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1章[異世界最初のクエストはSSランク!?]



――ホウライの都にて。


 ボク達はとある事情(主にカジノっていうかカジノ以外ない)で恥ずかしながらほぼ無一文であったので今後の旅はかなり苦しいものになるのかと思いきやそう辛くもないみたいだ。

 どうやら真紅さんによれば教会からの勇者への補助金受給が行えるようで完全に詰むという事はないらしいし何より思わぬ臨時収入にも恵まれたからである。

 というのもボク達がこの国の姫である輝夜との会談が終わり城を後にしようとした際「ちょっと待って」と輝夜に城門の前で呼び止められ手に持っていた100万ゼルの札束をまるで子供にお小遣いをあげる親のような動作でポンと手渡ししてくれたのだ。

 金持ちとは恐ろしいものだ。


 「餞別よ、彷徨はそれで少しは勇者らしい恰好をする事!」


 ボクはこの100万ゼルを漢らしく突き返す事は出来なかった。

 それに輝夜のこの一言は正論だった。

 現在のボクは初期装備オブ初期装備。

 安っぽい布の服に安っぽいポーチ、申し訳程度のマントを羽織り武器を持たないという正直勇者というよりはピクニックに出かけてヒーローごっこをしている少年の様な風体であったからだ。

 

 そのため100万ゼルは有難く頂戴した。

 ちなみに前にも説明したが1ゼルは日本円の1円とほぼ同価値だそうな、つまり100万ゼルは100万円に相当する! 大事に使わなくちゃな! 

 幸いホウライは賭博禁止これは僥倖だ。

 先程少しだけ触れたがホウライまでの旅の途中で分かったことがある。

 あまり語りたくも無いのだがそう、ギャンブルに関してだ。

 ライラとボク、そしてあろうことか敬虔な神官である真紅さんさえギャンブルの作戦はというとガンガンいこうぜ一択なのである、お金を大事にする慎重派は一人もいない最悪極まりない構成だ。

 もしも旅の順序が逆であったならここで貰えた100万ゼルを一晩で溶かした……なんて事になったのかもしれないと考えるとぞっとする。


 ――まぁ……その100万ゼルは訳あって結局一晩で殆んど無くなったんだけどね。


 まず最初に真紅さんの提案でランちゃんのパーティ加入のお祝いにホウライ随一の高級料理店で派手にどんちゃん騒ぎして、支払い20万ゼル。

 

(ぐすん……ここでも子ども扱いされてお酒が飲めなかった)

 


 食事を済ませたすぐ後にボクの装備とアイテムの買い出しに行く流れとなり武具店へと向かった……のはいいのだが見積もりが甘かった。

 駆け出し勇者であるボクの装備を揃えるのは予想以上に高くついた。

 まずは武器だがこれは魔鉄で作られた鞘に収まった短剣を選んだ。

 勇者らしく小回りが利き、動きやすさを重点に置きたかったのと重すぎる装備は今の体に合っていないと考えたからだ。

 防具も同じく魔鉄で出来た動きやすさを優先した鎖帷子付きの戦闘服。

 問題の値段はというと二点合わせてなんと60万ゼル、これでも冒険者の平均的な装備の相場であるそうでさらに驚いた。

 素材の持ち込みなら半額以下になる事もあるそうだが、当然素材を持っている筈も無く店頭販売価格での購入となったのだが装備って予想以上に高い! 

 しかしまぁよく考えたら当たり前か……それこそゲームの初期装備の値段がとんでもなく安い方が可笑しいのだ。

 ゲームと現実は単純比較は出来ないが冒険の始まり辺りの薬草数個分にも満たぬ様な格安装備で敵と命を懸けて戦うなどリアルではありえないって事だよ要は。

 60万で助かる命もあるとするならば安いもんだ。

 ちなみに説明が遅れたが魔鉄というのは文字通りこの世界の代表的なエネルギーの一つである魔力が混じった鉄で人間界では殆んど採掘されない希少な鉱石で通常の鉄の数倍の軽さと強度と多少の魔法への耐性がある事から冒険者に非常に人気のある素材とのこと。

 ボクのステータスは魔鉄の剣と鎖帷子の防具のお陰で少しだけ伸びており、魔法耐性(小)を防具スキルとして獲得していた、これで一応初期装備からは解放されたわけだ。



 


 ――そして残りのゼルの使い道、これに関してはランちゃんの提案であった。


 「まさか一日でこんなに金を使う事になるとはのぉ……困ったもんじゃ、そうじゃ! わしにいい考えがある」


 ランちゃんはなにやら自信ありげな表情を見せ、武具店の反対の通りにあったホウライの冒険者ギルドへとパタパタと走っていった。

 ランちゃんがギルドに入って数分後、一枚のクエスト用紙を持ってこちらに戻ってきた。

 

 ランちゃんが持ってきたクエスト用紙に書かれていた内容は探索クエストであった。

 所謂アイテム収集が目的で特定の目標が指定されていない自由なクエスト。

 かつて人と魔族が資源を巡り戦争を起こした程のヤハテウス大陸有数の鉱物資源地帯であるホウライのギルドの探索ツアーで元は二十分に取れるという……死ななければ。


 そう、ランちゃんが自信満々に持ってきたクエスト用紙にははっきりとSSランクの文字が。

 あれだよね絶対ボク達が行っちゃいけない難度だよね多分。

 


 以下はホウライ探索ツアーの内容である。


 【ホウライ探索ツアー】

 ホウライではかつての戦場跡地などの危険地域での資源採掘を場所によりそれぞれ独自にランク分けしております。

 ※獲得ジョブやレベルにより受注をお断りする場合がございます、許可が下りた場合探索受注金をお支払い頂いた後に探索許可証を発行いたします、下記は料金表と危険度目安です。



