転生神のお仕事
転生…魂が今の命を終え、次の命へ乗り移ること
転生神…転生するさい、魂を導くお仕事です。
「次の方どうぞ!」
本日、7番目の魂はどうも自分がここに来たことに納得がいってない様子。
「どうかなさいましたか?…念じていただければこちらに思いが伝わりますので大丈夫ですよ」
淡い光を放つ球体はふわふわと浮きながら思いを伝えてくる。
(俺、やっぱり死んだっすか?ここ地獄すっか?)
「そうですね。不運に見えますが予定通りの幕引きです。これを選んだのもあなたなのですよ?覚えていないでしょうけど。ちなみにここは地獄ではありません。そちら側の方はこちら側を地獄だ天国だなどと言うそうですが、ここは物体と霊体が混在できる場所、【見極めの間】です」
狭いような広いような感覚がつかめない空間、簡単には来ることのできない特別な場所。
(もしかして、え、閻魔様…)
「違います!エンマー・サナーは先々代の転生神ですよ。私はコル・エクレル、コルとお呼びください」
先々代と勘違いされるよくあることですが全然似ていない。アイボリーのロングヘアに黄金の瞳と白い肌と言ったらこの界隈ではこの転生神ぐらいなのですが、この手の話は多いので慣れたもの。
(コル様……これから、俺どうなるっすか?)
「見極めさせていただきます!少々お待ちを」
右手に持つ装飾の豪華な杖を振りかざすと浮かび上がるいくつかの文章
大川健次 18歳 男
死因 多重事故による被害を見るためよそ見をしていたバキュームカーの運転手の事故により大量の汚物を浴び、更に汚物を大量に吸い込んで気管に詰まったったことによる窒息死。
累積善行数…64438
累積悪行数…64552
その他…19721
「あー、ちょっと悪行が上回ってますね。これだともう一回ぐらい第二階位文明での転生で善行を積んでもらう必要がありそうですよ」
善行による魂の磨き上げ、それによりより高い文明への転生が行われることになり、高い文明ほど善人が集まり、より平和かつ快適にそして長寿になる。ちなみに第一階位文明は微生物~獣程度の文明。大川がいた世界は第一と第二の混在の文明になる。
(えっ!生き返れるんっすか?)
「いいえ転生です。もう大川健次にはなれません。新しい場所で、新しい名前で、新しい命を生きてもらいます。なので今回もこれまでの記憶は無くなります」
(でも、それだとまた悪い方が上回ってしまうかもしれないっす。)
「確かにそうですね、あなたは覚えてないでしょうけどこちらの記録によると既に9回第二階位文明への転生を行っているようです。
そこで記念すべき10回目を迎える今日!スペシャルな特典をご用意いたしました。まずはこの中から選んでください」
どこからともなく現れる札、名を【運命札】。そこに書かれていたのは
【致命的な変態だが、ノーベル賞級の実績を残す女科学者の運命】
【勇者とまではいかないがソコソコ強い、一生モテない男剣士の運命】
【最後の最後は糞まみれだが、それまでは結構幸せな女魔導士の運命】
(うっ、3番目のやつに既視感が…)
「まぁ、そう言わずに。今回はスペシャルと言うことでどれを選んでも【金運】を最大まで付加させていただきます。私これでも付加権限においてはどの転生神より強いんです。お金に余裕があるなら善行も自然と捗るでしょう!」
(あ、ありがとうございます。)
戸惑いながらも感謝していただけた様子。金運が最大ならどんな状況でもお金又ははそれに準ずるものには困ることがなくなるのでイージーモードの人生になること間違いなし。
「で、どの運命になさいますか?」
(えっとぉ、魔導士とか憧れちゃいますけど、また糞まみれの死はやだなと…、一生モテないのもイヤなので、変態でもいいので女科学者になるっす)
「いい決断力をお持ちですね。ここでゴネル方多いんですよ。内容のいい【運命札】なんてそうそうないので困ってしまうんです。では早速転生してもらいましょう」
強い光があたりを包み転生開始。選ばれた札がキラキラと昇華していく様子はとても美しい。
「いってらっしゃ~い」
(最後に聞いてもいいですか?)
「ん?」
もうそんなに時間もないのに急な質問。
(コルさんって女神様っすよね?女神様なのになんでそんなにおっぱいちっちゃい………)
魂もキラキラと輝き無事転生完了。
怒りを抑え、無い胸を撫で下ろし、息を整え、
「………次は第一階位行きっと。メモメモ」
魂を導く、これが転生神のお仕事です。
【運命札】 人生の大方の行く末が書かれた札 札の内容は神による自動書記によるもので書き換えは普通の転生神では不可。ただ転生神の付加権限によってある程度の付け加えは可能になる。