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黒幕?と治癒魔法

サリバンの話によるとアーク伯爵の様子が変わったのが一年ほど前からだと言う。

それまではサリバンと二人で伯爵の業務を行っていたが一年前にサリバンが不治の病にかかり、部屋に籠もりがちになると様子が変わったのだと。

そして何をやっているのかを調べる為にメイド長を伝ってライに依頼したらしい。依頼して分かったのはアークが違法な人身売買をしている事だった。


しかし証拠が見つからずに手を出せなかったところに俺が現れたらしい。まあ、見た目が良くて強い女性なんてそうそういないよな。それと、俺の事はライからの手紙でサリバンに伝えられていた。


「話はある程度は理解しました。それでは証拠になるようなものがあるのでしょうか?」

「いえ、屋敷の中には無いわ。彼は一週間に一度、夜に屋敷を出て何処かへ出かけて行きます。その行き先を突き止めようと冒険者に依頼したのですが…」

「一人も帰って来なかったと?」

「その通りです。冒険者ランクはDでしたが腕がたつものばかりでした」

「話は分かりました。夜に出かけるアーク伯爵を尾行して行き先を突き止め、違法な人身売買の証拠を見つける。と言う事で間違いないのですね」

「はい、その通りです。それと一年ほど前に新たな宮廷魔導師が着任されまして、今思えばあの時から彼の様子が変わっていったような気がするのです」


ここで新たな情報、一年ほど前に着任したという宮廷魔導師。コイツはいかにも怪しい。それにアーク伯爵一人の力で人身売買などできるのだろうか?これは他に黒幕がいるに違いない。


「分かりました。話の宮廷魔導師については注意します。それで?アーク伯爵が出かける日はいつなのでしょうか?」

「それは…今日なのです」

ん?聞き間違いかな?余りに都合が良すぎる気がするぞ?

「申し訳無いのですがもう一度仰っていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい、今日がその日なのです」


どうやら俺の聞き間違いでは無いらしい。余りにも都合が良すぎると逆に怪しいと思うのが人の性であるが、この場合はどうしたらいいのだろうか?確か都合が良すぎるがサリバンさんが話している事は本当の事だと思ってもいいだろう。ライの事を知っていたし、俺の事もライから聞いていると言っていたからだ。もしかするとライが黒幕の可能性もあるがそれは限りなく低いだろう。何故なら俺に依頼する時にライの隣にドバンが居たからだ。わざわざ他人に情報を流すメリットが黒幕に無いからだ。


「分かりました。それでは今夜に行動します」

「ゴホ、それでお願いしますね」

「はい、それと話は変わるのですが…サリバンさんの病気は治らないのですか?」

「はい、治癒師様が言うには肺に炎症が起きていると仰っていました。治癒魔法をかけると症状を促進してしまうともおっしゃっていました」


ええ〜、まさかの肺炎が不治の病ですか〜。地球ではキチンと対処すれば完治するが油断すると死に至る病ある。しかし治癒魔法をかけると「症状を促進する」て言うのが納得いかないんだよね。治癒魔法が肺炎を直せなかったらそれはそれで問題がある気がするし。

こういう時はメアリーに聞いているのが一番と思い聞いてみる。


(いまの話聞いてたよな、治癒魔法って肺炎は治せないのか?)

『そんな訳ないでしょ。肺炎くらい私だったら簡単に治せるわよ!』

(だよな〜、とすると治癒師が嘘をついたと?)

『可能性はあるわね。私達の世界はセカンドオピニオンなんて無いんだから』

(俺の記憶から難しい言葉を引き出したな)

『ふふ〜ん。伊達に黙っていた訳じゃあ無いのよ!私は貴方が一人で行動している間も記憶の同調を試みてたの。そして見事に同調に成功したのよ』

(おお〜?それは凄いのか?)

『当たり前よ!同調したお陰で貴方も私達のの世界の文字が読めるようになったんだから』

(それは助かる、ありがとう)

『感謝されるほどの事はしてないわよ。さあ、とっととサリバンを治すんでしょ!記憶同調したから貴方でも出来るはずよ』

(分かった、やってみるよ)


「サリバンさん。私にサリバンさんを診察させて貰えませんか?」

「貴女がですか?」

「はい。会ったばかりで信頼できていない事は分かっていますが、私なら貴女を助ける事が出来るかもしれません」


真剣に目で訴える俺、サリバンも少し考える。

また、俺のお人好しが出てしまった。昔の仲間からは情に熱いからファイヤージョーとか呼ばれてたしな。

そしてサリバンは


「分かりました。貴女に任せます」

「ありがとうございます。それでは診察をさせていただきます。透視眼(インビジブルアイ)。」


俺はメアリーの記憶の中にあった透視魔法を発動させる。この魔法はその名の通り、物又は生物を透視する事が出来る魔法だ。俺はサリバンを透視する。内臓がハッキリと見える、内臓を見る限りは異常は無さそうだ。ならば治癒師の言う通り問題は肺なのか?

