11:決戦、リビング・アーマーナイト!
「うおっ、でっかい扉発見」
『死神の地下墳墓』を荒らしまわること数時間。いよいよレベルが19になった時だ。ゾンビをボコりながら突き当たりを曲がったところで、俺はどでかい扉に出くわした。
「……これ、どう見てもボスの部屋ってやつだろ。たしか攻略サイトによると、ゾンビキングとかいうデカいゾンビだったっけか」
う~~~~ん挑もうか引き返そうか迷うなぁ。明日になればフランソワーズが新しい装備をくれるし、それからのほうが安全性は高いだろう。
たしか死亡すると経験値を20%マイナスされちゃうみたいだからな。【根性】が絶対に発動するわけじゃない以上、無理して玉砕するのも嫌だ。
「よし、今日は散々戦ったしやめとくか。無謀な真似はせず、引き際を見極めるのが出来る男ってやつだからな~」
そうして俺が踵を返そうとした時だった。不意にポーンという音が響き、視界の端にメッセージが表示されたのだ。
『ワールドニュースッ! ザンソードさんとフーコさんとエイドさんとラインハルト・フォン・エーデルフェルトさんのパーティーが、ゴブリンキングを初討伐しました! ダンジョン:ゴブリン砦、最速攻略完了!』
なっ、なにいいいいいッ!? もしかして一番最初にボスモンスターを倒せば、全プレイヤーに大宣伝してくれるのかッ!?
おいおいおいおいおいおいおいおいおい……そんなの知っちまったら……!
「う、うおーーーッ! そんなのやるしかないじゃないかッ! よっしゃぁ、俺もボスに挑んでやらーッ!」
無謀な試練にも果敢にチャレンジしていくのが出来る男ってやつだからな!!! 俺の名前を世界中に響かせてやるぜ!
「いくぞ! ポン太郎、ポン次郎、ポン三郎、ポン四郎、ポン五郎ッ!」
『『『『『キシャシャーーーーーーーー!』』』』』
了解でさぁ総長ッ! って感じでやる気いっぱいの声を上げる手下たち。
ポン次郎とポン三郎を仲間にしたあと、うろうろしてたら新たに何匹かリビング・ウェポンが現れたのでボコグチャにして仲間にしたのだ。これで暴走族も形になってきたな!
ちなみに幸運値が激増したおかげかゾンビも仲間になったのだが、痛みを感じない体質と脳みそが腐ってるせいで指示も聞かずに暴れまわってすぐ死にました。ゾン太郎、そこらへんに眠る。
(勝手に暴れて)殺されたアイツのためにも、絶対にボスを倒してやるぜ!
「たのも~!」
『『『『『キシャ~!』』』』』
巨大な扉を押し開き、俺たちはボスの部屋へと入っていったのだった。
◆ ◇ ◆
「……ってなんだここ、真っ暗じゃないか」
扉の先には広間のような場所が存在していた。しかし辺りは薄暗く、周囲の様子がわかりづらい。
う~ん急に襲ってきたらたまったもんじゃないなぁ。そう思いながら何歩か進んだ、その時。
『――挑戦者か』
くぐもった低い声が闇の中より響き渡った。次の瞬間、ボッボッボッと壁際にあった松明に火がついていき、声の主が明らかになる。
って……なんだこいつは!
『魔王様に逆らう冒険者よ、この私が相手になろうッ!』
闇の向こうにいたのは、漆黒の全身鎧を着た騎士だった!
注視すると『ボスモンスター:リビング・アーマーナイト』という文字が。ってゾンビキングじゃないのかよ!? β時代と変わってるじゃねえか!
『そちらから来ないなら、いくぞッ!』
「っ!?」
どこかから二振りの剣を出現させ、アーマーナイトは駆けてくる!
って速いッ!? 奴は数瞬で目の前にまで現れると、交差するように双剣を振るって俺の身体を吹き飛ばした!
「ぐはぁああああああああッ!?」
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スキル【根性】発動! HP1で生存!
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くそっ、いきなりぶっ殺されかけたッ! 俺は急いで体勢を立て直して弓を構えたが、そこに奴は双剣をブン投げてきやがったッ!
