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今日は一話だけの投稿で、申し訳ありません。
前回に続き甘い(つもりの)シーンで、なかなかうまく書けなかったのですが、読んでくださる方に、おもしろいと思っていただけるように頑張りたいです!
「いいですか?絶対ベッドから出ちゃいけませんよ。仕事を持ちこむのもなしです。いいですね!」
あの後、強制的にベッドまで連れてかれ、寝かされ、分厚い布団を何枚もかけられてしまった。
「……何個も頼むなら、追加がほしいなぁ…奥さん?」
「“休んでください”とお願いしたんですから、全部一つです。」
彼女はそう言うとタオルを絞り、額の上に置いた。
「お腹がすいたのならお粥を持ってきますが、どうですか?」
「大丈夫だよ。…もう仕事もしないから、部屋に戻りなさい。」
頭を抱えていうと、妻がきょとんとした顔になった。
「え、私もここで寝ますよ?あたりまえじゃないですか。」
「え、でも風邪がうつる……。」
「そうかもしれないですけど、あなたは見てないとすぐに働きそうなんですもの。それにこう見えて丈夫な方ですし!……何かあったときに人が近くにいた方がいいでしょう?」
「あ…うん、そう…。」
実は熱のせいで理性が若干低下しており、こんな状態にもかかわらず、風邪をうつすような事をしてしまいそうなのだが…。
しかし彼女は気にせず、無邪気にいつもの位置にもぐりこむ。
「じゃあ、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
電気を消して、彼女を抱きしめる。……いつもはこんなことはしないのに、今日はおかしなことばかりやっている気がする。やはり風邪で頭がおかしくなっていたのだろう。
彼女も驚いてびくっと震える。
「旦那様!?なんですか?」
「なにもしないよ。それにこれくらい夫婦なんだからおかしなことじゃないだろう?」
「は、はい……。」
しばらくすると、動揺していたはずの妻の方から、忍び笑いが聞こえてきた。
「何をわらっているんだ?」
腕の中で彼女が少し震えている。やっぱり自分は今、周りから見てもおかしいのだろうか。
「いえ、さっきから『妻』とか『夫婦』とかいってるから。…いつもはただ同居しているだけの人みたいな感じで、少し遠い感じがしてたのに、ちゃんとそう思ってくれてたんだなあと思って……嬉しくて。」
彼女も同じことを感じていたのだ。そう思うと、急に申し訳なくなった。
「それは…すまなかったな。」
「あ、いえ、旦那様はお忙しいのですから仕方ありません。ほんとは…いえ!なんでもありません!」
そう言うと彼女は縮こまって、布団をかぶってしまった。…おもしろくないな。
「…そういえばさっきのやつだが…妻だけというのは不公平だと思わないか?」
「え、さっきのって…その、さっきのですか…?」
まったく内容のない事をいいながら、彼女が布団から顔をのぞかせる。その邪魔な布団をばっとはがしてやりたい。
「ああ、そうだ。…というわけで次は私の願いを聞いてもらおうか?」
「ちょ、ちょっと待って下さい!あれってそんな話でしたか!?というか、いつも旦那様からしているのですからなんの代償も払っていないようなっ」
「うるさい。」
あわてて布団の中に戻ろうとする彼女をもう一度抱き寄せて、唇を重ねる。そういえば自分は風邪をひいているんだった。
しかし、やめられずいつもより少し深く長めにキスをする。
「ん!っはあ。苦しい…。」
「で、きみはさっき何を言いかけたんだ?」
「え?」
「さっさと言え。…いままでなかなか帰れなかった詫びだ。叶えさせろ。」
少し恥ずかしくなり、ぶっきらぼうな物言いになってしまった。彼女も顔が真っ赤になっている。
「じゃあ…えっと…その、」
「早く言え。」
「……あなたと、どこかにお出かけしたいなと思ってて。…あんまりそういうのしたことがなかったから。でも、ほんとにいいです!お忙しいのに無理させちゃいけませんから。」
彼女は、慌ててはずかしそうに手を振る。
「…いいよ、行こうか。今はそんなに余裕ないがないんだけど、一週間もしたら休み取ろう。どこか行きたいところは?」
彼女が嬉しそうに顔をあげた。
「いいんですか!?じゃあ…うーん、あ!私、水族館に行きたいです。」
「わかった。楽しみにしていると良い。」
「はい!」
彼女の顔を見ると、とても幸せそうに笑っていた。こんなに簡単に可愛い顔が見られるならもっと普段から優しくすればよかったと思うような笑顔だ。
「さ、そろそろ寝よう。」
「はい、お休みなさい……旦那さま…。」
俺は彼女の頭をポンポンと叩いて、もう一度抱きしめ直すと、今度こそ深い眠りに落ちていった。
お読み頂きありがとうございましたm(_ _)m
ここからは、二人が少しずつ仲良くなっていくのを書いていきたいと思います。
ゆっくり進行ですが、楽しんでいただければ幸いです。