143︰女神との茶会
「貴様たちよッ! ユーリくんを手に入れたくば、私を倒してからにしてもらおうかッ!」
「「はぁぁぁああッ!?」」
それからはもう大変だった。
突如として現れたペンドラゴンは、別にザンソードとスキンヘッドの決闘を止めようなんて思っちゃいなかった。
ただ単に『私を差し置いてユーリくんを取り合うとは何事か』と割って入りたかっただけだったらしい。
そして三人は街中で激突し……、
「――フッ、まさか憲兵NPCに捕まるなんて思わなかったよ」
「いや当たり前だろうが……」
なぜかキメ顔をするペンドラゴンに、俺は呆れながら突っ込んだ。
現在の場所はヘルヘイムにあるオープンカフェだ。ペンドラゴンと向き合う形で座り、ザンソードとスキンヘッドは俺の背後に立ってヤツを睨みつけている。
「フフフッ、流石はユーリくんを支えるツートップだね。その瞳に宿った闘志……キミたちもまた私を殺すに値するよ」
「ってカッコいいこと言ってんじゃねーぞペンドラゴン。そこの二人もそうだけど、ヘルヘイム領主の俺の権限があったからすぐに釈放されたんだからな?」
「フッ」
いやフッじゃねーよバカ。いきなり現れていきなり逮捕されるボスキャラがいるかよ……。
俺はお冷をグビグビ飲みながら、改まってペンドラゴンに問いかける。
「それでお前、どうしてこんなところにいるんだよ? ここ、魔王側プレイヤーの本拠地だぞ?」
そう。そしてコイツは女神側のトップだ。完全アウェーもいいところだろうがよ。
現に彼女のことをよく思っていないプレイヤーも多く存在し、道行く者たちがちらほらとペンドラゴンのことを見ていた。
しかし、当の本人はまったく気にしていない様子だ。数々の視線を全て無視し、のんきにミルクティーを飲んでいた。
「なぁに、別にいいじゃないか。ここは縛りなきゲームの世界。たとえどんな地位に就こうが、どこに行って何をするかはプレイヤーの自由なんじゃないかい?」
「むっ……」
そう言われると何も反論できないな……。まぁこいつの場合は自由すぎで、やる事なすこと滅茶苦茶すぎ感はあるが。
「ここに来た理由は他でもない。私はね、ユーリくん。キミに会いに来たんだよ。本気で殺し合う前に一度、キミとはゆっくり話したくてね」
黄金色の瞳が揺らめく。ペンドラゴンは手を伸ばすと、俺の頬を優しく撫でてきた。
――背後でザンソードが「むんッ!?」となぜか興奮の声を上げ、スキンヘッドに殴られてるのが音だけでわかった。
「ゆっくりと話したくて、ねぇ……?」
「あぁそうとも。最初にキミと出会った時にも言ったけどねぇ、私は頑張っている人間が大好きなんだ」
頬を撫でる手をそのままに、彼女は言葉を続ける。
「努力する人間は素晴らしい。限界を超えようと足掻く者は、どんな分野であれ応援したくなってしまう。そして――どうしようもなく、挑みたくなってしまう……!」
その瞬間、ペンドラゴンの空気が変わった。
頬に感じる手の感触が、まるで竜の舌なめずりのように思えてしまう。
「っ……そりゃまた妙な性癖だな」
「まぁね。それもこれも、私が多才で天才すぎるせいかなぁ。自分に勝ってくれそうな人間を見つけては、その人が得意な分野で『全力』の勝負を挑み……それで、何人も潰してきたよ」
「へぇ……」
潰してきた、か。
そりゃぁ自分が一番頑張ってることでボロクソに負けたら、心が折れる者もいるだろうな。
「ま、驚きはしねーよ。お前が俺に勝つためにしてきた手を考えたらな。お前が嫌というほど優れている上、徹底的にやりすぎる奴ってのは目に見えてたさ」
「ああ……どうしようもない人間だろう、私は?」
自身をそう言うペンドラゴンに、俺は「おうよ」と即答した。
――その上で、彼女の手を掴んで言ってやる。
「お前は本当に最悪で、そして最高なライバルの一人だ。俺のために手を尽くしてくれたこと、改めて礼を言うぜ」
「ッ……!」
怜悧な美貌がわずかに崩れる。
俺の言葉に、ペンドラゴンは戸惑った様子だ。やがて彼女は困ったような表情で笑い始めた。
「ククッ……フハッ! あぁ、本当にキミはおかしな子だねぇ。私の与えた絶望の数々に、折れるどころか喜ぶとか! ちょっと異常者過ぎないかい?」
「こんな俺のことは嫌いか?」
「いや――大好きだよ、ユーリ。キミこそ理想の宿敵だ」
ペンドラゴンは身を乗り出すと、俺の額にくちづけを落とした。
背後でザンソードが「ほぉおおおおッ!?」と興奮の声を上げ、スキンヘッドに以下省略だ。
「さてと。それならば私も、こんなところで油を売っていてはいけないね。明日に備えてレベル上げでもするとしよう」
ミルクティーを飲み干し、ペンドラゴンは立ち上がった。
「今日は付き合ってくれてありがとう。私ばかりが話して悪かったね」
「別にいいさ。また今度飲もうぜ」
俺も続けて席を立つ。
そして……俺たちは同時に刃を手にし、互いの首に突きつけ合った。
「『魔王ユーリ』よ、キミは久々に出会えた最高の獲物だ。絶対に逃がしはしないからな……!」
「『暁の女神ペンドラゴン』、寝言は寝ながら言うもんだぜ? 獲物になるのはテメェのほうだよ……ッ!」
本気の殺意をぶつけ合う俺たち。
あぁ、今日は話せてよかったぜ。おかげで大戦直前に、コイツをぶっ潰したいって想いを再燃焼させることが出来たからな。
「フッ……ではまた明日。くれぐれもその殺意を緩めないようにね」
踵を返すペンドラゴン。ヤツは刃を収めると、雑踏の中に消えていった。
「って、何が殺意を緩めるな、だよ……」
俺は思わず苦笑してしまう。
――彼女の後ろ姿はまるで、殺し合いを控えた戦士というより、明日のデートを楽しみにする少女のように浮ついていたからだ。
ザンソ「キマシタワーッ!」
スキン「お前もう黙ってろ」
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