桃太郎退治の鬼太郎
むかしむかしあるところに鬼がいました。
この時代、鬼たちは農業などを営んで村で仲良く暮らしていました。
そんなある日…
「はぁーあ、信長様も人使いが荒いことをなさるなぁー」
「でもオラたちを勝利まで導いてくださる信長様のためだぁしっかりせぇねん」
人間たちがフランシスコ・ザビエルから伝えたれた鉄砲をもって鬼ヶ島へやってきました。織田信長の命令で鉄砲の発砲実験をしようとしていたのです。
「む!まさか、この声は人間では…」
鬼の長老がつぶやきました。
「おい!みんな!人間が来たぞ!早く隠れろ!」
長老の呼びかけで村の鬼が一斉に家へと逃げました。
人間は知能が高いことで鬼たちから恐れられていました。
「んなぁーこんな島に村なんてあるなんてぇー!びっくらこいたぁー!」
「おい!あれを見ろ!」
1人の男が指を指した先には逃げ遅れた鬼の子供がいました。
「なんだぁあの化物はァ」
「よっしゃ!ただ撃ってみるだけじゃつまんねぇ!この鉄砲であの化物を殺してやろぅや!」
男が狙いを定め引き金を引きました。
バキュゥーン
「ガハッ!」
鬼の子供が大量の血を流して倒れました。
「うっしぃ!大成功だぁ!」
「これで殺力も証明できたなぁ!」
「む…息子よ…すまぬ。だが、敵かたきだけは必ずッ!」
先に隠れて何もできなかった親の鬼が怒り狂って武器も持たずに出ていきました。
「ヴガァァァァァァ!!!」
「なっ!もっとでけぇやつが出てきやがった!みんな!同時に撃つぞ!!」
バキュゥーン!
さっきよりも大きな音が村に響き渡りました。
ドサッ
親の鬼も何箇所からか血を流して死にました。
「さっきの化け物…あの家から出てきたよなぁ」
「あぁ、何かあるかもなぁ!ヘッヘッヘ」
人間たちは死んだ親子の家に入って行きました。
「うわぁ!なんだこの金やら銀はぁ!」
そこにあったのは鬼の村でいうお金…金銀や宝石などの宝でした。その家の親子は村の銀行の様な場所だったのです。
鬼の村では、知能が低いため、悪だくみをする鬼がいないので、しっかりと銀行の仕組みは成り立っていました。
「この宝全部持って帰ろうや!隠し持ってるより信長様に渡した方が出世とかできるんじゃねぇか?」
「そりゃあいい考えだ!じゃあ実験も終わったことだし早速帰ろうぜぇ!早く帰って酒飲みてぇ!」
長老の家には3人の鬼がいました。
「もう我慢ならん!」
「どうしますか長老ッ!」
「3人なら追い出すことくらいはできるだろう!俺の合図で一斉に飛び出すぞ………飛び出せッ!」
「ガァァァァ!」
「うわ!3体も出てきやがった!さすがにこいつらは倒せねぇ!逃げるぞ!」
3人の鬼が追いかけるに対して3人の人間が逃げ出しました。
「逃がすかッ!」
長老は腕を伸ばして1人の男を捕まえました。
そんなことお構い無しに残り2人の男は逃げていきました。
「すまん!お前の事は忘れないからな!」
「ちょ、待てって!グハァッ」
「チッ、逃がしたが1人でも見せしめに十分だ!死ねッ!」
バキッ ボキボキべキッ!
全身の骨が砕け散る鈍い音が鳴り響きました。
今まで優しかった鬼が初めて生き物を殺した瞬間でした。
そして鬼ヶ島から逃げた2人の男は鬼の存在を街の人々に伝えました。
「あいつらは悪魔だ!絶対に鬼ヶ島へいってはならねぇ!おめぇらも殺されちまう!」
その時間帯、鬼たちも他の村から仲間を集めて会議を始めました。
「あいつらは悪魔だ…仲間を殺して、しかも俺たちの宝を盗んで行きやがった。絶対に取り返す。あの親子の分まで!」
ただの金や銀だけでは鬼たちもそこまでの執着心はなかったでしょう。ですが、男たちが盗んでいった宝の中には鬼ヶ島を守ると伝えられている宝玉が入っていたのです。その宝玉が50年間鬼ヶ島から離れると島が沈むという伝説があるのです。
「あの宝玉だけは…俺たちまで死んじまう…」
「でもまだ取り返しに行くのは早いです長老!幸い50年という月日があります!人間はあんな武器を持っていました!我々も勝てるように鍛えましょう!」
「うむ。俺たちは力で人間に勝つことが出来る。おまえの言う通り支度をして備えるか。」
そして25年間の年月が過ぎ、織田信長が滅びた後、鬼族の宝はある老人2人暮しの家にありました。
ある日、その家のおばあさんが川へ洗濯に行きました。するとどんぶらこと大きな桃が流れてくるではありませんか!
