私、メアリー、今、貴方の……
鏡に映る少女が俺だとわかった時俺は呆然とした。
(俺は確かに死んだはずだ、だが今、少女の姿で生きている事は間違いない…)
そんな事思っていると
『ぉ……』
ん、何か聞こえたような?
『ぉ…ぃ』
やっぱり何か呼んでるような声が聞こえる。
『おーい』
今度ははっきり聞こえた。この声は俺を呼んでいるようだ。
だが、何処から声がするのかわからない。すると
『おーい、聞こえてる?今、貴方に話しかけてるんだけど分かる?貴方の意識に直接語りかけてるんだけど聞こえてるよね?』
どうやらこの声の主は特殊な能力の持ち主なのかもしてれない。とりあえず返事をして見る。
「聞こえるよ、とりあえず名を名乗っておこう。俺の名前はカルロス・スミス、傭兵だ」
『これはご丁寧に、私はメアリーだ。歳は十三歳だ』
二人とも自己紹介を終えると俺はメアリーの姿を探したがやはり部屋の中には少女の姿の俺以外誰もいなかった。
ならば、声の主に何処にいるか聞いてみるとしようか。
「それでメアリー、君は何処にいるんだ?」
『何処って、それは貴方の中にいるわ』
「俺の中だと?」
『そう、わかりやすく言えばこの体の元々の持ち主ってところかしら』
衝撃が体に走ったように感じた。今、俺が動かしている少女の体は元々の持ち主メアリーのものだったのだ。
「ちょっとまてよ、元々の持ち主だって!」
『そうだよ。今私は意識だけの存在だけどね』
「色々聞きたい事はあるがまず初めに何で俺は此処にいるんだ?確かに俺は死んだはずだ」
しばらく間が空く、どうやらメアリーも心当たりがあるようだが言いにくいような感じだ。
「答えられなかったら別に構わないぞ。質問を変えるぞ、メアリー、君は今何処に居るんだ?」
『それは……、私の体の中としか言いようがないわね。今は貴方の体だけど、それと、こんな状況になってる理由だけど…』
「言いにくかったら別にいいけどさ」
『いえ、大丈夫よ。説明するわ、私は禁呪魔法を使ったのよ』
「え、魔法だって!魔法は空想のものだろ?」
そう、俺の世界の常識として魔法は空想の産物だ。魔法はアニメや映画の中でしか存在しないはずなのだ。
『やっぱりそうなのね、私が使った禁呪魔法は異世界の魂、それも魔法以外の知識又は技術を持った魂を憑依させて、その異世界の知識を得る事ができる。はずたったんだけど…』
「だけど、失敗したのか?」
『そうね、意地を張っても仕方ないわね。その通りよ、本来なら体の主導権は私のままのはずだったんだけど…』
「俺が主導権を握ってしまった訳だな。それで俺の知識は得たのか?」
『ええ、それは問題ないわ。新たなスキルを得たわ。スキル『銃火器生成』ね、銃火器て何かしら?カルロスだったかしら貴方このスキルを使いこなせるわよね』
少し威圧感のあると感じだが、気にしないでおこう。それにしてもスキルか、まるでゲームの世界だなもしかしたらレベルなんかもあるのかも知れないな。取り敢えずはスキルの確認だ。ゲームならメニュー画面などから見れるがメニュー画面などは無い。仕方がないのでメアリーに聞いてみる。
「メアリー、『スキル』の確認ってどうするんだ?」
『それね、『スキル』の確認したい時は国民証を確認すればいいわ。国民証は机の上にあるわよ』
メアリーに言われ、目の前の机の上を見ると鏡の横にカードのようなものがあった。
手に取って見ると、見たことない文字が書かれていた。
読めるのか?と思ったが心配はいらなかった。何故ならメアリーがいるからだ。
「メアリー、これか?」
『そう、それよ』
「すまないが文字が読めないんだ。読んでくれるか?」
『お安い御用よ、『スキル』や『耐性』の欄は全て読んだ方がいいかしら?』
「すまないが、頼む」
『了解』
『スキル』
《銃火器生成》
使用したことのある銃、装備品を生成できる。なお使用者から離れると一分で消失する。
《魔法付与》
無機物、有機物に魔法が付与出来る。
《詠唱破棄》
魔法発動に必要な詠唱が必要なくなる。
『次は耐性ね』
『耐性』
《魔法耐性》《物理耐性》《状態異常無効化》
『以上ね、何か質問ある?』
「そうだな、とりあえず今は無いな。銃火器生成を使ってみるか」
そして俺は馴れ親しんだ相棒とも呼べる銃を思い浮かべる。前世の俺の愛銃ガバメントM1911を。
すると俺の右手に一丁のハンドガンが握られていた。
「よし、成功だ!」
『なんなの、それは?』
「ああ、これは銃って言ってな、鉄の弾を火薬の爆発で撃ち出す道具さ」
『へ〜、ちょっと使ってみてよ』
「分かった、だが、部屋の中では危ないから外に出てからな」
そういうと俺は外へと向かうが、家の出入り口が分からない。仕方がないのでメアリーに聞いて外に出られる扉を開けるとそこは森の中だった。
「好都合だな、ここなら他の人に迷惑にはならないからな。それじゃあ撃つぞ」
メアリーがワクワクしているのが分かる。やはり体を共有しているからなのか俺の気持ちも高ぶってくる。
そして俺は元愛銃の引き金を引く。
バァーンと音が鳴る、やはりいい銃だなと感傷に浸っていると右腕から痛みがきた。
忘れていたが今の俺は少女の華奢な体だ、骨も細いだろうし衝撃がモロにきたのだろう。
