PAGE.28
いままでで一番甘くなったような気がします……。
和解してから、2、3か月といったところでしょうか。
普通のイチャイチャ夫婦ですが、楽しんでいただけばうれしいです。
「ただいま。」
「おかえりなさいませ!」
澄歌がいつものようにかけよってくる。持っていたカバンを渡し、抱きしめる。腕の間から彼女が顔を上げクスクス笑った。
「新婚のやり直しみたいですね。」
「じゃ、このままこうしたままでいようか」
「冗談です!ご飯できてますから、行きましょう?」
リビングに入ると、すでに食卓の上に料理が並んでいた。
「やけに豪勢だな。……何か祝い事でもあったのか?」
「え、えっと…。とりあえず座ってください!」
「あ、ああ。」
お互いにいつも座っている席に座る。しかし、澄歌は顔を赤くして俯いたままだ。食べ始めても会話はない。
「で、どうしたんだ?」
たまりかねて尋ねると、彼女がぽつぽつと話し始めた。
「その…最近あんまり体調が良くなくてですね。」
「ああ、今日病院に行ったのか。大丈夫だったか?」
「はい、体調に問題はなかったんですけど…。」
「良かったな。…それでこの料理はなんだ?」
また返事がない。一つ息をふぅーっと吐いて、彼女が言った。
「…できたんです。」
「ああ、これを作れるようになったから作ったという事か?確かに、結婚したばかりの頃からしたらとても上手に…。」
「そうじゃなくて…!子どもが…できたんです!」
澄歌が顔を真っ赤にして叫んだ。
カッシャーン
驚きのあまり、手から滑り落ちたフォークを慌てて拾い上げる。
「す、すまない。……それで、その、本当に?」
「はい…。三カ月だと、お医者様が。」
フォークを机に置いて、澄歌の隣にしゃがみ込む。そっと、まだ膨らんでいない彼女のお腹をなぜると、澄歌はくすぐったそうに笑った。つられて、こちらの頬も少しほころぶ。
「そうか…。それにしても、どうしてそんな恥ずかしそうに言うんだ?」
「だって、嬉しいけど、少し不安で…あなたと出会ったときみたいな気持ちなんです。」
「…そういうことを、こんな食卓で言わんでくれ。」
せめて、とばかりに澄歌を強く抱きしめる。しかし、どれぐらい力を入れていいのかが心配で、慌てて力を抜くと、逆に彼女の方から強く抱きしめてきた。
「私、今一番幸せかもしれません。」
「俺もだ…。ところで、流石にまだ性別は分からないよな。」
「はい…。まさか、男の子を産まないといけないとか、そういったご事情が!?」
「そんなことはないよ。今どきそんなこと言うやつはいない。第一、俺は三男だから後継ぎとかは関係ないし。」
「じゃあ、なんで・・・?」
「いや服とか、おもちゃとか、買っといた方がいいかと思って。そうだ、今度の休日にどちらも買いに行こう。」
「気が早すぎます!大体、どちらかは無駄になっちゃうんですよ?」
「どうせすぐに兄弟ができるさ。」
そう言って、澄歌のお腹にもう一度顔を寄せる。そうすると、聞こえるはずのない胎児の鼓動が聞こえるような気がした。
(…ああ、本当に幸せだ。)
お読みいただきありがとうございました!
デレ100%ですね。書いてるほうとしては、甘すぎな気もするのですが、どうなのでしょうか?
本編は残り三話ほどです。