始まり
先に言っておきます!!!
今回幽鬼出ません!!!!!!!!
ある雨の日だった。
中学生だった私は、傘をさしながら夜道を歩いていた。
居残り学習が思ったより長引いてしまったのだ。別にあのくらいいいじゃん。ちょっとテストで悪い点取っただけじゃん。ぶつくさ言いながら歩いていた。
幸い、私の家と学校はそう遠くない。すぐに帰ることが出来る。
だけど、その日は違った。
私は、小さな声を耳にした。あまりにか細くて、今にも消えそうな、そんな声。
「………誰か、いるの?」
私は声のした路地を覗き込む。
誰もいない。
でも、声は路地から聞こえてくる。
夜の路地なんて、今思えばよく入ったものだ。子供の怖いもの知らずを、我ながら恐ろしく思う。月の光も入らない濡れた地面を、さも当然のように入っていった。
──────そこで、目が覚めた。
「………なんか、変な夢見たな………」
暑いわけでもないのに、首筋は汗で濡れていた。でも、夢の内容はもう思い出せない。胸の奥に何か変なモノがつっかえているような、吐きそうな気持ち悪さだけが残った。
時計を見ると、いつもより1時間半も早く起きていた。外は明るくなり始めたところか。
「………まいったな」
私は寝てる間にぼさぼさになったのであろう髪の毛をかきあげる。眠いには眠いが、もう一度寝る気はしない。思いっきりあくびをひとつする。寝た方がいいのだろうか。とりあえず横になろう。
当然、目覚ましが鳴るまで寝付けなかった。
「おはよう白ちゃん! ………大丈夫?」
電車に乗り込んできた志希が私の顔を覗き込む。今日は運良く隣で2人とも座ることが出来た。
「……平気平気。なんもないよ」
「………ほんとに? クマすごいよ? 元気もないみたいだし…」
怪訝そうな顔で志希が尋ねてくる。朝洗面所で顔みた時は気にならなかったのにな。
「大丈夫大丈夫。すこし寝付けなかっただけだから」
自分でも、夢ひとつでこんなことになるとは思わなかった。その夢も、全く思い出せないのに。別に、そんなに怖い夢ではなかったと思うのだが。
志希も、それ以上追及して来なかった。
不意に、頭が引っ張られる感覚があった。
気づくと、私は志希の肩に頭を乗っけていた。
「ちょっとこうしてなよ。着いたら起こすからさ」
志希の言葉がなぜだかすごく胸に染みた。
ちょっとだけ、このまま寝よう。今なら寝られる気がする。