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PAGE.26

昨日も結局、いつもの量しか投稿できず申し訳ありません。

今回は少し短めです。なので、あとがきのところに、帰り道の一シーンを入れてみました。

まだ少しの間、澄歌の視点で続きます。

楽しんでいただければ、幸いです。

「…ん。って、あれ?ここ私達の部屋…?」

 ぼんやりと天井を見ると、見慣れた、だが久しぶりにみる壁紙が貼ってあった。

いつの間に帰って来たのだろう。…たしか車に乗って、そこから記憶が曖昧だ。

(もしかしなくても、私寝ちゃったの!?確かに少し疲れてたけど!)

 せっかく彼と仲直りして、好きだと言ってもらえたのだ。なのに寝落ちてしまうなんて!

 慌ててベッドからはね起きる。頭が少しくらくらした。

「ああ、起きたな。腹はすいてないか?」

 ドアを開けて、彼が入ってくる。右手に持ったトレイには食べ物とコップが載っている。

「とりあえずこれを。…ぬるいコーヒーだ。寝起きにはこれくらいのものが一番いいだろう。

「はい…ありがとうございます、旦那さま。」

「…名前。」

「え?」

「さっきは名前だっただろう。…君に、もう旦那さまと呼ばれたくない。ちゃんと名前で呼べ。」

 少し不貞腐れたような声に、笑みがこぼれる。

「はい…碧人さん。」

「よし。」

 彼は私の頭をなで、トレイの上からサンドイッチを手渡した。受け取ってモグモグ食べる。

「帰ってきてくれてよかった。…それにしても、義父上はどうして最後にあんなこと言ったのか。」

 碧人さんが不思議そうに呟く。確かにそれまでの態度からは考えられない言葉だった。

 …しかし私はなんとなくその理由が分かるような気がした。

 できれば、話したくはないと思っていた。けれど、話さなければならない。

 意を決して、語りかける。

「…碧人さん。私の母について何か知っておられますか?」

「たしか、君が幼い頃に亡くなられたと聞いたが…?」

「…はい、表向きはそうなっています。でも、噂で別の話も聞いたことあるのではないですか?」

 彼が一瞬気遣うような表情をした事で、彼も知っているのだと分かった。

「おそらく、大筋は噂の通りだと思います。…母は私が五歳の時、家を出て行ってしまったんです。…しかも他の男性の方と。」


 二人で車に乗った後、さっきからどうしても気になっていたことを聞くことにした。

「……そういえば、いつからだ?」

「えっ?」

「その、さっき私の事を好きだと言ってくれたが……『旦那様』でなくなったのはいつからだ?」

 恥ずかしいが、とても知りたい。彼女もあ、とかその、とか呟くだけで、なかなかはっきり言わない。

「その、ちゃんと自覚したのはさっきなんですけど…。」

「…!……いやいいんだ、気にしてないから!」

「で、でも多分!最初にお会いした時から…その、好意を抱いていたと思います。あの時の碧人さんはとても紳士的で、優しくて、格好良かったですから。」

「…ふーん。」

 顔が赤くなるのが分かる。彼女もあの時自分をかっこいいと思ってくれていたのか。

 しばらくすると、助手席からかすかな寝息が聞こえてきた。…どうやら寝てしまったらしい。確かに今日は色々な事があって、疲れた。

(そういえば、水族館に行くときもこんな風だったな。)

 思えばあの時から、自分の気持ちも彼女の気持ちも大きく変化したものだ。

彼女も俺も、あの時はお互いを見ているようで、すれ違っていたんだろう。

 ____でも、もう二度と離れたりしない。手離すなんて絶対にしてやらない。

「…愛してるよ。」

 眠っている彼女の頭に手を置き、ぽんぽんと軽くたたく。…彼女の顔が少し微笑んだ気がした。



お読みいただきありがとうございました!

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