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破格

霊は今度は僕を認知する。

反撃を受ける可能性も充分ある。気をつけて距離を詰めよう。


そこで、霊は小さく仰け反った。単純に考えるならブレスの予備動作だ。左右に避けられるように準備しておこう。


次の瞬間、霊は思いっきり火を吹いた。僕は間一髪で右に飛び、それを躱す。


「あっぶねー……。燃やす気かよ」


……そりゃそうか。そりゃあそうだわ。燃やそうとしてるからこんな姿になってんのか。


右に飛んだ勢いのまま、回転をつけて霊の左脇腹を卒塔婆でぶん殴る。着実にダメージは入っている。

霊はバランスを崩し、一瞬よろめくが、すぐに体勢を立て直し、僕に向かって火を吹いた。


「服が焦げるだろーがっ!!!」


僕はまた避けた勢いで、今度は霊の顎にあたりそうな部分を卒塔婆で殴りつけた。霊は先程の比ではないくらいによろめいた。構造上の弱点は生きた人間と変わらないようだ。


「……ほー……なら……」


僕はよろめいた霊の顎を掴み、地面に押し倒す。


「心臓潰せば、てめーも死ぬよな」


僕は霊の胸に、卒塔婆を突き立てた。



「ふぃー、終わった終わった」


幽鬼は服を両手ではたきながらため息と共に呟く。いつの間にかあの卒塔婆は忽然と消えていた。


「お、終わったんですか……?」


「あぁ、依頼遂行完了! 霊は成仏してもらったさ、物理的な話し合いでな!」


幽鬼のその言葉に、志希は一瞬「うわぁ(引)」みたいな顔をしたものの、安心はしたようで、一息ついていた。


……ところで。


「……アンタ大丈夫なの?」


「……? あぁ、大丈夫大丈夫。まだ着れるし」


「そっちじゃないんだけどなぁ」


どうやら私と幽鬼(コイツ)では心配するものの対象がどうも違うらしい。心配して損した。


「あっ、あの、ありがとうございました!!」


志希は笑顔で頭を下げる。


「いやいやー、依頼だからねー。解決しなきゃ探偵の名折れだ。ところで今回の依頼額だけど───」


そこまで聞いて志希はゴクリと唾を飲む。今回は一体いくらになるのだろうか。


「うーん、256円くらいかな! あ、ツケは無しだぞ」


「……え?」


予想外の破格のお値段に、私も志希も開いた口が塞がらない。256円って、ナニソレ。


「……? ツケって言葉の意味わからん? もしかして」


「だからそっちじゃないんだって」


呑気な幽鬼に、私はいつも通り静かにツッコミを入れる。


「ハハハ、だよね。まぁお値段に関しては今回ただの単純労働だけだったからさ。霊殴るだけじゃん。こんななら帰りの交通費がありゃじゅーぶんだよ」


それを聞いた志希は慌てて256円を財布から取り出す。


「んーと、256円ちょーどおあずかりー。」


幽鬼は手のひらの上でいくつかの硬貨を転がすと、それを握ってポケットに突っ込んだ。


「毎度……じゃあねーな。この度はご利用ありがとーございますよっと」


そう言うと、幽鬼は、帰ったら未消化アニメでも一気見しますかねー、とかなんとかほざきながら、手を振りながら駅へと向かっていった。

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