 【Cランク】受注金500ゼル

 経験の浅い初心者冒険者向け、そこまで深くない坑道には低級魔物が多少存在する。


 【Bランク】受注金1000ゼル

 ある程度の実力者向け、坑道が少し深い所もあり奥には低レベルユニークモンスターも確認済み。


 【Aランク】受注金5000ゼル

 ダンジョン経験多めの上級者向け、人の手が殆んど入っておらず独自に進化した魔物があちこちで確認されており非常に危険、獲得したアイテムを捨てて逃げ出す者も多い。


 【Sランク】受注金1万ゼル

 かつての魔族の資源採掘基地跡が多く点在し、今もなお防御システムが働いているとされ、現在マシン系魔物の一大生息地域。


 【SSランク】受注金10万ゼル

 ダイヤメタルスライム生息域、特殊鉱物を食べて育ったスライム変異種の生息地域膨大な経験値と最強クラスの装備素材となるがダイヤメタルスライム自体が災厄レベルの強さを誇り、その影響なのかは分からないが周辺の魔物も歴戦の強者以外は淘汰されているという危険地帯。


 【SSSランク】受注金無し

 次元の裂け目、かつてホウライと魔界の一部は陸続きであったが巨大な次元の裂け目の出現により分断、この場所では未知のレアアイテムが獲得できるとされているが詳しい情報は無く不明。

 また合わせて未知の魔物が出現した可能性もあるとされているが詳しい調査はなされておらず詳細一切不明。

 

 

 

 ランちゃんによるとホウライの探索ツアーは受注金以上の成果が得られやすいため冒険者には特に人気が高く大陸全土から多くの冒険者がやって来るそうだ。

 確かにそう言われてみるとホウライの都には様々な異国の装束を身に纏った人が多くいる気がする。

 中には稼ぎのいいホウライ専業の炭鉱夫になってしまうような冒険者も多くいるそうだ。

 そんな話聞くとボクもとあるモンスターを狩猟するゲームで、モンスターを狩らずにひたすら石を掘っていたことを思い出すなぁ。

 何故危険なSSランクをランちゃんがセレクトしたのかというと、ランちゃん曰く自分はよく行くし何より【弱いメンバーのレベル上げと金策】に効率がいいとの事。

 

 ……何も言うまい。


 SSランククエスト経験者のランちゃんによればダイヤメタルスライムに出会えるかは運しだい、その確率15%。

 周辺の魔物もヤハテウス大陸では中々お目にかかれない高レベルの魔物が多いそうだ。

 特に多いのがキメラ種でこれはホウライを巡り戦争をしていた頃の魔族の生物兵器の置き土産がこの地で生息し続けているとのこと。

 ランちゃんがギルドの外の通りで探索ツアーについての一通り解説を終えると、真紅さんがランちゃんの頭をよしよし頑張ったねと言いながら頭を撫で始める、ランちゃんは意外にも嫌な顔をするわけでも無くそれを受け入れている。

 てか真紅さんはやる気なのね……。

 その一方でライラはずっと一人道の端でうずくまって頭を抱えていた。

 心配になったボクが声をかけにいく。

 


 「ライラ? どうしたの大丈夫」


 ライラはその言葉に振り向いてすぐにボクに震え声で助けを求めた。


 「ヘヘヘヘヘ……彷徨このままじゃ死ぬよ私達……私は半分死んでるけど……プププッ…………いやそんな事じゃない……いくら何でも無茶苦茶ッ! あの長老は……SSランククエストなんて、駆け出し冒険者がやるクエストではないでしょ、ほんと頭ぶっとんでるわ……彷徨なんてきっと敵にエンカウントした時点の咆哮や風圧なんかで即死するわよ…………ちなみに更にドドーンと(はい、ここで効果音)実は私は実戦経験は一度もないの……ケケケケ……いや笑い事じゃない!!!!」


 「ライラ? えっ!ええええええええええええええええええええ!?」


 SSランク探索をランちゃんが速攻で受注したと語った時にライラが世界の終わりを見た時の様な顔をしていたのはこの所為か……。

 

 しかし時すでに遅し10万ゼルはいつの間にかランちゃんが既に支払い済み。

 やっぱやめるって訳にはいかない、ギルドは意外にも強欲で途中辞退は払い戻し不可の模様。

 考えろ、大丈夫だ。

 高難度クエストだろうと敵に出くわさなければ町の散歩と変わらない。

 ボクのゲーム知識的にはこういう危険地域は草むらの草一つでもそれなりの値段で売れるはず……最悪それだけ持ち帰って換金も手だ。

 それに本音を言えば今日買った魔界鉄の装備を強敵で試したいという浅はかな気持ちもなくは無い……。


 (若干ではあるがやはり鉄製装備だけあって重い為、攻撃力と防御力を引き換えに素早さとスタミナは落ちたのでプラマイゼロなのは内緒)


 


 ――かなり強引に決まったクエストは明日、今日の所は各々自由行動となった。

 クエストの準備をすると言い残しそそくさと帰っていくランちゃん、田舎暮らしが長く異国を観光したかった真紅さんや、実家に寄るといって逃げるようにこの場から去っていったライラなど理由はそれぞれだ。


 


 ――そしてボクはというと行く宛ても無くホウライの街道をふらふらと歩いていた。

 どこか適当な所で時間を潰そう、そう思い大通りから離れ適当に入った薄暗い路地裏でサキュバスっぽいエッチな衣装を着たお姉さん達に一瞬で取り囲まれてしまった……。

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