとく、その手に殺意の武装を握れッ!』
ウオォオオオッ! という叫びがヘルヘイムにこだまする。
得物を掲げるプレイヤーたち。その全員の武装は今や、黒き鋼を表面に纏わせていた。
ところどころに入った血のように赤い魔力のラインが禍々しい。アレこそ魔王側プレイヤーの証、『魔鋼武装』の数々だ。
もちろん俺も全ての武装を改造してもらったぜ。(※百本以上あるので、生産職部隊が死にかけた)
「さぁアザトース、もう待ちきれねーよ。どうか最後の言葉を頼む」
胸を高鳴らせる俺に、彼女は力強く頷いた。
そして腕を掲げると……、
『よろしい。ではこれよりッ――「絶滅大戦ラグナロク」を開始するッ!』
ついに放たれた開戦の号令。
かくしてここに、史上最大の大激戦が幕を開けたのだった――!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
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