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スニーキングメアリー

その日の夜…


ニアが寝たのを確認して部屋を出る。流石にメイド服は目立つので動きやすい、ワンピースに着替えた。足回りもスリットが入っているので問題ない。部屋出て先ずは玄関に向かう。

そして玄関までたどり着くと暗闇にランプの光が動いているのがわかった。

俺は足を止めてランプの持ち主を確認する。顔は見えないが背格好からアーク伯爵だと思われる。アーク伯爵は辺りを見回した後に外出していった、俺は後をつけるために外に出ようとしたが…


「あら?貴女は新人のアメリーさんじゃない?」

「そうね、アメリーに間違いないわね。整った顔で美しい黒髪を持った人なんて貴女くらいでしょう」


どうやら先輩メイドらしい。俺の事はメイド長から聞いたのかとも思ったがそれは無い。何故ならメイド長はニアに付きっ切りだったからだ。俺が部屋に戻った後も夕食の時も入浴の時も常に三人一緒にいたからだ。

という事はこの二人はどうやって俺の事知ったのかはアーク伯爵しかない。まさか怪しまれていたのだろうか?そんなヘマはしたつもりが無いのだがな。

色々考えていると…殺気!

俺は咄嗟に後ろに飛ぶ、そしてさっきまで俺がいた場所の床にナイフが刺さっていた。


「へぇ〜、今のを避けるんですか。どうやら素人では無いようですね」

「そうですね、貴女に恨みはありませんが旦那様の後を追わせるわけには行きません」


やはりアーク伯爵の息がかかったもの達だったようだが、戦闘の訓練は受けていても、情報の大切さについては教えてられてないらしい。一人が「追わせるわけにはいかない」と言ったこれは裏を返せばやましい事があるからと言っているのと同義である。


「そうですか、ならば押し通るまでです」

「大人しく部屋に戻ってはくれないみたいですね、ならば実力行使で制圧します!」


その言葉を最後に先輩メイド二人は一切喋らなくなった。俺が一瞬で制圧したからだ。俺は飛びかかってくると同時にスタンガンを両手に装備した、丁度顎辺りくるように。「バチィ!」と音が鳴り直ぐ後に「ドスゥ!」と先輩メイド二人が床に倒れる。これで邪魔をする奴は居なくなった、アーク伯爵の後を追おうと玄関扉に手をかけた時。


「そこに居るのは誰ですか?」

聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

「メイド長、私です、アメリーです」

「その声は確かにアメリーですね。それで?ここに倒れている二人は貴女が?」

「ええ、まあ。二人とも気絶しているだけですのでしばらくすれば目が醒めると思います」

「そうですか…分かりました。この二人は私に任せてお行きなさい」

「ありがとうございます。それでは」

「戻ってきたらまた一緒にお風呂に入りましょうね」


俺は軽く手を上げて答えると屋敷を後にした。屋敷を出ると辺りは街灯の明かりだけついていた。アーク伯爵の姿を探すと遠くの方にランプの灯りが見える、その横に前に出た腹が確認できる。恐らくだがアーク伯爵だろう、俺はナンバ走りで近づいてランプに映し出された顔を確認する。やはりアーク伯爵で間違いないようだ。見失わないように後をつける、しばらく歩くとアーク伯爵が三階建ての屋敷に入って行った。俺も後に続いて、入ろうとするが当然普通に行くとバレるので、スキルを使う。


そのスキルは《空間掌握》だ。このスキルは空間を固定することが出来るので、大気を固定する事が出来る。大気を固定したものを足場としてアーク伯爵が入って行った屋敷の屋根に降りる。音を立てないように静かに…


屋根に降りると次は中の様子を確かめようとするが屋根に天窓は無い。ならば後は窓から入るしかない。《空間掌握》を使っても良いがやはり慣れ親しんだ方法が一番だ。俺はスキル《銃火器生成》を発動させる、そして俺の手の中にラベリング道具一式が現れる。


これでラベリングが出来る。俺は屋根から三階の窓のバルコニーへ降りると、道具一式を手放す。これで一分後に消滅する。後は窓から入入れれば良いが…当然鍵が閉まっている。仕方が無いのでスキルでピッキングツールを出す。後は鍵を開けるだけと「ガチャ」よし空いた、ようやく屋敷の中に入る事が出来るようだと思ったら


『貴方、前は何やってたのよ。手際が良すぎて気持ち悪いわ』


メアリーに非難されてしまった。俺はただ屋敷に侵入する為にやっただけなんだけどなと思いながらも屋敷に入る。後はアーク伯爵がどこに行ったかだが…やはり手当たり次第調べるしかないのだろなと左に行こうとしたらまたメアリーが


『カルロス、アーク伯爵なら右の突き当たりの部屋にいるわよ』

(え、どうして分かるんだ?)