おばあさんは流れてきた桃を家に持って帰りました。
「んにゃぁー!なんでぇーこのでっけぇ桃はぁー!」
「じいさんや、どうします?切ってみますか?」
「そうだな…切ってみっか!」
ズバッ
おじいさんは大きな包丁で桃を切ってみました。すると…
「オギァー!オギァー!」
なんと桃から男の子の赤ん坊が出てきたのです!
「あぁ、神様がオラたちに赤ん坊を授けてくださったぁ…ありがてぇ」
その赤ん坊を桃太郎と名付け2人は大事に育てました。
桃太郎の12歳の誕生日の日です。
37年間もの年月を遂げて日本に鬼がやってきました。
鬼たちは1人の男を脅しこの辺で有名な宝はどこにあるか聞きました。その場所は桃太郎が住んでいる家でした。
「ゴラァァ!宝をよこせェ!」
桃太郎の家に怒鳴り込んできて宝を見つけてはそれを持って出ていきました。
その時、鬼ヶ島から逃げてきた男が鬼を見つけました。
「あのやろォ!来やがった!だがこの鉄砲で殺せるッ!」
男は鉄砲を取り出して鬼を撃ちました。
バキュゥーン…
「なにッ!?」
なんと鬼は鉄砲の弾をはじきました。
「む、お前はあの時のッ!お前だけは生かさんッ!」
鬼は男を捕まえ、両足を持ち引きちぎっていきました。
「イギッ!あぁ…やめ…て」
鬼はまた人を殺しました。
鬼は桃太郎たちを睨んで言いました。
「お前たちは生かしてやる。だが、この宝は持って帰る。」
そう言って鬼は去っていきました。
おじいさんとおばあさんは怯えて動けなくなっていました。
桃太郎はその様子を見て剣術を学んで鬼を倒すと決意しました。
桃太郎が剣術に明け暮れて18歳になりました。
「おじいさん!おばあさん!僕、鬼ヶ島に行くよ!そして、宝を取り戻す!」
桃太郎は元服と同時に鬼退治に行くと決めていたのです。
何年か前からそのことに気づいていたおじいさんたちは、桃太郎の意見を尊重するべきだとこの日を覚悟していました。
「ああ、頑張っておいで!応援してるから!」
「あんた!必ず帰ってくるんだよ!美味い料理作って待ってるから!」
「わかったよ、絶対に鬼を倒してくる!」
おばあさんからきびだんごを受け取った桃太郎は港に向かいました。
その途中、犬が倒れていました。
「おやおや、お腹が空いているんだね、このきびだんごをお食べ。」
犬にきびだんごを食べさせると犬は懐いて桃太郎についていくようになりました。
なんと、猿がキジを捕まえているではありませんか!
