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死者達の神頼み  作者: 琴吹 晃
3/18

兄妹


2028年4月10日午前4時








「後1時間!!」

僕と妹が叫ぶ。

僕の名前はルーメン・ワン。由緒正しいルーメン家の長男だ。

そして隣にいる妹、双子の妹だ。

僕達兄妹は後1時間で10歳になろうとしている。

ここアミヤ大陸では成人は10歳から、それまでに基礎魔法の他に剣術などが教えられている。

つまり僕達はこれから大人になるのだ。

「2人は幸運の子だから大人になってからの活躍が楽しみだなぁ」

父が子2人に言う。

幸運の子。ここアミヤ大陸は火ノ国、水ノ国、風ノ国、と3つの国に分かれている。僕達の住む火ノ国では、黒髪黒目の子を幸運の子と呼ぶ習慣がある。黒髪黒目はアミヤ大陸ではとても珍しく各国ごとに呼び方がある。

「頑張って火ノ国を引張って行ってくるよ!」

父が言う。

『はい!父様!』

僕達が元気良く答えると父は、よしよしと頷く。

それから家族円満で盛り上がりとうとう・・・・

「カウントダウンスタートー!」


『10!』


みんなが一斉になってカウントし始める。


『9!』


もう大人だ。親孝行もしないとな。


『8!』


まずはカウントが終わったらありがとうと伝えよう。


『7!』


『6!』


『5!』


『4!』


『3!』


『2!』


『1!』


さぁ子供卒業だ!


『0!!』






2028年4月10日午前5時




ルーメン・ワン 10歳








『10!』『9!』・・・・・・・

そんなカウントを雲の上から見ている者がいた。

「もう始まるのか。早いなぁ時が経つのは」

「3・・2・・1・・」

釣られてカウントする。

背後のタイマーは86399時間59分59秒をカウントしている。






「0」






タイマーがゼロに戻る。

そして再び動き出す。






「第2ラウンド開始だ!!!さぁ殺しあえ!!」

神は発狂する。

よほどその瞬間が嬉しかったのか、声を上げる。

「見せて貰おうか!君たちが次の10年どう生きるか!」

すでにタイマーは1分を過ぎていた。








『0!!』


そう言った瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。




ーこれは・・・・記憶?




ここじゃない何処かで、僕じゃない誰かの記憶。

脳みそに津波の様に流れ込んでくる。

脳が焼けそうだ。

「あぁっ・・・・」

あまりの苦痛に声が漏れる。すると・・・・

「キィ・・・・!キュキィ!」

言葉にならない悲鳴が聞こえてくる。

苦痛に耐えながら前を向くと、父と母が胸を押さえながら転げ回り奇声を発している。

目は完全に白目を剥き、口からは泡が溢れている。

目も当てられない様な残酷な光景だ。

1秒ごとに彼らは人間じゃ無くなっていく。

その後しばらく僕は苦しみ、痛みが引いていく。

痛みが完全に引いた時、親達は息をしていなかった。

しかしなんの驚きもない。

「殺し合いに親族はいらないか・・」

あれから10年が経った。僕は全てを思い出す。

哀れな母、父、妹、こんなお遊びの為に殺されるなんて・・




「哀れね」




声が聞こえる。

声の方向に即座に振り返るとそこには、妹がいた。

「なんでっ!」

なんで死んでいないんだと言おうとした。

しかし言い終わる前に気づく。


あぁ、そうか。


神は転生者の名前には1から6までの番号が入ると言っていた。

僕はワン、1番。

そして・・



「君が2番と言う事だね。ツー」




ルーメン・ツー


僕のこの世界での妹。まさか異世界でも双子の妹ができるなんてな。




「そうね」


そう頷いたツーの手には、すでにナイフが握られていた。




刹那。目の前にナイフを持ったツーが押しかかってくる。

ギリギリの所で避けた僕は勢いを持て余し、父の死体の上に転げ落ちる。

「避けたのね」

そう言ったツーは次の攻撃体制に入る。

学校での戦闘訓練はトップクラスだったツー。

油断すると開幕早々殺される。

僕はとっさに父がいつも離さず持っていた刀を取る。




戦わなければ殺される!




ツーの攻撃をかわしながら刀を振るう。

戦闘訓練の成績は悪い方ではない。ある程度の戦闘ならできる。

しかしこのままではジリ貧だ。

そう思ったワンは、攻撃をやめツーと距離をとる。

次の瞬間、ワンの右手から炎が吹き出す。

魔法を使ったのだ。魔法の成績はトップクラスだ。逆にツーはあまり魔法が使えない。

「どうだ!」

家に燃え移った炎が揺らめく。

炎を切り裂く様にツーが現れる。

「そんなくらいでくたばるとは思っちゃいねぇよ!」

いまだ距離を取り続けるワンは刀を構える。

右手に血が集まっている様な気がする。

そして次の瞬間、持っている刀に炎がまとう。


「豪火斬!!」


豪火斬。それは火ノ国に代々伝わる技の名前であり、魔法と剣術どちらもある程度の使えていないと使えない技だ。

刀に魔力を注ぎ、火を纏わせる。

火ノ国では魔力の根本的な力が火と言うことになっている為、魔法も火に関係のあるものしか使えない。

他の国にも同じ様な技はあるが、水ノ国なら水、風ノ国なら風となっている。




「でやっ!!」


ありったけの力で豪火斬を振るう。

火から出てき不意をつかれたツーは攻撃を喰らう。


「ぐはっ!」


苦痛を思わず声に出しながらツーは地面に倒れる。

あたりはすでに大火事だ。

自分達の家も見る影もない。

倒れたツーに歩み寄る。


「おめでとう。あなたが最初の戦いの勝者だよ」


まるで殺せと言う様な態度をとる。

その時僕はある1つの意見を提案した。

そちらの方が有利だと思ったのか、はたまや人を殺す勇気が無かったのか、遊佐とツーを合わせてしまっただからだろうか。

理由はわからないが僕はその時思ったことを言った。




「僕と協力しないか」




ポカンとした表情で見てくる。

「僕は魔法は得意だが格闘術はイマイチだ。でも君は魔法がイマイチな分格闘術は完璧だ」

「足りない事を補いながら生き抜こう」

人は支えながら生きていく。

まさしく今がそうではないかと僕は思った。

未だ返事は返ってこない。

それもそうだ。デスゲームで協力なんてするもんじゃない。

最後に生き抜くのは1人なのだ。

どれだけ2人で生き残っても最後には片方死ななければならない。

しかし僕はそれを恐れない。


「なんでって、僕達、兄妹だろ」


無理矢理ツーの手を取る。

そうだ、兄妹はそれぞれ助け合いながら生きていく。

生前、最後の最後に出来なかった事を今やろう。

そうして少々強引にだが、2人は協力関係結ぶ。

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