表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/47

彼と彼女と花の名前2

早速遅れ気味ですいません…!(ー ー;)

タイトルは他におもいつかなかったので、とりあえずこのままにしたいと思います。

話が中々進まず、申し訳ありませんが、お付き合い頂ければ嬉しいです。


「おー、来てくれたのか!」

「……勝手にされたとはいえ、約束を破るのは主義じゃないだけだ。」

 次の日約束の場所に行くと、二人が待っていた。皇須がパッと顔を明るくする。

「でも、来てくれて嬉しいよ。ちょっと強引だったが、誘って良かった。花壇は体育館の裏なんだ。昔の園芸部が使っていたらしくてな。」

 校舎から陰になっているので、全然気づかなかった。たどり着いて眺めると日当たりは良さそうだ。

「って、何もまだ植えてないのか?」

「いや、この間始めたばかりだから、まだ芽が少しさか出てないんだ。」

 目を凝らしてよく見ると、確かに小さな双葉が出ている所もあった。

「何の種だ?」

「花の種。」

「…いや、だから何の花の種。」

「たくさん植えたからな…琴衣?」

「私が植えたのは覚えてるけど、樹さんのは『育つまでのお楽しみ♡』とか言ってたから知らない。」

「まあとにかく、何かの花だ!咲いたら分かる!」

 …ものすごく不安だが、とりあえず毒花でないだろう。

「毎日の仕事は、基本的に朝と放課後に水をあげればいい。週に二回くらい集まって作業する。それで、育ったら食べる。」

「…何で花を食べるんだ?」

「あ、言ってなかったか。氷海君がもし入ってくれたら、芋を育ててもらおうと思ってるんだ。」

「はっ!芋⁉︎」

「秋になったら、焼き芋仕放題だぞ。けど、俺と琴衣は花と野菜の育て方しか知らない。」

「俺だって知らないぞ!」

「でも、残りはタネ芋しかないぞ。大丈夫、主な担当はってことだから。」

 …まあ、芋なら育てるのが特別難しいことは無いだろう。

「というか、俺はまだ入ると決めているわけでは無いぞ。」

「分かってるよ。とりあえず今日はこっちの世話を手伝ってくれ。」

 そう言うと、彼は軍手をつけて雑草をプチプチと抜き始めた。ふと見ると、叶栄も自分の花壇に向かって黙々と作業している。渋々俺も置いてあった軍手をつけてよこに並んだ。

「…それにしても、何でこんなことしてるんだ?」

「ん?何だ?」

「いや、どうして、いきなり園芸部なんて始めたのかと思って。」

「まぁ最初はただの思いつきだったんだが…ちょっとやりたいことがあってな。」

 そう言いながらも、彼は目線は手元を見たまま、作業を続けている。

「それより、氷海君のことを知りたい。昨日も本を読んでいたが、好きなのか?」

「ああ…人並みには。」

「昨日読んでたのは何だ?」

「あまり有名では無いんだが…大原省夜という詩人の詩集で…。」

「大原省夜⁉︎君、彼が好きなのか⁉︎俺も好きなんだ!」

「あ、ああ。でも、実を言うと、昨日読んでいたのともう一冊読んだことがあるだけなんだ。…他の作品は見つからなくて。」

「それならうちのお爺様が持ってるぞ。…よし、今週末に遊びに来い。お爺様に貸してもらうから、読んでいけ。」

「…!いいのか?」

「もちろんだ。まさか、あの人を知ってる人がいるとは思わなかった!」

 彼は嬉しそうな顔になると、矢継ぎ早に質問してきた。

「どの詩が好きだ?俺は『夕の影』なんかが好きなんだが。」

「あれは昼の名残の明るさと、近づく夜の闇の対比が素晴らしいよな。俺は、『夢十夜』みたいな幻想的なものが印象深い。」

「そうか…!」

 夢中で話をしながらも、二人とも手は止めない。いつの間にか、雑草の山が二人の脇に、こんもりと積もっていた。

 隣の皇須と話しながら、土の触っていると、指先に奇妙な感触のものがあたった。不思議に思い、そっと土から出してみた。すると…

「うわぁっ、ミミズか!」

「おお、引いたか。」

 指先で動くミミズに、驚き遠ざけようとしている俺とは違い、皇須は顔を寄せるとひょいっと俺の手からつまみ出すあげた。

「よ、よく触れるな。」

「まぁ最初は俺も嫌だったけど、ミミズがいるのはいい土な証拠らしいし。今では、合格印をもらえたみたいで嬉しいぐらいだな。」

 そういいながら、彼は土の上にミミズを戻した。そこが、今作業中のとは別の花壇だったのは、まだ慣れていない俺への気遣いだろうか。

「それにしても、君があんな驚くなんて。びっくりしたよ。」

 そう言われて、先程思わず叫び声をあげてしまったのを思い出し、顔が赤くなった。

(いつもなら、こんな初対面に近い奴の前で、あんな醜態を晒すことはないのに…!)

「てっきりどんなことがあっても、『それが?』みたいな顔してると思った。」

「…それは、見苦しいところをお見せして申し訳ない。」

 くすくすと笑いながら言う彼に、少しムッとして、つい皮肉気になってしまった。

「いや、ずっと澄ましてるのなんかより、俺はそういう方がずっと好きだな。」

 …そう言って破顔した彼に、俺はなんだか体の力が抜けてしまった。

(…こいつには絶対に勝てないな。)

簡単に『好き』なんていう奴は、いままで嫌いだった。上っ面で言っている気がして。

けれど、彼はなんの衒いもなく、そう思ったから言った、そんな感じがした。

お読みいただきありがとうございました!


*このあとも話に出てくる栽培についてのことは、この話の中だけということでお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