PAGE.14
今回はいつもより、少し短めです。
けっこう甘くなるように頑張ったのですが、うまくいかないです。
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです!
樹と部下によって澄歌への愛情を自覚させられて以来、彼女の事を前よりも見つめることが増えた。
「な、なんですか?旦那さま。何かおかしいところでも...?」
「いや、なんでも無いよ。」
見ていると、澄歌は笑っている事が多いが、その他にも料理で悩んでいたり、本を読んで泣いていたりと、表情がころころ変わるので、全く飽きることがなかった。
それは今までも目にしていた日常のはずなのに、今更気付くとは不思議なものだ。なんだかもったいないことをしていたような気までしてくる。
また、彼女に触れる事も多くなった。といっても、歩いている時に手をつないだり、寝ている時に、そっと体に手を回したりする程度だが。
けれどそれだけでも、とても温かい気持ちになった。彼女がそれで少し顔を赤くしながら笑っていたりする時も。
なんでも無い日常で、こんなに人を愛しく思えるようになるとは、ついぞ想像もしていなかった。少しずつ重なった想いが、いつしか、かけがえのないものとなっていた。
そうして日々を過ごしていると、樹の言った通り、彼女もきっと、俺にそれなりに好意的な気持ちを持ってくれていると思えた。少なくとも、家族としての親愛ぐらいには。
…本当は、誰より一番に想ってくれないかと願ってしまっている自分も確実に心の中にいるのだが。
あの後実現した、琴衣とのお茶会も、樹達二人が休日の日を考えて開かれた。
琴衣はもちろん、彼女が連れてきた婦人方ともとても仲良くなれたようで、二回目以降は妻たちの予定が会う日に月一ほどの頻度で開催されている。
___今はまだ、本当の夫婦愛でなかったとしても、いつか彼女からも同じ想いを返してもらえるように、ゆっくりと二人、過ごしていこう。焦ることは何もない。
箱入り娘だった澄歌にとっては、身の回りのものはまだまだ新鮮に感じるようで、毎日興味深々にすごしている。だから、まだ、恋などには意識が向いていないのだろう。
その頃の俺はのんびりと、そんな事を思っていた。
お読みいただきありがとうございました。