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PAGE.19

初の澄歌さんからの視点です。

改めて女性視点から描くのはなかなかうまくいかず、試行錯誤しています。

澄歌さんの、最初の頃の心情などが出てくるのは、もう少しあとになる予定です。

少し暗めですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

____ここに帰ってきて、何日が経つだろう。そんな事をぼんやりと考えながら、椅子に腰かけて、窓の外を眺めた。

別に、時間が分からなくなるような部屋に閉じ込められている訳ではない。しかし、頭と心が働かないのだ……あの日から。

(旦那さま……。)

 心の中で呼び掛けると、思い浮かぶ顔は、最後に見た、辛そうに顔をゆがめている顔だった。それを思うと、胸が痛くなる。

(そろそろ、家に帰られたかしら。居なくなった私に怒っているかな?)

 ……それとも、もう興味も失っているだろうか。怒らせた挙句に、勝手に家からいなくなった女の事など。

 そんな事を考えると、勝手なのは自分なのに、また胸がずきっと痛んで、涙がこぼれそうになった。

 あの日、私は最初……本当に、彼がどうして怒っているのか、分からなかったのだ。

『政略結婚』とは、波風が立たないように夫を愛し、夫婦生活を営んでいくのが最善なのだと、そう思っていた。けれど、

___結婚していなければ、誰かを愛することはないのか?…『俺』を見ようとはしてくれないのか!?

 あの日、いつもは優しく、温かい大好きな声で、そう詰問された時、胸になにか痛い物が刺さったように感じた。

(分からない!私は、あなたが好き。……けれど、これが『あなた』に向かっての気持ちなのかが分からないの!!)


____ダッテ、ワタシハソレガタダシイト、ズットオモッテイタンダカラ。


 自分でもわからなくなって、ぐちゃぐちゃの心で返した答えは、彼を決定的に怒らせた。…そして、彼は行ってしまった。私を拒絶して。

 彼が去った部屋に一人残された私は、もう、何をしたらいいのか分からなくなってしまった。

 ……自分は、これが正しいと思っていたはずだ。けれど、彼は去ってしまい、私もこんなにも心が痛い。

(これの、何が正しいというの。)

 気がつくと、ぼろぼろと泣いていた。彼をすぐにでも追いかけたかったが、また拒絶されるのが怖くて、どうしても動き出せなかった。

 結局、走り出した彼の車を部屋の中から見つめていただけ。そんな自分のふがいなさに、更に涙がこぼれてくる。

 しばらくすると使用人の人たちが来てくれて、片づけをしながら慰めてくれた。

 そんな優しさにこたえようと、頑張って立ち直ろうとしたものの、一人になると、どうしても思い出し、気分が塞いでしまった。

 次の日、何もする気が起きなくて。ぼんやりといつもの椅子に腰かけていた。

 前の方をみると、そこはいつも彼が座っている席で、また涙が出そうになる。

「……旦那さま。」

「澄歌!」

 振り返ると、そこにいたのは父だった。まったく似ていない二人をまちがえるなんて……私はやはり、彼が恋しいのだろうか。

「お父様!?どうかされたのですか?」

「澄歌!ああ良かった。さあ、家に帰ろう。」

「え…?」

 突然来て、父は何を言っているのだろう。不安そうな顔をした私をなだめるように父は続けた。

「氷海さんがおっしゃったんだ。彼女はとても疲れているようだから、一旦実家帰らせると。その後のことは、おいおい相談すると。」

「……本当なのですか、それは?」

 実家に帰された後、『その後の事を話し合う』…それは、離婚することを彼は考えているのだと推測させるのに十分すぎるほどだった。

 頭が真っ白になる。……どうして、私はその事を考えていなかったのだろう。

 氷海と来宮は、この結婚によってもう充分に業務提携を行えるようになった。彼が、もう嫌っている妻との離婚を考えても影響はないくらいに。

 青ざめていく私に、父は話し続ける。

「澄歌、すまなかった。…彼なら、お前を幸せにしてくれると思ったんだが。しかし、心配することはない。私にすべて任せておけばいい。…さあ、いくぞ。」

 父に手をひかれて、椅子から立ち上がる。積極的に動こうとしない私に苛立ち、父は先ほどよりも強い力で腕を引っ張った。

 途中で使用人達に止められたが、父は氷海さんに言われてきたと何度も言う。

 父のそんな強気な態度を見て、やはり、碧人さんが言ったのだと、確信が強まっていく。

 こうして、父に連れられ実家に帰ると、私は元々自分の部屋だった場所に通された。家具などはおいたままなので、準備する手間がないからだろう。

 それからはずっと部屋に運ばれる食事を食べて、だれも部屋に来ないのをいいことに、日がな一日中ぼうっとしていた。

 ここには、彼を思い出すものは何もなくて……とても安心できる。そんな風に逃げることしか、弱い私にはできなかった。

 ……しかし一昨日から、今までは誰も入ってこなかった扉が開いて、人が室内に入ってくるようになった。

 がちゃっ

「澄歌、調子はどうだい?」

「…お父様…!」


お読みいただきありがとうございました。

追記:ご指摘いただいたので、起こって→怒ってに誤字訂正いたしました。

これからは気をつけたいと思いますm(_ _)m

教えてくださり、本当にありがとうございました!

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