9:覚悟と覚醒!
『死神の地下墳墓』。攻略サイトによると、それは始まりの草原の隅っこにある地下ダンジョンで、出てくるモンスターたちのレベルも草原よりかなり高いとされる場所だ。
リビング・ウェポンを倒しまくるためにそこに潜った俺だったが、ここで二つほど大問題が発生した。
『グガァァァァアアアッ!』
「ってうわぁ!? 地面からゾンビが湧き出してきやがった!? 戻ってきてくれ、ポン太郎ッ!」
遠くの敵へと放っていたポン太郎を急いで呼び戻す!
この地下ダンジョン、地面からたまにアンデッドモンスターが奇襲を仕掛けてくるため、ポン太郎を放っている間に俺が襲われることがあるのだ! 攻撃手段がポン太郎一択しかない俺にはきつすぎる!
さらにさらにさらにッ、
『グガガァアアアッ! シネェェェエエエッ!』
「いぎぃっ!?」
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スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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ゾンビの引っ掻き攻撃を受けた俺のHPは、マックスの状態からわずか一撃で1になる!
【根性】がなければワンパンで死んでいたってことだ! 俺は急いで距離を取り、ゾンビの頭にポン太郎をブチ込んだ!
『グギィッ!? ガガァ……!』
「って、まだ生きてやがるし……ッ!?」
……幸運値極振りの俺だが、それでも必ずクリティカルヒットやダメージアップスキルが発動するわけではない。
そうなってしまえばこのザマだ。矢の威力には憑依しているポン太郎の筋力値が加算されているが、スキルの効果なしで格上を倒せるほど強力じゃない。元々俺自身のパワーが最低値なのもあるしな。
要するに、全体的にステータスが足りなさすぎるのだ! 初心者の草原ではまだ誤魔化せたが、ここにきて幸運値極振りの難易度が上がりやがった!
『グガガァ……!』
『コロスゥウウウ……!』
『グガーーーーーーッ!』
ってうわッ、ゾンビどもが集まってきやがったぁぁああああああッ!?
「くそっ、いくぞポン太郎ッ! ここは撤退だ!」
このままでは勝てないと判断し、急いで出口にダッシュする!
……ついでに言えば敏捷値も足らなかった。このダンジョンでは一番遅いとされるはずのゾンビどもを相手に、俺は本当にギリギリで逃げ延びたのだった。
◆ ◇ ◆
「はぁ~~~~~~~、酷い目にあったな……!」
地下墳墓の入口付近に腰を下ろし、俺は深く溜め息を吐いた。
だだっ広い草原ならばモンスター一体一体を遠距離からスパスパ打ってりゃ楽勝だったが、地面から奇襲してきたり狭い通路などもある地下墳墓内ではモンスターに囲まれやすい。そうなれば運任せのワンパン型はお終いだ。
「……結局リビング・ウェポンは一体も倒せず、ゾンビ数匹を狩れただけかよ。まぁおかげでレベルは二つほど上がったが……」
手に入ったステータスポイント20を見て思う。……これは、筋力値と敏捷値に振り分けるべきじゃないかと。
そうすれば先ほどのようなことにはならないだろう。どうにか逃げ回りながら威力の少し上がった矢を打っていけば、確実に安定性は上がるはずだ。
まぁそうしたら『幸運値極振り』じゃなくなってしまうが、それでもサモナーと弓の有用性だけは証明できる。『初心者の草原でしか戦えませんでした』ってしょぼい結果で終わるよりはマシだ。
「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぅ……!」
俺はステータス画面を見ながら頭を抱え、数秒思い悩んだあと――覚悟を決めて吼え叫んだッ!
「うおりゃぁああああああああッ! 男は度胸だぁーッ! 三大不遇要素を全部抱えて戦うからこそカッコいいんじゃーーーーーいッ!」
中途半端になってたまるかッ! 俺は幸運値に全ポイントをブチ込み、男の覚悟を貫いた!
ふぅうううううううううっ! 気持ちいいー!
「よーし、こうなったら意地でもこのプレイスタイルを貫いてやるぜ! ……だけど地下墳墓の攻略はどうするかなぁ。このままじゃ戦えないし……」
う~んと首を捻りながらステータス画面とにらめっこする。
そこでふと思い出した。そういえばゾンビを数匹倒した時に、何か素材アイテム以外のものを落としてた気がすると。
ダンジョンの中じゃろくに確認できなかったからな。アイテム画面を見てみると『呪いの指輪』と『邪神契約のネックレス』という装飾品アイテムがあったため、それぞれ実体化させて確認してみる。
「うわっ、めっちゃ禍々しいデザインっ! なんかヤンキーとかが好きそうなやつだ!
名前のほうも不気味だし、一体どんな効果を……って、なんじゃこりゃあああああああああッ!?」
それらは二つとも頭のおかしい効果を秘めていた!
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装飾品『呪いの指輪』 ドロップ頻度:低確率
・装備者のHPを1にする。
装飾品『邪神契約のネックレス』 ドロップ頻度:極低確率
・装備者のHPが1のとき、幸運値を三倍にする。
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「どっ、どっちも装備するヤツなんていねーよ! HPを1にするだけの指輪はもちろん、ネックレスのほうも上がるのは幸運値だけなのかよッ!? HP1しかない場面だったら、敏捷値とか筋力値を上げてくれよ!」
は~、運が悪い。どうせ低確率で手に入るドロップ品なら、希少な素材アイテムのほうを落としてくれたらよかったのに。なんだよこりゃ?
たしか装飾品アイテムは三つしか装備できないはずだ。貴重な枠であるため、ほとんどのプレイヤーは常時ステータスを補正してくれるような無難なものを装備していると聞く。
だからこんなイカれた装飾品、よっぽどの異常者でなきゃ装備したりは…………いや、待てよッ!?
「……どうせ俺、一撃でHPが吹き飛んじまうんだよな? だったらHP1でも問題ないわけだ。それに幸運値が三倍にもなれば【根性】の発動率もグンッと上がるから、逆にしぶとくなれるんじゃないか!?」
いいやそれだけじゃない。幸運値が跳ね上がればダメージアップ系のスキルたちも発動しやすくなるため、殲滅力だって上がるわけだ!
「う……うおおおおおおおおおおおおッ! これはもしかしたらイケるんじゃないかッ!? 地下墳墓、幸運値極振りで攻略できるかもしれない!!!」
思い立ったら即行動だッ! 俺は即座に二つの装飾品を身に付けた!
これによってHPは1になるが、幸運値は600を突破したぜッッッ! 他は全部ゼロだけどな!!!
「よーしやってやらー! いくぞゾンビどもッ! そしてリビング・ウェポンどもォッ! お前ら全員滅ぼしてやるぜぇッ!」
悩みも解決していい気分だッ! 俺は意気揚々と地下墳墓に逆襲をしかけたのだった!
>だからこんなイカれた装飾品、よっぽどの異常者でなきゃ装備したりは
・ユーリくんちゃん、異常者決定……!!!
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