「ってうわぁッ!? そんなのありかよ!」
咄嗟に転がってどうにか避けることに成功する!
チクショウ、こんなの予想できるか! 剣士が剣を投げるとかどうなってんだよ!?
「くそっ、今度こそ……!」
予想外の攻撃に驚きながらも、俺が反撃しようとした時だ。ここで更なる予想外の事態が起こったのである!
『ギジャァァァアアアアアッ! ウラメシヤァアアアアアアアッ!』
「なっ――!?」
ヤツが放り投げてきた双剣が、宙に浮かび上がって咆哮を上げたのだ!
こいつらはまさか『リビング・ウェポン』!? ボスの武器までモンスターだっていうのかよッ!
……もうこの時点で何度も驚かされたっていうのに、ヤツの脅威はこれだけじゃなかった。
『さぁ、これで終わりだ挑戦者よ! アーツ発動、邪剣招来!』
アーマーナイトが叫んだ瞬間、ヤツの周囲に新たに三本の剣が出現したのだ!
それらは先ほどの双剣と一緒に、一斉に俺へと飛び掛かってきた!
「はっ、はは……こんなの無茶苦茶だな……ッ!」
迫りくる五本の剣を前に俺は呟いた。
こいつは明らかにソロで攻略できるような相手じゃない。プレイヤーたちとパーティを組み、対策を打った上で挑むようなボスだ。
こんな相手に不遇要素満載で一人で挑むなんて馬鹿げている。初挑戦で勝てる可能性は皆無に等しい。
だが、
「……だからこそ、燃えるじゃねえかあああッ!」
俺は五本の矢をつがえ、迫り来る剣の群れへと射出した!
「アーツ発動ッ! 『スピードバースト』、『パワーバースト』!」
猛加速するポン太郎たち。漆黒に光る矢は全ての剣を破壊し、アーマーナイトの身体を貫通していった!
『ぐがあああッ!? な、なんだと……! そんなか細い矢によって、我がリビング・ウェポンたちをいともたやすく!?』
驚愕の声を上げるアーマーナイト。やはりと言うべきか、穴の開いた鎧の中身は空っぽだった。
俺はポン太郎たちを呼び戻しながら、やつの疑問に答えてやる。
「破壊できて当然だろう。それらの矢にはリビング・ウェポンを憑依させてんだ。
それに俺の使い魔になったポン太郎たちは、フィールドを彷徨っていた時よりもレベルアップしてるんだからな。そこにサモナーの支援を加えりゃ、ただのリビング・ウェポンに負けるわけないだろうがッ!」
『ッ、貴様……我が同胞を手下にするとは!』
怒号を上げながら再びやつはアーツを発動させる。周囲の空間がゆらぎ、今度は六本の剣が出現した。むろん全てがリビング・ウェポンなのだろう。
『これならば防げまい! 行けええええッ!』
アーマーナイトの叫びに応えて射出されるリビング・ウェポンども。
なるほど、これなら防ぐための手数が足りない。こっちはポン五郎までしかいなかったんだからな。
だがしかしッ!
「反撃しろ、お前らーッ!」
俺は六本のリビング・ウェポンを射出し、アーツで強化することで再び剣の群れを破壊した!
ああ、出来すぎたAIってのも考えものだな! 先ほどの数秒間、やつが疑問の答えをおとなしく聞いてたおかげで無事に『登録』が完了したぜッ!
『ば、馬鹿な!? 貴様、まさか……!』
「おう、悪いなあアーマーナイト。さっきお前が放った手下ども、三本のうち一本を舎弟にさせてもらったぜ!」
ニッと笑って、俺はさらに今仲間にした二本のリビング・ウェポンを出現させた!
そう、これがサモナーの力だ! ボスモンスターが召喚する取り巻きどもを、こちらの戦力に寝返らせることが出来るんだよッ!
もっとも仲間に出来るかは運次第だが、あいにく俺は『幸運値極振り』だからなぁッ!
『異常者め……そんな頭のおかしい戦い方があるか……!』
「頭のいい俺の戦い方に何を言う。さぁアーマーナイト、勝負はここからだぜ!」
漆黒に光る八本の矢を周囲に展開し、俺はやつへと弓を構えた!
・【悲報】主人公、AIからも異常者認定……!
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