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初めてのメイドとドジっ娘

ライの依頼を引き受けてから三日後のアーク伯爵邸にて……


「私、アーク邸でメイド長をしております。マリアと申します」


マリアと名乗ったメイド長は見た目は叔母さんだが、立ち振る舞いを見ると分かるがかなりのやり手であるよう思えた。


「見事にメイド採用試験に合格したお二人にメイドの心得と言うものを………」


俺ともう一人メイド採用試験に合格した二人に、メイド長がメイドの心得を長々と語っている。まるで学校の校長の様に。そして五分後…


「以上です。分かりましたか?」

「「承りました」」

「それでは二人の部屋に案内します。アメリーとニア付いて来なさい」


メイド長に付いてアーク邸に入る。流石に伯爵邸だけあって広い、階数も三階建てだ。部屋に行く途中にも高価そうな調度品が様々所にあるのが分かる。中を見て歩いていたが目的の部屋へ着いたようだ。


「ここが、貴女たち二人の部屋になります。荷物を置いたら直ぐにこのメイド服に着替えなさい。私は部屋の外で待っていますので十分以内で済ませなさい」


そういうと、メイド長が二着のメイド服を渡すと部屋から出て行った。

それではさっさと着替えるか、手荷物を置いてメイド服を見る。本当にこれからメイド服を着てメイドになるのかと心の中で葛藤していると


「あ、あの、ニア・ブランです。よろしくお願いします」

「これはどうもご丁寧に、アメリー・サーシャです。これから宜しくお願いしますね」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

顔を赤くして答えるニアに

「それでは、メイド長様に怒られませんように着替えを済ませてしまいましょう」

と返事をしてニアの方を見ないように振り向き着替え始める。


え?言葉遣いが違うって?それにアメリーって誰だよ!だと?


そうだった、説明していなかったが俺は偽名を名乗ってアーク邸のメイドとして潜入している。採用試験は面接のみだったので偽名を名乗ってもバレなかった。どうやら見た目だけで判断されたようだ。そうでなかったらニアが採用される事はなかっただろう。


それと、何故言葉遣いが変わっているかと言うと、スキル《八方美人》の影響である。スキル《八方美人》は


スキル《八方美人》

女性にしか付けない職業の全ての内容、動作が完璧にこなせ、言葉遣いも変わるり、男女問わず相手を魅了する。ただし戦闘中は例外とする。(副作用として一ヶ月はスキルを解除出来ない)


