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氷海さん家のお酒事情7

遅くなり申し訳ありません!今回は少し長めです。

この話で、一応この番外編は(こんどこそ)終わりにしたいと思います。

少しでも楽しんでいただければ嬉しいです!

「…ん。」

朝日が顔にあたり、眩しさで目が覚める。まだ、ぼんやりとした頭がずきずきとする。ゆっくりと起き上がると……いつの間にかベッドに寝ていた。

「朝、か…。」

(…ああ、やってしまった…。)

 寝ようとした時どころか、飲んでいた途中からすでに記憶が全くない。

 …ということはつまり、あの醜態を見せてしまったということである。

「…んあ、碧人さん…?起きられました…?」

 隣で寝ていた澄歌が、まだトロンとした目をこすりながら、こちらをみた。

「あ、ああ。…その、澄歌。」

「はい。」

「昨日、私は何かしただろうか?…すまないが、途中から全く記憶がなくて…。」

「……。」

(…なぜ目をそらす!?)

 顔を赤らめながら、顔を背ける彼女に過去の悪夢を思い出し、顔が青ざめていく。

「澄歌…?」

「あ、いえ、その……あの後、ですよね。碧人さんが動かなくなって、慌てて揺らしたら……いつもよりちょっと…甘いことを言われて…。」

 だんだんか細くなっていく声が告げる事実に、焦りが増えていく。

「えっと、具体的には…?」

「…あ、『甘い唇』とか、『愛しい人』とか…。」

「わかった。すまなかった。もういい。」

 予想以上に精神的打撃を受ける答えに、慌てて言い続けるを止める。

「それで、お水を台所に取りに行ったのですが、かえってきたらもう寝てしまってらして。」

 さらに恥ずかしい。妻に絡んで、挙句の果てにほったらかして寝てしまうなんて。

「私一人ではベッドまで連れて行けそうになかったので、使用人の方に来ていただいて運んでいただきました。」

「そうか……。」

「……あの、碧人さんは知ってらしたんですよね?」

「ああ、一番最初に飲んだ時に思い切り羽目を外したら、次の日大変なことになってな。…ん?どうした?」

 見ると、彼女が不安げな表情でこちらを見ていた。

「そのとき……どなたと一緒だったんですか?」

 布団をぎゅっと握りしめて、彼女が尋ねてきた。

「知ってるってことは、誰か…女性の方にやったことがあるってことですよね…。」

「澄歌……。」

「ごめんなさい。碧人さんは格好いいですし、恋人もたくさんいましたよね。今更私がこんな事言っても、困らせるだけなのに…でも、胸が少しもやもやして。」

 愛しくなり、彼女の頭をそっと抱き寄せる。

「……安心してくれ。他にもいたが、それは樹と琴衣だ。」

「え?」

「三人全員が飲めるようになった日に、一緒にやろうという話になっていてな。琴衣が一つ下だったが、4月生まれで、早生まれの俺たちとあまり変わらなかったから。」

「その時はどんな……?」

 一瞬ためらったが、これ以上は隠してもいいことはない。むしろ樹から変な風に変えて伝えられたりしたほうが大変だと思い、正直に(だが渋々)伝える。


「その時はまだ全く耐性がなかったし、油断してたからな。3・4杯で記憶がなくなった。…それで、ここからは聞いた話だが……。」

「樹に絡みまくっていたらしい。」

「え、琴衣さんではなく…なぜ樹さまに…?」


「わからん。ただ、あっちも酔っ払いだったからな。なかなか楽しそうにしていたと琴衣が言っていた。」

 この後のことも告げるべきか迷うが、毒を食らわば皿まで、と思い、続ける。

「ただ、帰りごろになっても、”帰りたくないー” ”一緒にいてぇー”みたいなことを言い続けてたらしい。」

「…そ、そうなんですか。」

「それで、樹の家について行ってな。朝気が付いたら、いつもとは違う場所に寝てるし、樹たちは若干遠巻きにするしで、事態を知るまで困惑していた。」

 そこまで行ったところで、さすがにひどすぎたかと思った。

「……幻滅したか?」

「え?」

「いや、やはりこんなことになってしまうのは、ふがいないだろう。」

「いえ、全然!私わかりました。碧人さんは酔われると、甘えたがりになるのですね!」

「甘えたがり…。」

 三十路近い男が言われるセリフではない。しかし、彼女は全く含みなどなく言っているのだろう。

「別に、私は嫌じゃなかったです。…むしろ、知らなかったあなたを知れてうれしいぐらいです。」

「でも、驚いただろう?」

「それはまあ…。でも、そんなことで嫌いになるなんてありえませんから。」

「どうして?……まさか、また『旦那さま』だからなんて言ったら怒るぞ。」


「いえ。弱いところでも、情けないところでも、それが『あなた』の一部であるなら、私は大好きになれますから。」


 真顔でてらいなく言われた言葉に嬉しくなる。前に言われたことと似ていて、けれど決定的に違う言葉。

「そうだな。甘えたがりになるのかもしれない……特に、君なんかに。」

「えっ?」

 そういって彼女に覆いかぶさろうとする。しかし、

「くっ。やっぱり頭が痛いな。」

「え、お酒を飲んだ次の日はそうなるのですか?」

「まあ、個人差はあるけどだいたい……そういえば、澄歌は何ともないのか?」

「はい、特に痛くないですけど…。」

 けろっとした彼女の顔には、もう昨日の酒の影響はみられなかった。

(本当か…。)

 昨日彼女は、自分以上に飲んでいたはずである。しかし、よく考えると酔いつぶれてしまったようでもない。…どうやら実は、なかなかにザルのようだ。

「でも、頭が痛いのなら、今日はずっとこうして寝ていましょうか。少しもったいないですけど、瀬角のお休みですし。」

「ああ、そうだな。」

 そうして二人して、また布団に潜り込む。

「ふふ。私今、すごく幸せです。とってもきもちいい…。」

「そうか。」

「はい…。」

 また眠くなってきたのか、彼女の瞼が下がり始める。

「また、やりましょうね…。私、あんな風な碧人さんも、だーいすき…。」

 そういうと、彼女はすうすうと安らかな寝息を立て始めた。

(全く、かなわない気がするなあ。)

 俺は、彼女の髪に柔らかく振れると、ぎゅっと抱きしめてまた眠りに落ちていった。

お読み頂きありがとうございました!


朝チュンですらなくすいません。でも、雰囲気は甘く甘くとこころがけました!

元々、碧人さんの弱点と甘い話を…と考えて、2・3話で完結させるつもりだったのですが……

思い切り長くなってしまいました。


次の番外編は、碧人さんと樹さんたちの出会い話にしようかなと考えております。過去編なので少ないですが、澄歌さんも出ます。

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