PAGE.30
本日少し忙しく、一話だけの投稿となってしまい、申し訳ありませんm(_ _)m
明日できちんと完結したいと思います。
あと少しですが、楽しんでいただければ、嬉しいです。
「澄歌っ大丈夫か!?」
「旦那さ・・・碧人さん。」
部屋に入ると、ベッドに寝ている澄歌とその横にいる医者がこちらを向いた。枕元に駆け寄る。
「…遅くなってすまない。何か問題はなかったか?」
「母子ともに健康ですよ。特に赤子の方は、こんなに元気なのは初めて見るくらいです。」
温和な顔立ちをした老医師がにこやかにそう答えた。
「本当にすまない。出産の瞬間にも立ち会いたかったのだが…。」
「良いんですよ。…それより、あの子を抱いてあげて下さい。」
「それでは、私はここで。」
「ありがとうございました、先生。」
老医師が会釈して部屋を出て行く。彼女の頭の横あたりに、小さなベッドが置いてあって…その中に赤ん坊が寝ていた。
「…女の子か。」
「はい。」
実は、彼女は性別が予想できる頃になっても教えてくれず、今日まで男か女か知らなかったのだ 。
「ちゃんと首を持ってあげて下さいね。」
「っと、こうか?」
「ええ、そんな感じです。」
子どもを腕に抱えたまま、枕元の椅子に座る。子どもをゆっくりとあやすように揺らす。彼女は上半身を起こし、それを嬉しそうに見つめる。
この空間に、足りないものは何もない。そう思った。
「…名前を、考えなければ。何が良いだろうか…。」
どんなものが良いだろうか。うんと幸せになれるように、願いをかけてつけてやりたい。
「わたし、ずっと考えてたんです。私達の子にはどんな名前をつけようかなって。…それで、思いついたんです。」
「どんな名前だい?」
「・・・漢数字の『一』に未来の『未』で、男の子だったら『かずみ』、女の子だったら『ひとみ』って読むんです。」
彼女の指が、空中に文字を書くように動く。
「氷海 一未、か。良い名前だと思う。…ただ、どうしてその字なんだ?」
娘をベッドに戻し、彼女に尋ねた。和三や瞳ではなく、一未と書くのに、何か理由があるのだろうか。
「最初の『一』つから、たくさんの『未』来、『未』知のことにたどり着けるようにと。…そして、『一』歩ずつを大切にして、『未』来を目指してくれるようにと思って。」
彼女はそういうと、手を俺の方に伸ばしてきた。
「私は、ただ永遠を望むのは不安なんです。…両親は、それを目指しながら、少しずつ離れていきました。…だから、私はそんなあやふやな『永遠』は欲しくないです。」
微かに震える彼女の手を掴み、両手で包みこむ。彼女もぎゅっと握り返してくる。
「あなたに毎日、今日の…今の『私』を愛して欲しい。そして、こんな風にあなたやこの子の手を持って、一日一日を歩いていきたい。そうして、積み重ねた『今日』を愛して行きたい…です。」
お読みいただきありがとうございました!
タイトルの意味は、こんな感じでした。
明日は、夕方頃に更新すると思います。