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いつもより、少し短めです。
重い雰囲気が続きますが、ハッピーエンドなので、ご安心下さい。
澄歌さんの考え方の経緯などは、この後出していく予定です。
楽しんで......とは、今回さすがに言えませんので、少しでもドキドキしていただければ嬉しいです。
澄歌はキョトンとした顔で尋ね返してきた。
「聞いていらっしゃったのですか?...意味、といわれましても…妻が夫を愛するのは当然だと、それ以外に特に意味はないですよ?」
彼女は、なぜ俺がこんな事を聞いてくるのか分からず、少し困惑しているようだった。だが、俺もそれを気にかける余裕はなかった。
「…妻、ね。じゃあ、別れたらどうなるんだ?」
「えっ?」
「離婚したら、すぐに愛情は無くなるのか?結婚していなければ、誰かを愛することはないのか?」
「......。」
彼女が黙り込む。だが、俺の気持ちはどんどん昂ぶってくる。
「私は、君だけが私の『妻』だと思っている。だがきみは...『旦那様』じゃなく『俺』を見ようとはしてくれないのか?」
「それは…。」
「たとえば、別れて誰それとすぐに結婚しろと、すぐに愛せと言ったら、そいつが『旦那様』になったらすぐに愛しいと思えるのか?…おれとおなじくらい?」
彼女は答えない。俯いたまま、唇を噛み締めている。
いつの間にか、ご婦人がたは退室していた。そういった気遣いが、とてもありがたかった。
もう、言葉をつなげるのがつらかった。一言言うたびに、自分も、そして澄歌のことも傷つけている。それでも、彼女の否定してくれる言葉を聞きたくて、どうしても言いつのってしまう。そして答えない彼女に、さらに激情をぶつけてしまう。彼女が小さな声でやっと答える。
「…わたしは、そうするように言われて育ちました。ですから…そうですね。もしかしたら、できるかもしれません。」
「っもういい!」
これ以上聞きたくなくて、無理矢理会話をきる。二人の間に沈黙が落ちる。...その時、俺の携帯が震えた。
「ああ、わたしだ。…そうか、わかった。…ああ、すぐに戻る。」
「...どうかされましたか?」
「会社で少し問題が発生した。今から戻る。」
携帯をしまって、くるりと踵を返す。彼女の声が後ろから飛んできた。
「あの!お夕飯は…」
「いや、今日は帰れないだろうからいい。」
何とか、話をしようとする澄歌の声を、冷たい声で拒絶する。机に置いていたカバンをもう一度つかみ、振り向かずに部屋を出た。
バタンと部屋の扉が閉まった時、二人の間の何かも遮断されたような気がした。
お読みいただきありがとうございました。
これはあくまで、フィクションでお願いします。実際には、こんな風に考えている人はいないと思います。