ちょっとした騒ぎ
受け付け嬢に連れられてきた場所はロビーにあった扉を通り廊下を進んだ先に恐らく鉄で出来た、頑丈そうな扉を開けた先にあった。
そこは学校の体育館程の広さがある試験場だった。
奥には鉄格子で区切られた扉の様なものもある。恐らくあそこから魔物が出て来るのだろう。二階は客席がある。試験場以外にも活用法があるのだろう。
辺りを見渡していると一人の男が近づいてきた。
「お待たせしました。私は今回、メアリー様の試験官をさせていただきます、ライと申します」
ライと名乗った試験官は見た目は高校生くらいの痩せ型の男だった。
すると一緒に来たおっさんが
「おう、ライ。お前さんが出張って来るとはどう言う風の吹き回しだ?」
「これはこれは、ドバン殿も何故ここへ?」
「質問に質問で返すんじゃねーよ。俺はこのべっぴんさんが気になって戦闘試験を見に来ただけだよ」
「自由気ままでいいですね〜。私は予知夢を見ましてね、今日ここで何が起こると」
「何かが起こるか……。そうかそれは今俺が考えてる人が関係してると思っているんだが、違うか?」
「誰の事を言っているのかは分かりませんが恐らく合っていると思いますよ?」
どうやら、ライとドバンは知り合いのようだ。それに二人して俺の方を見て不吉な事を言っているのだが…、それにさっきライが予知夢と言ったがライのスキルなのだろうか?
まあ、今は試験の方が大事か。
「すみません、試験を始めてもらいたいのですが…いいでしょうか?」
こういう頼み事をする時は猫をかぶるにかぎる。俺は礼をライに向かいする。
「そ、そうでしたね。それでは説明させていただきます。今回の試験は魔物討伐です。ギルドの規定に従ったモンスターを倒していただきます。モンスターの強さはE〜BまでEから順に戦っていただきます。もしもの時は助けが入りますので安心してください」
若干照れ臭そうに説明してくれたが、要は戦って勝てばいいらしい。そうと分かれば後は戦うだけだ。
「準備は出来ている、いつでも始めてくれ」
「わかりました、それでは中央までお一人で移動した下さい。準備が出来ましたら手を挙げて合図をお願いします」
ライの説明に「わかった」と返事をして訓練場の中央へ移動する。
さて、何が出で来るのか楽しみだ。
ライの指示通り準備が出来たので手を挙げる。
するとライの声が響く
「それでは試験を始めます。まずはEランクのゴブリンです」
正面の鉄格子が開く、そこから一頭のゴブリンが出てきた。ゴブリンは俺の姿を見るとこっちに向かって来た。
ゴブリンとの距離は十分にあるので俺はスキルを発動させて愛銃を創り出す。そして、ガバメントをゴブリンの頭に向けて打つ。
「バァーン!」
銃声が響く、そしてゴブリンが倒れる。どうやらちゃんとヘッドショット出来たようだ。 ゴブリンの遺体はどうするかと思ったが自然に消滅していった。どうやら本物のゴブリンでは無かったようだ。
冷静に観察していると
「メアリーさん…、今のは貴女のスキルですが?」
何故かライの顔色が悪い、大丈夫か?しかし、スキルの事を簡単に教えてもいいものか…、そうだ!メアリーに聞いてみよう。
(メアリー、スキルの事について聞かれてあるんだが教えても良いもんか悩んでるんだけど、どうした方がいいかな?)
