108:ユゴスへの扉
「おいおい……ここに来てSFかよ」
未来的すぎる扉を前に溜息を吐いてしまう。
まぁクトゥルフ神話の神様たちは宇宙から来た存在らしいからな。スペースファンタジーな超技術を持っていても、おかしくはなさそうだが……。
「大胆すぎるストーリーを考えたもんだぜ、運営は」
“剣と魔法の世界かと思わせて超技術ドーンッ!”なんて、下手すりゃ荒れかねないレベルのどんでん返しだろうに。
呆れ混じりにぼやく俺に、しかしピンコは「ノンノンよ、ユーリちゃん」と指を横に振った。
「実はこの世界の物語を書いたのって、運営とはちょっと違うのよネー」
「えっ、どういうことだよ?」
ピンコの言葉に首を傾げる。
運営がストーリーの書き手じゃなけりゃ、じゃあ誰が書いたっていうんだ?
「フフ……この世界はね、機械仕掛けの神サマによって作られたのよ。
――正確に言えば、運営さんたちは『ストーリーライン自動作成機能』ってのを開発し、さらにはソレに約千年分の世界の歴史を描かせたらしいわん。そうして、この世界は今の形に至ったってワケ」
「な、なんだそりゃ……!」
まるっと機械まかせで作りやがったのかよ!?
あとそもそも『ストーリーライン自動作成機能』ってなんだ。そりゃ軽く話の設定を組むだけのプログラムはあるが、千年分の歴史を崩れることなく書ききるってどんな性能じゃい。
あいつらホント色々やばいな。
「まっ、流石に近代の歴史には運営さんたちの介入があるみたいだけどねぇ。イベントの進行を務める『国王オーディン』なんてモロに運営のアバターだし」
「あーあいつな。
……つーかすごいなピンコ。世界観の設定ならともかく、世界作りの裏事情なんてよく調べたもんだ」
「あぁ、まーね。運営の関係者が知り合いにいるのよ」
「へー……」
……っておっと、すっかりピンコの話に聞き入っちまった。
扉をさっさと調べないとな。ウル太郎が睨みを効かせているが、一応ここはモンスターたちの巣穴なわけだし。
それに――他にも気をつけなきゃいけないことがあるかもだしな。
「で、開け方を調べればいいわけか? 護衛役でついてきたけど、こんなの見せられたらほっとけねーよ。俺も手伝うぜ!」
「ありがとうユーリちゃんっ! ウフフ……この太古の扉を開けたらどうなっちゃうのかしら~。人間じゃない存在が紡ぎあげた歴史をハダカに出来るなんて、ワクワクするわねぇっ♡」
ウネウネと身体をくねらせるピンコ。
顔だけだったら超絶イケメンだが、相変わらず言動がアレなやつだ。
「じゃあユーリちゃん、扉にタッチしてくれる? 小難しいメッセージが出るはずよん」
「ほいっと」
言われた通りに触れてみる。
すると目の前に、『黒き星は暗き地に堕ち腐りの子宮に擁かれ眠る。汝、ユゴスを目指す者よ。臣たる証を此処に示せ』という文章が。
……うわぁ、たしかにめっちゃ小難しいな。つーか危険な匂いがプンプンだ。
「これ、絶対に中に入ったら隠しボスとバトルになるやつだろ……」
「そうよね~。厄ネタの匂いしかしないわ。でも、そういうボスだからこそ面白い話が聞けそうだし、倒したらオンリーワンなアイテムとか手に入りそうじゃない?」
おっと、そう言われるとやる気が出るってもんだ。強い装備の作れるアイテムには目がない俺だぜ。
「口ぶりからして、ピンコはここに来るのは二度目なんだろう? 開けるアテはあるのか?」
「まぁねー。最初に来たときはモンスターどもに囲まれながらの調査だったから集中できなかったけどネ。
ひとまず『臣たる証を此処に示せ』って一文に着目して、古代アイテムをいくつか扉の前に出してみようと思うの」
そう言って錆びた歯車やら千切れたケーブルやらを取り出すピンコ。
さて、何が起こるか楽しみだな……!
※実は29話あたりですでに『古代超文明の残骸機械』などのアイテム名は出てましたが、ユーリくんちゃんがまっっっっっっったくなんも気にしないせいで調べるまで70話かかりました。
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