と言う内容なのだ。

このスキルはメアリーが様々書物と俺の知識を得た事で発現したスキルだが、使い勝手が限られるのが難点だが…


さて、着替えも完了してしまったし部屋を出るかと思っていたが


「あの〜、すみません。ちょっと手伝ってもらえませんか?」


ニアに呼ばれて振り向くと背中のファスナーと格闘しているニアの姿があった。

俺は直ぐにニアのメイド服のファスナーを閉める。


「これでいいわね、それではメイド長に怒られる前に行きましょうか」


ニアに微笑みかける、この微笑みはスキル《八方美人》発動時には別名、キラースマイルと呼ばれる事もあると言うことを俺は数時間後に知ることとなる。


「はい!ありがとうございます」


元気があって何より。なのだがニアの目を見て若干の違和感を覚えたが、気づかなかったことにしよう。

ニアと共に部屋を出ると言った通り、メイド長が待っていた。


「二人とも着替えは済ませたようですね。それでは主人さまにご挨拶をしていただきましょうか。付いて来なさい」


どうやら潜入初日でアーク伯爵に会えるようだ。どんな人物かはライから事前に聞いてはいるが、実物を見るまでは確証がないので油断は出来ない。

そうこうしている内に伯爵の部屋へ着いたようだ。


「コン、コン」

メイド長がノックをする。

「入っていいぞ」

中から男の声で返事があった。扉を開ける入るメイド長、メイド長に続いて俺たち二人も入る。

見た限りでは、この部屋は伯爵の執務室らしい、正面の執務台に一人の小太りな男が座っていた。


「失礼します。新人メイド二人を紹介しに参りました」

「そうか、そうか、それで、名はなんというのじゃ?」

「アメリーとニアにございます。旦那様」

「お前には聞いてない、二人の口からちゃんと自己紹介をしろ」

「失礼いたしました。それではアメリーから」

メイド長に促され

「アメリー・サーシャと申します。本日より、アーク伯爵様の元で働かせていただきます」

「うむ、美しいな、グフフ、これから宜しく頼むぞ」

一言不安な返答があったが無視しよう。

「ニア・ブランです。今日から伯爵様のお世話をさせていただきます」

「ふむ、ふむふむ、宜しく頼むよ」

うん、目つきがなんかもう嫌だ。

「それでは二人に屋敷を案内しますのでこれで失礼します」

「アメリーを置いていけ、儂が案内するから」

「いえ、旦那様の手を煩わせる訳には参りません。私が案内します。旦那様は仕事を片付けて下さい」

なんかメイド長から覇気のようなものを感じるのだがきのせいだろうか?メイド長の覇気に押されたのか

「う、うむ、分かっているぞ。二人の案内は頼んだぞ」

「承知しました。それでは失礼いたします」

そう言うとメイド長が扉に手をかけて俺とニアに出るように促す。俺達二人はそそくさと部屋を後にする。


部屋を出て案内を始めるメイド長だが途中で足を止めて俺とニアに向き直り。


「全く、奥様が病でベッドで寝ているのをいいことに……。いいですか?二人とも、もしあの豚に呼ばれても「メイド長が呼んでいる」と言って断って結構です。特に夜に呼ばれた場合は必ず私に連絡しなさい!いいですね!」


鬼の形相で言うので、隣にいるニアは涙目になりながら「ひゃい!」と返事をするが、俺は「承りました」と言って一礼する。

言葉は悪いが二人の事を思って言った事だと理解出来たし、根は良い人なのだと分かっただけでも安心だ。

それにマリアメイド長が主人であるアーク伯爵を豚と呼んだ事に驚いた。

そんなこんなで屋敷の案内が終わるとメイドの仕事が始まる。


「案内も終わった事ですし、先ずは基本の屋敷の掃除から始めてもらいましょうね。玄関に移動しましょう」


俺達は一階にあるメイドの待機室から掃除用具を持って玄関に移動する。


「それではアメリーさんは掃き掃除をニアさんは掃き掃除をお願いします」

「「承りました」」


さて、メイドとしての初仕事は掃除か。まあ、基本だわな。俺はスキルのお陰で完璧にこなせるが、ニアは


「ガシャーン‼︎」

何かが割れる音がする。

「ああ、すみません。すみません。すみません」

どうやらニアが台に置いてあった壺を落として割ってしまったようだ。更に悲劇は続く


「キャァー」

「バッシャーン!」


掃き掃除用に用意していた。バケツをひっくり返してしまう。当然、床は水浸しになる。


「すみません、すみません、すみません」


ひたすら謝るニアに、メイド長が


「はぁ〜ニアさん、貴女、ドジね。仕方がないわね、私が教えてあげるから頑張りなさい」

「はい、頑張ります。ご指導をお願いします!」


これで被害は広がる事はなくなっただろうと思い、掃除に集中すると「パン!」と言う音がした。まさかまたニアが何かしたのかと思い音がした方を向くと、メイド長が手合わせているのがわかった。どうやらさっきの音は手を合わせた音だったらしい。

そしてメイド長は俺の方を見ると


「そうだったわ、アメリー、奥様が先程貴女を呼んでいたんだったわ」


何かものすご〜くわざとらしい感じで言うメイド長。それにいつ俺を呼ぶようにメイド長に言ったのかが不明だ。さっきまで屋敷を案内してもらった時には奥様らしい人はすれ違わなかったが部屋は案内された。しかし部屋の中には入らなかったので奥様の顔は分からない。


「分かりました。それでは失礼します」

「それとこれを持って行って」


メイド長から紙を渡される。紙には文字が書いてあるが当然のごとく読めない。

だが俺にはメアリーがいるのでメアリーに読んでもらう。


『これは、なるほど協力者て訳ね』

(すまないが一人で納得してないで俺にも説明してくれないかな?)

『ああ、ごめんなさい。この紙にね「私は貴女の事情を知る一人です」て書いてあるの』

(と言う事は…)

『そうね、他にも協力者がいると言う事ね。そしてその協力者は』

(奥様の可能性が高いな)

『まあ、そう言う事ね。それじゃあ、早く向かいましょう。とっとと依頼を済ませて精霊との契約の方法を聞くんだから』

(分かったよ)


メアリーと話している間に奥様の部屋に着いた。俺はノックをすると中から「どうぞ」と返事があった。俺は「失礼します」と言って中に入るとベッドの上に一人の女性が座っていた。

その女性は色白で髪も白いが目は深い青色をしていた。


「自己紹介するわね。私はサリバン・アーク。アーク伯爵夫人よ。貴女はメアリーさんだったかしら?ライから聞いているわ」


やはりアーク夫人も協力者のようだ。ライの名前を知っていて何より王都にきて間もないメアリーの名前知っているから間違い無いのだろう。


「メアリー・オルコットと申します。この度はライからの依頼で屋敷に参りました」

「やはりそうですか。でもまさか貴女のよな美人が来るとは思いませんでした。ゴホゴホ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。もともと少し病弱なもので」

「そうだったのですか。申し訳ありません。それでは、話は変わりますが私を呼ばれた訳を話していただきたいのですが…」

「そうだったわね、話は私の夫、アーク伯爵の悪事についてです」


どうやらイキナリ確信に触れる話のようだ。俺はベッドの横にある椅子に座るように促され椅子に座る。

そして話の内容は驚くべきものだった。



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