「キィー!キィー!」
「やめないか!このきびだんごをやるからキジを放しておやり。」
そう言って2匹にきびだんごを食べさせ、犬、猿、キジの3匹を仲間にしました。
「おう!桃ちゃん!今時刀なんて持ってどこにいくんだぁ?」
港にいた桃太郎の知り合いたちが訪ねました。
「鬼退治に行くんですよ。けんさん。」
「な、なにぃ!鬼退治!?」
周りがざわつき始めて桃太郎はしまったと口を押さえました。
「そんなこと桃ちゃん1人に任せられっか!俺たちも行くぞ!」
桃太郎は必死になって説得しましたが、みんな行くと聞きません。ですが、正直人間1人で鬼ヶ島に行くのは桃太郎でも少し不安でした。
「ありがとうございます。みんな。でも、鬼には鉄砲は効きません。皆さん刀で戦ってもらうことになります。」
「おぅ!やってやろうじゃねぇか!なぁ、みんなぁ!?」
みんなは1人の男…けんさんこと賢五郎けんごろうの問いかけに同意してみんなで鬼ヶ島に行くことが決定しました。
その頃、鬼ヶ島では…
「1度でも宝玉がこの島から離れるとただ戻すだけでなくその宝玉を持ち出した生き物…今回の場合は人間の生贄が必要だと忘れておった。」
「いいか、鬼・太・郎・。お前はもうこの村…いいや、この島最強の鬼だ。今日、お前は元服を迎える。そこで、お前に人間の生贄を1人連れてきて欲しい。」
「わかりました。お父様。この島のため、みんなのために必ずしも生贄を連れて参ります!」
長老の息子…鬼太郎はこの日元服を迎え、村の長おさになる試練として生贄を連れてくることになっていました。
「おーい!!人間が来たぞー!」
「ッ!?なぜだ!?まさかあっちから来るなんて…」
「かまわんッ!手間が省けた!そのまま生贄にしろ!!」
長老の号令で鬼全員が棍棒を持って人間軍に向かっていきました。
「けんさんたちは後ろに回り込んでくださいッ!犬!猿!キジ!共に戦おう!」
「ワン!」
「キィー」
「チューン」
犬、猿、キジは逃げていきました。
「まぁさすがにそうなるか…」
桃太郎は刀を引き抜きながら呆れ気味でつぶやきました。そして引き抜いた刀で鬼を切りにいきました。
キィーン
「なにッ!?」
なんと桃太郎が愛刀として使っていた有名な刀が鬼の棍棒によって折られてしまいました。
「すまないッ!お前達には死んでもらうしかないんだッ!この一撃で楽にしてやるッ!」
鬼太郎は渾身の一撃を桃太郎に振りかざしました。
「桃ちゃんッ!」
グシャ
骨も残らぬ鈍い音。桃太郎が倒れ込んだ先には桃太郎をかばって潰された賢五郎と思われる死体がありました。
「け…けんさん?けんさァァァァァァン!!!」
桃太郎は絶望に陥りました。
「おい…どうしたら人間を許してくれる…?もう仲間が死ぬのを見たくない…」
膝をつき、上を見上げて桃太郎が言いました。それに対して鬼太郎は
「1人生贄が必要なんだ。もう仲間が死ぬのを見たくないんだったらお前が生贄になれお前に罪はないのかもしれないが元は人間が引き起こした戦いだ。」
「わかった…僕が生贄になる…だからッ!みんなは返してやってくれ…」
「わかった。本当にすまない…………………………おい!みんなぁ!もう戦いはしなくていい!そして人間を全員連れてこい!」
鬼太郎の指示で周りの鬼が人間と戦うのをやめ村の真ん中へ集まりました。
「これ…は…」
「けんさんです。僕をかばって死んでしまいました…」
1人の男が桃太郎に問い賢五郎が死んだことを伝えました。
「みんな!本当にごめんなさい…でも、鬼とは分かり合えました。もう戦いは終わりです!もう帰れます!」
桃太郎の宣言と同時に人間軍の顔が少し明るくなりました。
「でも、僕は少し鬼と話をするためにここに残る。みんなは先に帰っていてください。」
「桃ちゃん…本当に大丈夫かい?」
「大丈夫ですよ。僕もすぐに終わらせますから…」
「そうかい?じゃあすまないが先に帰るとするよ。」
人間軍はただ1人…桃太郎を残して帰っていきました。
「もうみんなはいなくなった。生贄にするんだろ?頼む。」
「あぁ、すまない。本当に…」
鬼太郎はそう言い残すと儀式を始めました。
「これで…この島はもう大丈夫だ。」
長老がそう言うと村人全員が明るくなりました。
「桃太郎…すまない…ありがとう。」
鬼太郎がそう言って見た先には…
鬼ヶ島復活の儀式 生贄 人間 桃太郎
そう記された墓がありました。
こうして鬼族はまた、皆が仲良く暮らせる島を取り戻したのです。