そう思い肺を見ると特に異常は無かった。

あれ?と思い隅々まで見るとまさかの脳の血管が詰まっていた。原因は肺では無く脳だった。


「これは…サリバンさん最近手足が痺れる事がありませんか?」

「そう言われればそうね、起き上がる時に手足が痺れる事があるわね。でもそんな事誰でもあるでしょ?」

「そうですね、それが脳の病気の怖いところろなんです。本人の自覚が無いまま普通に過ごしていると急に倒れるなんて事がざらにあるのですから」

サリバンは驚いたようで

「私の頭の中に腫瘍があるの?」

「いえ、原末に言うと腫瘍ではありません。脳の血管が詰まっているのです。このままにしておくといつか詰まった血管から血栓が動い大変な事になります」

俺の説明を聞いて顔が青ざめるサリバン。

「大丈夫です、キチンと対処すれば助かりますよ。私に任せてください」

「ありがとうございます。それではお願いしますね」


「はい」と返事をして治癒に入る。現代では破裂前の血管は薬を飲んで治すのが一般的だがこの世界にもその薬があるかわからない。

ならば、現代には無い魔法の技術を使うしか無い。


俺は詰まって血管に転移の魔法をかける。転移の魔法は小さいものを短距離動かす事はメアリーの記憶では簡単な事らしい。ならば後は転移させる為に繋がっている血管から血が溢れないように止血すれば完了だ。因みに痛覚を司る神経は一時的に麻痺させている。

結紮して転移させる。俺の手元には小さな血管が出現した。


「はい、これで終わりです。もう大丈夫ですよ」

「はぁ…ありがとうございます。これでもう大丈夫なんですね」

「はいこれでもう大丈夫です。けど一つ腑に落ちない事があるのですが…」

「な、何でしょうか」

「あ、申し訳ありません。不安にさせてしまいましたね。病気とは関係ないのでご安心してい下さい。サリバンさんは一年ほど前に体調を崩されたんですよね?」

「はい、その通りです」

「今回の病気と体調を崩し理由がどうしても結びつかないんですよ」


そう、脳の病気で体調を崩す事もあるとは思うが、俺は全く聞いた事がない。体調を崩した原因は他にあるのではないか、そう思えて仕方がない。そんな時に


『ねぇ、もしかしてさ、サリバンが体調を崩した原因ってさ、魔力量が関係してるんじゃない?』

メアリーだった。しかも俺は聞きなれない事を言ってきた。

(魔力量だって?)

『そう、魔力量は三十歳まで増え続けるの。普通の人なら三十歳を過ぎるとどんどん魔力量が減って行くのだけど稀に例外がいるの魔力量が更に増えていったり、減少するのが少なくて肉体の衰えについていけない時があるの』

(そんな事があるのか流石、異世界だな)

『感心している場合じゃないわ、さっさとしないとサリバンの寿命が縮まるわよ!』


それは聞いてないよ!という事で急いでサリバンの魔力量を見るために魔法を発動する。

「魔力測定(マジックスキャン)」これでサリバンの魔力の量が見れるぞ。え〜とこれは多いのか?少ないのか?どっちだ?


『まあ、こんな事だとは思ったわ。私が見る限りはやっぱり普通の人より多いわね。元々体が弱そうだし』

(すまん、で?どうやって魔力を減らせるんだ?)

『それね、私に変わってくれる?その方が早いから』

(分かった)


メアリーに体の主導権を渡す。

実は三年間の特訓でメアリーと入れ替われる時間が最大で一時間に増えたのだ。しかし入れ替わってる時間に比例して、もう一度俺に交代して直ぐにメアリーへ交代という事は出来なかった。

さて、メアリーに主導権を渡してと


「それでは、サリバンさん両手を出して下さい」

言われた通り両手を前に出すサリバン。メアリーが両手を掴むと

「では、いきますね」

何かを始めたようだ、と思ったら体の中に何か入ってくる。まさかこれは魔力か?魔力が体の中に入ってくる。

なるほど、サリバンから余分な魔力を引き受けるわけか。ていうか!引き受けて大丈夫なのか?

俺の心配をよそにどうやら終わったようだ。


「はい、これで終わりです。どうですか?」

「そうですね、呼吸をするのが楽になりました」

「それは良かったですね。それではそろそろ失礼します、夜の準備がありますので」

「ありがとうございました。依頼の事よろしくお願いします」


「はい」と言って部屋を後にすると割り当てられた部屋に向かう。とその前にマリアメイド長にも話しておいた方がいいだろう。時間もいい時間だ、窓から日が沈むのがみえる。

マリアメイド長を探して玄関に行く途中に


(カルロス?そろそろ貴方に主導権を返すわね。それと余分な魔力を引き受けたけど私達にとっては大したことではないから大丈夫よ)


メアリーに俺の心配を事を見透かされていたようだ。流石にこの世界の事に関しては先輩だな、歳としては俺の方が歳上なのに。いや、一回死んだからこっちの世界は数えて三歳でしかないのか。

そんな事を考えて玄関に戻るとマリアメイド長がニアを手取り足取り教えていた。ニアはどうやら口で言っても分からないらしい、仕方がないので最終手段として後ろから手伝っている。うん、間違いない。だからマリアメイド長の顔がにやけているのは気のせいなのだ。

俺は目を逸らし見なかった事にして部屋に戻ると決めた。



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