表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

悪意の贖罪

間あいてすんません(笑)


……笑ってる場合じゃないっすね

「終わらないよ?」


振り下ろされた幽鬼の刀は、確かに少女の体を切り裂いた。はずだった。

のだが、少女の頭に刀が当たる寸前、霊が1人、分離していたようだ。


「お兄ちゃん!!! 後ろ!!!!」


幽香が叫ぶ。えっ、と振り向こうとした幽鬼の体が宙に浮く。


1人の───いや、単位が合ってるかは分からないが───霊が、幽鬼の首根っこを掴んで締め上げていた。華奢なのに、怪力な霊だ。


いや、見た目でわかる事でもないか。霊の能力は、"願い"で決まるんだったな。


それが、本人のものであれ、他人のものであれ。


っと、冷静に分析してる場合じゃない。


「どうしよ……どうしようどうしようどうしよう、お兄ちゃんが、武器の交換も出来ないし新しく作ることも出来ないよ………」


幽香が青い顔で震える。幽霊も恐怖を感じることはあるのだろうか?


「何がどうなってるの…? 幽霊は倒したんじゃないの…?」


不安そうな顔で、志希が私の腕に縋り付く。


「……………………!」


幽鬼は首を締められているせいで、声を上げることが出来ないようだ。ただただもがいている。


何も出来ない。


無謀と分かりながらも、私が辺りを見回した時、近くにハサミが転がっているのが見えた。


さっき飛んできたものだ。私はそれを拾い上げる。


「う、う、あ……」


外せば幽鬼はただでは済まない。しかし、このまま何もしないままでは、全滅だ。


「うわああああああああああああああああああああ!!」


私は霊目掛けて、全力でハサミを投げつけた。


ハサミが霊に突き刺さる。霊は苦悶の声を上げ、幽鬼をその手から落とす。


「………助かった!」


幽鬼は着地と同時に刀を振り抜き、霊に牽制をかけながら1度距離をとった。




「………さて………」


どうしたものか。あの手でもう一度掴まれたらもう僕は死ぬだろう。こんな時、機銃でもあれば、と思うが、そんなこと思ったところで無駄だ。


あの怪力は、恐らく死亡時の"願い"によるものだろう。自身の身体能力に変化を与えている辺り、自身の願いだろうか。まぁ、そんなことどうだっていいが。


「……オマエ、"騙された"クチか?」


霊の動きがピタリと止まる。


「図星かよ。騙されたクセに八つ当たりで僕を殺すだと? メーワクにも程がある。八つ当たりの矛先は"この会社"だけにしてもらえるか?」


「うるさい……」


おっと、会話可能な霊が居たとは。言葉を話せる霊は居ても、会話が可能な霊とは珍しい。


「私は"此処"に殺されたんだ!! 復讐だって、していいハズだ!!! それに肩入れするアンタを殺すだけ……そこになんの問題がある!!!」


「うっせー。殺すことに問題があるっつってんだよ」


頭に血が上ったせいで懐がお留守になった霊に向かって駆け出す。


「僕は受け取った金の分働くだけだ。これでも探偵だからな」


「金、金、金、金……その言葉はもう聞き飽きた!!!」


怒り狂った霊が繰り出すお粗末なパンチを、僕は体を捻って避ける。


「世の中、金が全てなんだよ」


僕は刀を振り抜き、霊の頸を斬り落とした。




「……ねぇ、幽鬼。咎崎って、もしかして……」


全てが終わり、オフィスから出た幽鬼に、私は声をかける。


「あぁ、オマエらの察してる通り……っつーよりも、ネットで噂になってる通り、っつった方がいいか。嘘偽りの健康食品やらでぼろ儲けした、悪徳企業だよ」


私は言葉を失った。"金を貰ってるから"そんな企業に手を貸すのか? この男は。


「そんな理由で、こんな企業を残しておくの…? これからも被害者が出るかもしれないのに!」


「……結果は誰にも分かんねーよ。この事件で改心するかもしんねーだろ。………まぁ、金が全てだ、とは言ったが、僕にも人の情ってモンが無いわけじゃねー」


そう言って事務所とは逆方向に歩き出す幽鬼の手には、中身の入った試験管が1本と、薬剤が入った瓶がいくつか握られていた。


「そこに悪意がありゃ、人だろうが霊だろうが、叩き潰す。……方法が、違うだけでな」


数日後の新聞に、咎崎の一味が載っていたのは、言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おおう、白ちゃんの攻撃もダメージ通るのね。霊を認識出来てれば干渉出来るとか、そんな感じですかね。 シザーズストライカー白ちゃん爆誕w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