氷海さん家のお酒事情3
更新が止まってしまい、申し訳ありませんでした!次の話は、この土日で投稿できるようにしたいです。
今回は少し長めです。一応、あと二回でこのエピソードは終わる予定です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
*糖度急上昇中(当社比)です。
「あははっ!たのしいですね、碧人さん!」
飲み始めて数十分、澄歌の顔はほのかに赤く染まり、陽気そうな様子になっていた。
やはり、特別強いわけではないようだが、それでも楽しそうにいろいろな酒を試している。もうかなりの量を飲んでいるだろう。
「お酒っておいしいんですね。あ、コップがもう空になってますよ!ほらほら、飲んでください!」
「あ、ああ……。」
彼女は常にはなく積極的に、俺のコップにもどんどん酒を注いでゆく。自分ではセーブしているが、彼女から注がれる量はなかなかに多く、すでに頭が少しくらくらしてきている。
「碧人さん……もしかして楽しくないですか?」
ちびちびと注意深く飲んでいく俺を見て、彼女がしゅん、として尋ねてきた。
「いや、そんなことないよ。……どうして?」
「あまり、お飲みになってませんし……やっぱり、お忙しいのにご迷惑でしたか?」
「そんなことはない、ずっと楽しみにしていた!」
酒のせいか、感情の振れ幅が大きくなっているらしい彼女は、みるみるうちに落ち込んでしまった。あわてて、慰める。実際、澄歌とこんな風に時間を過ごせるのは、とても楽しい。
「本当ですか……?」
「当たり前だろ。」
「っ大好きです!旦那様っ!」
そういうと、彼女は顔を輝かせていきなり抱き着いてきた。驚いて倒れ掛かってきた彼女を抱きしめる。
「うわっと。……旦那様と呼ぶのはやめろといっただろう。」
「はい、ごめんなさい!碧人さん!」
謝りつつも、澄歌はニコニコと笑ったまま、さらにぎゅーと抱き着いてくる。
(……まったく、困った絡み酒だな。これは、外で飲ませるわけにはいかない。)
いつもは、恥じらって控えめに近づいてくるだけなのに……これは積極的すぎる。
なにより、腕の中からうるんだ目で見上げてくる彼女は、何とも言えない色気を出している。はにかんだ笑みと上気した頬は、嫌みのない艶っぽさをもって、こちらの自制心を溶かしてゆく。
「よかったぁ……!」
そういいながら、グラスを差し出してくる彼女の手をやんわり押しとどめる。
(やばい、あと一滴でも飲んだら…色々もたない気がする。)
「すまん澄歌。これ以上は……。」
「どうしてですか……?」
(そんな悲しそうな顔をしないでくれ!)
彼女の不安げな顔に、罪悪感が生まれる。
(……どうする?言うか?)
少し迷ったが、これ以上突っぱねることはできなそうな気がしたし、何より、これからもごまかし続けることは不可能だろうと思い、正直に告げることにした。
「…実は私は、飲みすぎると…その、少し恥ずかしいことをしてしまうんだ。だから……申し訳ないが、これ以上飲むとまずいんだ。もちろん、澄歌は飲みたいだけ飲んでくれ。飲めなくても、ここにずっといるから。」
俺がそういうと、彼女は腕から離れてうつむいたまま呟いた。
「……いやです。」
「澄歌?どうしてだ?」
彼女はぽつぽつと話し出した。
「……私は、あなたと、楽しい時間を過ごしたいんです。」
「澄歌…。」
「お願いを聞いてもらってるのに、わがままばっかりでごめんなさい…。でも、あなたが楽しくないのなら…何の意味もないんです。それに……。」
そういうと、彼女は顔をあげて、にっこりと笑った。
「どんなあなたでも、私は見てみたいんです!」
そういうと、彼女は自分のグラスをあおって酒を口に含んだ。そして、こちらに素早く手を伸ばしてくる。
(まずい!酔っ払いだった!)
慌てて身を引くが、間に合わず、首に彼女の腕が絡みつく。そして……
「っん。」
合わさった彼女の唇から、自分の口の中に、ぬるくなった酒が流れ込んでくる。
……口づけの甘さと、酒精に頭が麻痺していく。
慌てて離れようとするが、彼女は抱き着いたまま、さらに深く口づけてくる。 ___っこく
飲まされた酒を全部嚥下すると、彼女の唇がやっと離れた。
しかし、とどめのように、口の端を舌でぺろっとなめられた。
「!」
「ふふっ、どうですかぁ。」
とろけ切った笑顔で、赤くなった目元で、澄歌がこちらを見つめてくる。
(……ああ、やばい。くる……!)
___そう思ったとき、完全に意識が深く沈んだ。
お読み頂きありがとうございました!
この二人、甘い……ですかね?