脳筋探偵
遅れてめんご!
……え、古い?
私はお父さんに伝言を伝えるべく、足早に探偵事務所を後にした。ついでに、事務所を出る直前に幽鬼に「携帯を早く買え」と言っておいた。あーすっきり。
「え、え、白ちゃん何か分かったの?」
「んー、まぁ解決まではまだ遠いけど、1歩目が出てきた感じかな」
「?????????」
志希は私と幽鬼の考えが分からないようで、走る私に一生懸命着いてきながらも首を傾げた。
まぁ要件は携帯で伝えることも出来るが、家でお父さんと相談しながらの方がやりやすいだろう。お父さんも、私がいる方が幽鬼とのやり取りに困らないからとできるだけ家に帰ってきてくれるらしい。やったね。
そんなこんなで帰宅。
「それで、幽鬼からの伝言は?」
「ここ数年の参拝客の周辺を調べて欲しいって」
私のリクエストに、お父さんは腕を組んで少し唸る。
「数年か…難しいが……まぁ、ある程度リストにしておこう。それで、リストに優先的に載せて欲しい人間のリクエストは何かあるか?」
「んー、特にない…というか全員載せて欲しいらしいけど、出来れば『参拝時に身近な人間が危篤状態だった人』と『参拝後1ヶ月以内に身内が死んだ人』の情報が特に欲しいってさ」
その要望を伝えたところでお父さんは「そうか!」と叫んだ。
「なるほど、幽鬼の言いてえ事がようやく分かったぜ。よし、明日からすぐに調査して来る。やっぱりこれから数日はまた家を空けるかもしれんが…」
「幽鬼に携帯買うようには言っといたよ」
「ありがてえ!! ってそうじゃなくてな。なんか最近父親らしいことしてやれなくてすまんなって…」
「? 別にそうは思わないけど…」
「あ、いや、まぁ……それならいいけどよ」
お父さんはバツが悪そうに立ち上がった。
お父さんは何を言っているんだろう。こんなにも娘のために動いてくれる父親、そうそう居ないだろうに。まぁ、気にしなくていっか。
とりあえず、お父さんがリストを用意してくれるまでは様子見を決め込むしか無さそうだ。
翌日、やることも無いので探偵事務所に向かった。
「おー、んで、リョージには伝えといてくれたか?」
「すぐに調べてくれるってさ」
さーすが、仕事がはえーなアイツ。と幽鬼は新しく買ったらしい携帯の設定を進めながら言う。
「いやー、僕も憧れてたんだよなぁiPhone。なかなか買いに行く機会がなくてよー」
「いやアンタにはいっぱいあったでしょ」
私が突っ込むと幽鬼は心外だとでも言いたげな顔でこちらを見た。
「こっちだって仕事してんだぜ? お前が思ってる以上に仕事来るっつーの。まぁ今回みてーなめんどくせーのはあんま来ねーけどな。酷い時とかは4つくらい掛け持ちだな」
本当に思った以上に来てた。4つ掛け持ちってなかなかすごいな。
「まぁどれもユーレイぶん殴りゃ終わりだけどな」
訂正。こいつやっぱ脳筋だ。