『それは簡単よ。魔力感知よ、一度会った人の魔力を調べられるのよ。知ってる人は調べられるけど知らない人は魔力量が分かるだけね』


それだけでも十分だと思うとは俺だけだろうか。メアリーの説明を聞く限り部屋の中に何人いるかわかってしまう、情報が大切になる潜入ミッションなどでは大助かりである。メアリーから情報を貰ったので右の突き当たりの部屋に行く。


(メアリー、中に何人いるか分かるか?)

『え〜と、中にはアーク伯爵の他に二人いるわ。一人は魔力量は大した事は無いわね、もう一人は結構な魔力量ね』

(結構てどれくらいだ?)

『そうね、私達の五分の一てところかしら』

(何だよそれは、俺達が化け物みたいじゃ無いか)

『だって事実なんだもん、それに私達の魔力量って普通の人に比べたら化け物みたいでしょうね。だから化け物の認識で合ってるわよ』

(マジかよ!まあ、今は置いておこう。それで中にいる奴は戦闘になったら倒せそうか?)

『簡単に倒せるでしょうね』


簡単に言うな〜、まあ戦闘はなるべく避けないといけない。先ずは証拠を見つける事が先決だ。そして部屋の前に着くと俺はスキルで暗視カメラを出す。そして扉を暗視カメラがギリギリ通るくらい開けて暗視カメラを部屋の中に入れる。俺は更に手元に受信機を出し中の様子を伺う。


「それでは、始めましょう」

「それで例の件はどうなっているんだ?」

「その件ですか、大丈夫ですよ公爵様。今日邸宅に新たなメイドが二人来ました。そして片方はかなりの上物です」

「ほう?かなりの上物かそれは楽しみだな、儂が貰っても構わないか?」

「そうですね、それも良いですがキチンとオークションにはかけますよ」

「ふ、利益優先かお前らしいなアルバン」

「そうでもないですよ、ガラン公爵、貴方ほどでは無いですがね」

「「ハッハッハ!」」

「お二人ともお静かに、我々だけとはいえこんな所を見られると怪しまれますからね」

「まあ、そう言うなアークよ入り口は護衛で固めてあるし、階段も傭兵で守っているから侵入は不可能だろうさ」

「そうですね、それだけ守っていれば私以外は無理でしょうね」

「流石は宮廷魔導師殿といった所ですか」

「そうですね、宮廷魔導師が裏で悪事を働くなんて聞いた事が無いですよ」

「ふふふ、世の中金が全てなんですよ。金が無ければ生きていく価値がないんですよ、そして金の為なら下民を利用する事など当たり前ですよ」

「その通りです。下民は貴族に尽くしていれ…」


受信機から聞こえていた会話が途切れる。どうやら一分経ったカメラが消失したようだ。しかし情報としては重要性の高いものを得た、見つからない内に屋敷に戻ろうとカメラを回収する。そして入ってきたバルコニーに戻る途中に正面から一人の男が歩いてきた。


「おう?アンタ誰だ?屋敷のメイドにアンタのような奴はいなかったはずだ。だとすると娼婦か?だったら相手してくれよ」


どうやら幸いな事に俺を娼婦だと思ってくれたようだ。だが筋肉ムキムキの野郎に抱かれる趣味はない!のでゆっくり近づいてから身体強化をして顎に強烈なパンチを打ち付ける。男は脳震盪を起こしそのまま倒れた、俺はスッキリした。と思ったもの束の間、男が倒れた方向から


「お〜い、何かあったか?」


と言う別の男の声が聞こえてきた。

俺は「ヤバイ!」と思ったと同時に身体強化を発動したままバルコニーから出る。廊下の方から「おい、大丈夫か?」と声がする。起こされるのは時間の問題だということは誰が見ても分かる。俺は急いで《空間掌握》で足場作って屋敷を去る。


こうして俺の異世界初のスニーキングミッションが終わった。


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