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彼と彼女と花の名前7

更新遅くなり、申し訳ございません。

 その後、「まずは自分に『女』という以外の、自分自身の価値をつけなくては」と思った琴衣は、帝都大学を目指し日々邁進していた。そしてその一方で、懲りもせず結婚を申し込む樹を蹴散らしていた。

「婚約してくれ!」

「ダメです!」

「なんでだ!」

「なんでもですー!」

 …後半はもはや話し合いを超え、口論ですらなく、ただの追いかけっこになっていたが。

 それを見て、すわ好機かと思った女子の一部が、樹に激しくアタックし始めた。琴衣も逃げられるなら、と特に妨害しなかったので、連日、琴衣を追いかける樹を女子の大群が追いかけるという大騒ぎが続いていた。

 しかし樹はその女子たちを地道に一人ずつ懐柔し、なだめすかし、時には脅迫し……半月後には樹の周りには一人の女子もいなくなっていた。

 そしてその経験から、樹はある一つの策を思いついた。

 すなわち『敵を射んと欲すれば、まず馬を射よ。』ではないが、彼女を説き伏せるよりも、彼女が理由にしている『親戚ども』を黙らせた方が早いのではないか、と。

そして樹はありとあらゆる手連手管で、時には犯罪スレスレな手段も用いて、彼らの同意を取り付けた。

…出会ってからいままでの付き合いの中で、あれほど腹黒い樹を見たのは、あの時だけである。

琴衣に逃げられてもニコニコと惚気けて来るのに、次の瞬間には笑ったまま『親戚の老害ども』への血も涙もない策謀を語るのである。…自分も冷徹であると思っていたが、流石にゾッとしたものだ。

そして、樹の根回し(?)がある程度進み、彼が子会社を任され、琴衣が叶栄グループの初の女社長となった年、琴衣はやっとプロポーズを受け入れた。

樹が三十歳、琴衣が二十九歳の春だった。

「おめでとうございますー!!」

「社長、お幸せにー!!」

六月のある大安の日、樹と琴衣はついに結婚式を挙げた。

二人の人脈は凄すさまじく、とても全員は招ききれなかったので、特に親しい人間や、どうしても招かなくてはいけない人間だけで、立食形式ということになった。

樹は十数年の念願がやっと叶ったことで、準備中もひたすら頬を緩ませて、すっかり元の天真爛漫な様子に戻っていた。

琴衣も以前とは違い、なんの陰りもなく、本当に幸せそうに樹の隣に並んでいる。

「あっブーケが投げられた!」

琴衣が持っていた花束を投げ上げる。落ちていく方向へみんなが視線を向けたり、駆け出したりした。

緩く弧を描いたブーケは、ゆっくりと落下していく。そして…

ボスッ

…俺の腕の中に落ちてきた。周りから、残念そうな声が上がる。

「あら、氷海さんが受け取られたんですか。」

人の間から、樹と琴衣がこちらへ歩いてくる。

「他の欲しがってる女性達にそれとなく譲るのが普通だろう。」

「取りたかったわけじゃない。」

「でも、先輩が受け取って良かったかも知れません。…次は、先輩の結婚式に呼んでいただきたいですから。」

「俺は今の所考えてない。」

「ふふ、思わぬ所に縁というものは転がってるんですよ。」

琴衣はそう言って笑うと、頭を下げた。

「…今回は本当にありがとうございました。先輩の助力がなければ、今日の日を迎えられなかったかもしれません。」

「…別に、大した事はできなかった。それに君達は…俺の、大切な友人だ。だから、幸せになってくれて嬉しい。」

「氷海…ありがとな。」

樹が、顔をほころばせながらそういった。かすかに笑みを浮かべて照れながらも、笑い返す

「叔母さまー!」

そこに、高校生くらいのドレスを着た娘が現れた。

「柚衣!来てくれたのね。」

「あ、お話中でした?すいません。」

「いや、そろそろお暇しようと思ってたんだ。…すまないな、会議が入ってしまって。」

「それは仕方ないな。…でも、後で合流しろよ?」

「ああ、終わったら連絡する。じゃあ、後でな。」

「はい、来てくださってありがとうございました。…そういえば、柚衣。誰かお友達を連れてくるんじゃなかった?」

「あ、そうそう!叔母さま、水色のドレスを着た女の子見なかった?」

「ちょっとみてないわね…。」

二人が話しはじめたのを尻目に、俺は式場をあとにした。

「それで、どういう子なの?」

「んー、黒髪でふんわり系美人?その子すごく箱入りでね、本人もあんまり外に出たがらないから、今回さそってみたの。絶対叔母さまと気が合うと思う。」

「そうなの!それは楽しみ。」

「入口で待ち合わせたんだけどいなかったから、もしかしてもう入ったのかなと思って。」

「あ、電話来てるわよ。」

「 その子かも。…もしもし、今どこ?え、まだ駅なの!?違う違う、それじゃ反対よ!…親切なおにいさんが連れてきてくれた?ちょっと待ちなさい!絶対そこから動いちゃダメ!ついて行ってもダメだからね!」

「…なんだか大変そうね。」

「ごめんなさい、叔母さま。心配だから、迎えに行ってくるわ。」

「無理して戻って来なくても大丈夫だからね。」

「うーん。私は戻って来るけど、その子は人混みに慣れてないから、疲れてたら帰らせるかも。…本当にごめんね!今度絶対連れてくるから!」

お読みいただきありがとうございました!

…すいません、1話延びます。次で、本当に完結したいと思います!申し訳ありません!

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