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PAGE.12

ここから、話がどんどん動いていくと思います。

まずは、頑なな旦那さまから。

なかなか上手に書けず唸っていたのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

「今日も美味しそうな愛妻弁当ですね!」

 会社でお昼時に、妻が持たせてくれた弁当を広げると、目ざとい部下がすぐにからかってきた。

「いいですねぇ。私にはお弁当作ってくれる奥さんどころか、一緒に食事してくれる女性もいませんよ。」

 覗き込んでくるのを振り払いながら、言い返す。

「別に『愛』妻じゃない。ただの『妻』だ。」

「…うわ、きっついですね!そんなこと奥さんに言っちゃだめですよ!」

「そうだそうだ!それに氷海、この弁当にはしっかり愛情が入っていると思うぞ!…うちの琴衣なんか頼んでも作ってくれないし。」

「やっぱりそうですよね!社長、奥さんの事もっと思ってあげて…ってえええ!」

 ついいつも通り相槌を打ってしまった部下が慌てて飛びずさる。

 そりゃそうだろう、なんたってそこにいたのは・・・


「やっほー!氷海。少し遊びに来たぞ!」

「……だれだ、この馬鹿をうちの社内に入れやがった奴は。」


 ___大財閥皇須(こうず)グループ社長、皇須樹。俺の友人であり、主な厄介事の種であり、一番重要な取引相手である。それがいきなり現れたのだから、部下が驚くのも無理はない。

「いや、普通に入れたぞ?社員とすれ違っても『お久しぶりです〜』とか言われて止められもしなかった。」

 ……うちの会社では、こいつは社長である俺の友人という認識しかされておらず、そこそこ気軽に社員と交流をしている。

 まさか、世界でも五本の指にも入る大財閥の総帥が、一企業にこんなに足繁く通うとは思わないのか、もしくは訪ねてくるたび俺が遠慮なくたたき出すからか、全く怪しまれていない。

 ___と、いうわけで、こいつの正体を知っているのは、かなり上の社員だけとなっている。

「それにしても、お前がこんなかわいらしい弁当を食べているとは。人とは変わるな〜。…ちょっと寄越せ。」

「はあ?お前なんかにどうして食わせなければならない。これは私のものだ。」

 冷たい声が出た。ハッと樹を見るとあちらも目を見開いている。

「…すまん。」

「いやいや。しかし羨ましいなあ!琴衣は最近あんまり作ってくれないんだよお〜。」

「それさっきも言ってたな。」

 いきなりしくしく泣き始めた。…さっきまでの罪悪感がきれいさっぱりなくなった。

 ちなみに、奥さんの琴衣は俺と樹の高校時代の後輩である。こいつの言い分だけを聞くとずいぶん冷たい女性に聞こえるが、三人とも同じ部活で三年を過ごしたので、彼女がそんな人ではないことを俺は知っている。

 要するに、こいつがさぼってうちに来ると、取締役の彼女にそのとばっちりが行く。それで忙しくなった彼女が、こいつに対し冷たくなる。そしてそれを愚痴るために、こいつがうちの会社に来る頻度が増える。それの無限ループである。

 リセットされるのは月に一回二人でとれる休みだけ。万年新婚気分のこいつはそれでも寂しいそうだが、彼女はそれすらもうっとおしいと、前に愚痴っていた。

 樹が突然顔を明るくした。こいつはすぐ泣くが、引きずることはなく明るい顔に戻る。。

「そうだ!お前、この前奥さんと水族館に行ったらしいな!仲がいいみたいで、よかったよかった。」

 友人のことを心から喜べる。……その、能天気なほどの裏表のない性格が、部下達に慕われているる理由だろう。そして彼女がこいつを選んだ理由も。

「…別に、そういう訳じゃない。さっきも言ったが、精々嫌いではないし、嫌われてはいない…その程度だ。」

 それは、いつも周りに言って来た事。いつも自分に言い聞かせていた事。それを繰り返しているだけだ。

(…なのに、どうして胸に響く。)

 部屋が突然静かになる。ややもして、樹が呟いた。

「…ふーん?でもさっき、おれが弁当に手を出した時、お前えらい剣幕だったよな?」

「それは…ただ苛ついただけだ。自分のものを誰かに譲るのは、俺は嫌いだ。」

「知ってる。でも、いつもはそんなの表に出さないだろう。俺は、お前がそんなに露骨に執着しているのを見た事ない。それに水族館も、本当に楽しかったんじゃないか?」


お読みいただきありがとうございました。

本当は少しだけ、碧人さんが琴衣さんに、片思い未満の思いを抱いていた…とか考えたのですが、若干ドロドロになりそうだったのでやめました。

本編では普通に友人です。たまに、樹さんの愚痴を言うために会ってるぐらい。

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