『そうね、スキルの能力は様々だけど詳しいことまでは分からないから、スキル名だけなら問題は無いわ。因みに国民証のスキル欄は本人以外には読めないから安心して』
俺は(わかった)とメアリーに答えライに答える。
「そうですよ、《銃火器生成》と言うスキルです」
「《銃火器生成》ですか…、聞いたことがないスキルですね。それと手に持ってるものは何ですか?さっきそれからものすご音がしたと思ったらゴブリンが倒されてましたけど…」
「俺も見たことねーな、その武器はスキルで作り出したものだろ。だとすると、ねーちゃんにしか使えないて事になるのか?いやいや他のヤツも使える可能性はゼロじゃない。しかしアレが俺に作れるのか?」
ライとドバンが二人して考え込む。やはりこの世界には銃は存在していないようだ。
二人には悪いが今は試験の途中だ。
「すいません、次の魔物の相手を出してもらってもいいですか?」
俺の申し出に正気を取り戻したライが
「失礼しました。少し考え事をしていたもので、それでは次はDランクです。相手はゴブリン三体です」
再び奥の鉄格子が開く、そして先ほどと同じ大きさのゴブリンが三体出てきた。数が増えただけなのでさっきと同じように頭を狙う。
銃声が三回倒れるゴブリン、しばらくするとさっきと同じように跡形もなく消えていった。
「これでDランクですよね、次は何ですか?」
「はは、それは連続で使えるんですね」
乾いた声でライが返答したと思ったら、一人の女性がライに近づいていき、ライに何かを伝えていた。
直ぐに話がついたらしく、女性がライの直ぐ後ろに控える。
そしてライが意を決したように俺に向かって
「すみません。いきなりなんですが…メアリーさんに一つお願いがあるのですが」
「お願いとは何でしょうか?」
「どうやら貴女の試験を見学したいと冒険者が詰めかけてまして、ロビーが混乱しているようなんです。ですので可能であれば他の冒険者の見学を可能にしていただけないでしょうか?」
さて、どうするか。あんまり目立ってもいい事が無いようにおもえるしな〜。
そんな事考えているとメアリーが
『カルロス、この際だから私達の実力を他のヤツらに見せつけるチャンスよ!』
(いや、見せつけるのは良いけどそれだけで済まない気がするんだが…)
『何言ってんのよ!女は度胸よ。私達の実力を雑魚に見せつけるのよ!』
メアリーがどんどんやる気になっているいや、やけになっているのか?
まあ、メアリーの言う事にも一理あるのかな。よし。
「ライさん、そのお願い聞きましょう。それと試験の邪魔にならないようにお願いしますね」
「ありがとうございます。それでは二階の客席に冒険者を入れさせますのでしばらくお待ちください。端の方に椅子がありますので座ってお待ち下さい」
そう言うとライは後ろに控えていた女性に俺が了承した事を伝えると女性と共に足早にロビーに向かって出ていった。
俺はライの言う通り端にベンチに座る。すると隣にドバンが座って来た。
「ねーちゃん、いやメアリー。おめーさんの武器を見せてもらってもいいか?」
別に困らないのでドバンに愛銃を渡す。ドバンは真剣な目で銃を見る
「これは素材は鉄か…それに中に鉄の弾丸、弾丸の中に火薬が入っているのか。これほど精密に組み合わさった物は見たことがねーな。ここを引くと連動して火薬が爆発する仕組みか…」
どんどん銃の構造を読み解いてゆくドバンに俺は
「ドバンさん、その解析能力は貴女のスキルですか?」
俺の質問に銃を見ていた顔を上げて
「そうさ、俺のスキル《鑑定士》だ。《鑑定士》は物や魔物の素材の内部構造、素材を解析できるんだ、鍛冶屋にとっては喉から手が出るほど欲しいスキルだな」
「ドバンさんは鍛冶屋何ですか?」
「そうだぜ。王都じゃ少しは名の知れた鍛冶屋だよ。ギルドには非常勤の買取担当でたまにくるんだ。で、買取の時に気になったやつがいれば声をかけてるってわけよ」
どうやらドバンは名の知れた鍛冶屋だったようだ。それにスキル《鑑定士》か、確かに物作りには必要不可欠だな。
ドバンと話していると二階席の方が騒がしくなってきた。どうやら冒険者達が入って来たようだ。
雑談しているとライが戻ってきた。どうやら試験再開らしい。
俺も立ち上がると中央へ移動する。上からの視線を感じる、かなり注目されてるのが分かる。
そしてライが声をかけてくる。
「準備が出来ましたら手を上げて下さい」
そして手を挙げる俺、さぁて何が出てくるの楽しみだ。と思っていたら
『カルロス、貴方だいぶ猫を被るのが上手くなったわね。それに仕草も女性そのものよ』
メアリーがいきなりそんな事言うから顔が熱くなる。何故、今そんな事を言うんだよ!とも思ったがどうやら俺の緊張が伝わったようだ。
当たり前か…だって同じ体を共有してるからな、緊張してるのも分かるか。
さて、メアリーの励ましのお言葉をいただいたので後半も頑張りますか!