PAGE.3
話の展開はゆっくりですが、どうぞよろしくお願いします。
小路の向こうから、彼女の父親と俺の叔母が現れた。様子を見に来たようだが、目の前の俺達の状況に眉をひそめている。
「まぁ、はしたない!何をやっていらっしゃるの、碧人さん!」
叔母が声を荒らげる。たしかに、倒れた俺の上に彼女がのっかっていしまっていた
しかも、転んだときに引っ張ってしまったせいで、彼女の服も俺の服も少し乱れている。
(…確かに、今来た人からは誤解を招く格好かもしれない。)
案の定、彼女の父親が顔を真っ赤に怒らせながら近づいてくる。俺はあわてて彼女の下から抜け出ると、彼の前に行った。
「申し訳ありません、来宮さん。お嬢さんが倒れたのを助けようとして…」
「この馬鹿者がっ!」
___パァン!
彼の手は俺ではなく、俺の上から慌てて降りてかたまっていた、彼女の頬を打った。
「氷海さんに失礼な事をするなと、あれほど言っただろう!もういい!…碧人さん、娘が大変失礼をいたしました。この話については、後日またお話に伺いますので…。ほら帰るぞ!」
父親に手をひかれて歩き出した彼女は、沈んだ顔をしていて……苛立った。そんな父親の言い草にも。
(まるで、気に入られなかった商品をすぐに片付ける商人のようだ。…いや、実際そうなのだろうな。)
___娘の『結婚』という商品を売る商人。気にいられない様だったらすぐに回収し、次の『買い手』を探すのだろう。
(そんなことさせて、たまるか。)
胸の中で、何かが熱く燃えたぎった。大股で父親に近づき、彼女の手を取り返す。
「いえ、来宮さん。ぜひお話を進めていただきたいですね」
「しかし、娘は失礼を…。」
「いえ、先ほどの件は本当に事故ですし、こちらこそお嬢さんを転ばせてしまいした。…それとも、私がこれくらいの事で臍を曲げるほど、狭量な男とでも?」
こういう時は少し笑顔で。そうした方が、なまじ、真顔で怒るよりも効果がある。思った通り、彼女の父親は、すぐに顔色を変えた。
「いやいや、そんなことは。…では、娘をよろしくお願いします。」
「ええ、幸せにしますのでご安心ください。…澄歌さんもよろしいですか?」
…勢いだったが、良く考えると、本人の許可をもらうのを忘れていた。彼女に向かって確認を取る。彼女は、ハッとなると、慌てて頷いた。
「は、はい!どうぞ、よろしくお願いいたします…」
……そのいった彼女の顔からは、さっきよりも少しこわばりが取れていたように見えた。
お読み頂きありがとうございました。