これは問題だな、身体を鍛える必要があるな。さあてと、メアリーは…
「おい、メアリー、どうだ、初めて見た銃は?」
『なかなかの威力ね、他にもあるのかしら?』
「確かに他にもあるが、今より強力なヤツとなると腕を骨折する可能性があるから身体をある程度鍛えないといけないな」
『そうか、それは残念だわ。身体を鍛えるのはいいけど筋骨隆々なんて嫌よ、私の体だもの。それに私には魔法があるわ、身体強化の魔法があるわ、今から使うから身体の主導権を私と変わってくれない?』
「わかった、が、交代するには思えばいいのか?」
『いえ、『スイッチ』言えば変わるわよ』
「分かった、スイッチ」
そういうと俺の意識は暗転するかと思わられたがそうはならなかった。視覚はどうやら共有出来るようだ、それに目の情報以外にも俺の見たい方向に視点も変えられるようだ、自分を上から見下ろす視点にも出来る。そして身体の主導権はメアリーに移っていた。
「ようやく私の体が戻ってきたわ、それじゃあみせてあげるわ。身体強化の魔法をね。『フィジカルアップ』」
フィジカルアップとメアリーが言うが何も変化が起きない。失敗したのか?と思っているとメアリーがその場でジャンプした。すると次の瞬間、視界から森が消えていた。視点を切り替えてみる。視点を切り替えて下を見ると下には森が広がっていた。
「どお?これが魔法よ凄いでしょ!」
『ああ、これなら身体を鍛えなくても大丈夫だな納得したよ』
「そうでしょ。落下するから着地にそなー」
急にメアリーの声が聞こえなくなる。それと同時に身体の感覚が戻ってくる。どうやら理由は分からないが身体の主導権が俺に戻ってきたようだ。
そして忘れてはいけないのは、今、地面に落下中なのだ。
「どうする、このまま落ちて大丈夫なのか⁉︎」
焦る俺、すると
『大丈夫よ。このまま普通に足から落ちても』
メアリーの落ち着いた声が聞こえる。そして足から落ちる俺。「ドン!」と衝撃が脚にきたが痛みは無い、どうやら身体強化の魔法の効果が効いているみたいだ。
『ほら、大丈夫だったでしょ?』
なんでもないように言うメアリーに
「こっちはいきなり声が途切れてビビったぞ。どうして急に俺に主導権を戻したんだ⁉︎」
キレ気味に問い詰める。
『ごめんなさい、それに関しては私の落ち度だわ。まさかこんな事が起きるとは思わなかったわ』
どうやらメアリーも予想外の事態が起きたようだ。
「何があったんだ?」
『いやね、私、禁呪魔法を失敗したでしょ。禁呪魔法を失敗した事が恐らく原因なんだと思うけど『スイッチ』で入れ替われる時間が物凄く短くなってるの。大体一分くらいにね』
「そうか、それでいきなり俺に主導権が戻ってきた訳か。それで、これからどうするんだ?」
『そうね、本来なら禁呪魔法を成功させてからギルド行こうとしていたんだけど無理そうね。禁呪魔法の解き方は分からないし、解いたら解いたでスキルを失うし、どうしようかしら?』
「解けば良いんじゃないのか?」
『嫌よ、私は全ての知識を学びたいの!そして学んだ知識で世界の貧しい人を救うのが私の夢なの』
そこにメアリーの並々ならぬ決意を感じた。
「そうか、悪かったな。話を戻すがギルドって言うと冒険者が集まるようなとこか?」
『そうよ、ギルドで冒険者登録が出来る。私は未知の知識に興味があるの、冒険者になればギルドにくる依頼が受けられるわ。その中に私が知らない知識に関する依頼もあるはずと思って冒険者になろうと思ってたんだけど…」
「こんな事になった訳だな」
『そう、どうしようかしら?』
どうやらメアリーは未知の知識に興味津々のご様子。知識を得たら試さずにはいられないたちだと思われる。
「分かった、メアリーの夢に付き合うよ」
『本当に?ありがとう助かるわ。だけど、今の状態じゃあ色々と不便だから特訓してからでいいわ』
「特訓って何するんだ?」
『新しく取得したスキルの汎用性を調べたり、貴方、カルロスとの連携も重要になるわ。貴方が銃を使ってる間に私が魔法を使う事も出来るようになるはずだから』
「そうか…どれくらいの時間がいるんだ?」
『そうね、ざっと三年くらいかしら』
三年か、長いようで短い感じになるのかな〜。一度死んだ身の俺だ、メアリーの為にこの命を使っても誰も文句はないだろう。
「分かった。一度死んだ身なんだ、何年でも付き合ってやるよ」
『ありがとう、これからよろしくねカルロス』
「こちらこそよろしく、メアリー」
『そうと決まれば特訓あるのみね、今から始めるわよ!」
ヤル気を漲らせ張り切るメアリーだか、俺は身体に異変を感じていた。ちょうど股間の辺りに。
「メアリー、特訓の前にトイレは何処だ?」
『家にいる入って右よ』
「ありがとう、それとトイレに入ったら『スイッチ』で切り替わった方がいいよな?」
『なぜ?』
「なぜってお前、俺は男だぞ?」
『今は女性じゃない、何も問題は無いわ』
倫理的に問題があるような気がするのは俺だけだろうか?仕方がない、メアリーが大丈夫なら問題無いのだろう。俺はトイレへと入っていく。
そこでまた問題にぶち当たるがメアリーが何気なく教えてくれた。
そしてトイレから出ると特訓の日々が始まった。