116:開幕ッ、モンスターパレード!!!
「――うーむ、プレイヤー集めかー」
ザンソードを殴り飛ばした後のこと。
ヘルヘイムの街に飛び出した俺は、歩きながら先ほどの会話を思い出していた。
「アイドルライブってのはまぁ却下だな。アイツ絶対にゲームやアニメの知識からテキトーに言いやがっただろ」
そりゃあ目立てはするだろうが、集客に使うんなら歌もダンスもそれなりに鍛えておかなきゃ恥ずかしいヤツで終わっちまう。
なにせ決戦まで六日しかないからなぁ。そんな貴重な時間をバトルに関係ないことに使えるか。
「だけど、人を集めるために手を打たなきゃダメなのも事実だよなぁ。今ある手札でパパっと客を集めるにはどうしたら……」
と、その時だった。何やら街の一角から『キャーカワイイーッ!』と黄色い声が飛んできたのだ。
なんだなんだとそちらに向かうと……。
「ねぇ見てこのネズミモンスター! 全身黄色で超キュートー♡」
「こっちのタヌキモンスターのお腹に袋があって可愛い~♡」
「あー! あのネコちゃんなんてポップコーン作ってるー!」
そこには、ちっちゃくて可愛い小型モンスターたちにメロメロな女性プレイヤーたちの姿があった。
さらには改めて街のあちこちを見てみると、道を練り歩く大型モンスターを「おー!」と見上げる男性プレイヤーや、おっかなびっくりモンスターたちに触れようとする子供プレイヤーの姿が。
「っ……そっか……! サモナーである俺にとっては、モンスターを間近で見れるなんて当たり前だ。だけどほとんどのプレイヤーにとってはめちゃくちゃレアなことなんだ……!」
フィールドで出会ったら殺し合い一択だもんな。
いくら見た目が可愛かろうが、安全に見ることなんて出来るわけがない。
だけど俺によって飼いならされた使い魔モンスターたちなら、触ることだって……!
「――いいことを閃いたぜッ! さっそくサモナー仲間たちに相談だっ!」
かつては不遇と笑われていたサモナーのプレイヤーたち。
だが、そんな境遇を俺が最強になってぶっ飛ばしてやったことで、ほとんどのサモナーが感謝の証として『魔王側』に付くと言ってきてくれた。
そんな彼らの力を借りまくるとしよう。
「たしかモンスターの譲渡って出来たよな。それに召喚モンスターはパーティ枠を食い潰すことから12体しか連れ歩けない制限も、たくさんのサモナーたちと協力すれば……よーし!」
思いついたら即行動だっ!
俺はいつのまにやらパンパンになったフレンドリストを開き、片っ端からサモナーたちに連絡を入れていった――!
◆ ◇ ◆
――かくして数時間後。俺はサモナーたちの協力も仰ぎ、『初心者の街』にて突発イベントを開いていた!
捕まえたモンスターの内の一体『インペリアル・ドラゴン』の頭部に乗り、道行くプレイヤーたちに吼え叫ぶッ!
「さぁ見るがいいッ、お前たちッ! これが魔王軍の大軍勢だァーーーーーーーーッ!!!」
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーッッッ!』
俺の一声に応え、何百体ものモンスターの群れが大行進を開始する――!
全身から棘を生やした巨大昆虫『ジェノサイド・ビートル』が、十メートル以上の巨体と灼熱の身体を誇る溶岩巨人『ラヴァ・ギガンテス』が、全身が酸と毒液で出来た凶悪粘体『ヴェノムキリング・スライム』が。他にも他にも比較的巨大で怖くてとにかく目立つモンスターたちを率い、『初心者の街』を練り歩く!
「なっ、なんだこりゃーーーーっ!?」
「やっっべぇ……ッ! こんなモンスターの群れ、勝てるわけがねぇだろ……!」
「うおッ、先頭のドラゴンの頭に立ってるのって、『魔王側』の大将ユーリさんじゃねえか! 動画で見たぜ!」
驚愕と畏怖に震えるプレイヤーたち。
突然始まった恐怖のモンスターパレードを前に、何万もの人々が釘付けとなる。
「そうだッ、よぉーく見ておけよお前らッ! そしてじっくりと考えな!
もしもテメェらが『女神側』のプレイヤーとなるなら、こいつらによって貪り喰われて死ぬだろうッ!
だがしかしッ、俺の仲間になるんだったら全てのモンスターがお前らの味方だ――ッ!」
その瞬間、再び咆哮を張り上げるモンスターたち。
魔の軍勢の叫びが街中にこだまし、多くのプレイヤーたちが息を呑んだ。
――さてさて。これで十分に『魔王側』の脅威は伝わったことだろう。
注目を集める方法なんて簡単だ。とにかく怖くて圧倒的で、巨大な力を派手に見せつければいいんだよ。
その上で敵対者への脅しと支持者への甘言を吐いてやれば、人々の心は大きく揺らめく。
まっ、ただそれだけじゃあ『怖くて嫌だ。敵も味方もしたくはない』って層も出てくるからな。
恐怖と力を見せつけた後は、ポップで楽しくしてやろうじゃないか――!
『うささっーーーーーーーーーーーーーッ!』
「「「ってうわぁあああっ!?」」」
次の瞬間、プレイヤーたちの足元を無数のチビたちが駆け抜ける――!
そいつらは一斉に凶悪モンスターたちの身体などに上り、みんなに向かって手を振った。
「かっ、かわいいぃ……!」
「あいつらって、ボーパルラビットとかピンクスライムとかか!?」
「あんなのも仲間にいるんだぁ……! ってうわ、オレの頭に乗ってきた!?」
立ち竦んでいた状態から一転、たちまち表情を緩ませていくプレイヤーたち。
――そう。俺は第二手として、チビカワモンスターたちを街のいたるところに潜ませていた!
こいつらは知能も低いので勝手なものだ。ざわざわと騒ぐプレイヤーたちのところに飛び出し、『俺を抱きなッ!』『撫でるがいい人間どもッ!』と不遜にも自分から愛されに行くヤツらが多くいた。
だがそれでいい。
プレイヤーたちは突然のことに戸惑いつつも、モンスターとの触れ合いという中々できない経験を楽しみ始めた。
そんな彼らへと言ってやる。
「さぁお前たち。俺たちが支配する街に来れば、どんなモンスターも触り放題の撫で放題だ。カッコいいモンスターに乗せてやることだって出来るし、サモナーだったら好きなモンスターを譲ってやることだって出来る! もちろん、アイテムの譲渡だって溺れるくらいにしてやるぜーっ!」
『おっ、おぉおおおぉお……っ!』
俺の言葉に多くのプレイヤーたちが目を輝かせた。
ちょうどアイテムも前回のイベントで十万個以上収集しまくったからな。死蔵するくらいならここで大盤振る舞いしてやるぜ!
――かくして、俺のモンスターパレード作戦は大成功に終わった!
この光景は動画にも撮られてネットに流れ、翌日には山ほどのプレイヤーたちがヘルヘイムの街に駆けつけてくれることとなった。
……なお、ほとんどのプレイヤーはモンスターたちの凄さとアイテムの甘言に釣られて集まってくれたのだが、ごく一部の者は『先頭に立ったユーリさんの顔が好みすぎて来ましたッ!』『下からパンツ見えてましたよ!』というクッッッソくだらない理由で味方することを決めたのだとか。
出てけお前らはッッッ!!!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『顔が好みです!!!』
と思って頂けた方は、最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、「出版社からの待遇」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!
↓みんなの元気を分けてくれ!!!




