王子に捨てられた公爵令嬢は王の養子になって跡継ぎを産むことになりました。
真っ白な教会の中では盛大な結婚式が行われている。
相手はこの国の第一王子アルフレッド・サブドルとその婚約者、公爵家の令嬢、リムベル・ベネットの結婚式である。
新郎アルフレッドは金髪碧眼の美男子で白のタキシードを着て花嫁を熱い、いや、突き刺すような冷たい視線を送っている。
新婦リムベルは黒髪黒目の女性で純白のドレスを着て、花婿を必死で熱い視線を送っていた。
「新郎、病める時も健やかなる時も、妻を愛し続けることを誓いますか」
「………………誓い、……ま、す」
「新婦、病める時も健やかなる時も、夫を愛し続けることを誓いますか」
「誓います」
お互いに指輪の交換をした。
「では、誓いのキスを」
神父がそう言い、アルフレッドはリムベルの白のヴェールを手にかけて、顔をあらわにし、キスをしようとした瞬間、
ばたん!と教会の扉が開いた。
「待って下さい、その結婚、異議あります」
大きな声で少女が言った。
年は16,7位で茶髪緑目の美少女だった。
「マーガレット、無事だったのかい」
「私は、アルフレッド様を愛しています。そして、アルフレッド様も私を愛してくれています。この結婚はおかしいです」
「ああ、俺もマーガレットを愛している。それに、リムベルはマーガレットの命を狙った犯人だ!」
アルフレッドは堪忍袋の緒が切れたように次の言葉を言った。
「最近のお前の俺に対する態度は酷かった。俺と食事をする時は、吐き気がして食欲がないだの、会いに行こうとしても具合がすぐれないだの仮病を使って、俺と会おうしない。それになんだ、その太った腹は少し見ぬ間にぶくぶく太って醜い、それに俺のマーガレットに嫌がらせをして、挙句の果てにマーガレットを誘拐して監禁して亡き者にしようとした。リムベル、この結婚は破棄だ。俺はマーガレットと結婚する」
その言葉を聞いた瞬間、リムベルは血の気を失って気絶した。
白い天井に消毒液の独特の匂い、ベットで寝ていたリムベルは目を覚ました。
「ここは、どこですの」
「やあ、リムベル様、お目覚めですね」
そこに、居たのは優しそうな白衣を着た老人と両親と陛下と王妃がいた。
「ここは、城の医務室で、あなたは結婚式の最中に倒れられたのです」
「そう」
「リムベル様、このような事態にあれなのですが、おめでとうございます。ご懐妊なさっています」
「うそ……」
「リムベルやそなた、アルフレッドと情を交わしたのか」
陛下が言った。
「……はい、私の1月の誕生日の日でした」
「そうか、オスカル、今は5月、お主の見立てで何か月になる」
「ですと、妊娠5か月になりますが、このお腹の大きさですと多産の可能性がとても高いです」
「あの、子をおろすことはできるのでしょうか。オスカル先生」
「この場合ですと、子をおろすことはお勧めできかねます。リムベル様は最悪、二度と子を産めぬ身体となります」
「そうですか……わかりました。それで私はこれからどうなるのでしょう」
「リムベル嬢、この度は誠に愚息が失礼した。アルフレッドはこの際、親子の縁を切って、そなたを養子に迎えようと思うのだが、私もまだまだ健在だ。跡継ぎにはアルフレッドでなくてもよい。どうだ、リムベル嬢。私の娘になってはくれぬか」
私は両親を見て、二人はそうしなさいと微笑んでいる。
「私からも是非、私の娘になって孫を産んで頂戴」
王妃様からも頼まれてしまいました。
「分かりました。そのお話、喜んでお受けさせて頂きます」
それからの日々はあっという間に過ぎていった。
王子に捨てられた公爵令嬢が王の養子となって世継ぎを産むことは大題的に国中に広がった。
あの後、アルフレッド様は王子の身分を取り上げられ、国外へ留学となった。
マーガレット嬢はその後どうなったか知る人はいない。
そして、私は運命の日を迎えていた。いわゆる出産が近づいているのだ。
明け方から何となーくお腹がむずむずしていたのが、だんだんお腹が痛くなってきて、
「は、破水してます」
「うそ、どうしよう。お、王妃様、どうしましょう」
「あら、大丈夫、これからが長丁場なのよ、大丈夫よ」
それから、陣痛と戦いながら、私は三人の子供を無事産みました。
一人目と二人目は女の子。三人目は男の子。
三人とも金髪で瞳が黒の子供たち。なんて愛らしいんでしょう。
それから、私は子育てにいそしんで立派に子供たちを育てあげました。
長女のリリーシャは大国に嫁ぎ王妃になり、次女のマリーベルは国内の貴族に嫁いでいった。
長男のイリックはそのままサブドル国の国王になりました。
私はというと王宮を出て、市井に身を置いて身寄りのない子供たちのお祖母ちゃんになっていた。
この国では私のことはこう言われている「王子に捨てられた公爵令嬢は名君を育てた母である」