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いつもよりちょっとだけ短いです。
次から(やっと)日常に戻ります。とっても長い一日ですね。
少しでも楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです。
こうたと別れた後、折角だから土産屋に寄って帰ろうということになった。
彼女は、そこも楽しかったようでコップやらタオルやら色々な物を買っていた。大きな袋を持っているせいで、ふらついている。危ないので慌てて取り上げる。
「今日は楽しかったですね、旦那様!」
「そうか?大量に水を浴びたり、迷子の子供に振り回されたり、大変だったが。」
「た、たしかにイルカさんは誤算でしたけど!でも、こうたくんはかわいかったですよ?」
「そりゃ、君は『お姉さん』だったからな。わたしは『おじさん』だ。」
「えっと、私が童顔で、それと比較しちゃっただけですよ、きっと!」
慌てて、彼女がフォローしてくる。
「まあ澄歌からみても私なんか『おじさん』だろうからな…。」
「そんなことないです!」
彼女ととりとめないことをしゃべりながら車に乗り込む、発進させてからしばらくした後、彼女がぽつりと言った。
「いつか、こうた君みたいな子どもと、今度は三人できたいですね…。」
「…別に今日だけじゃなく、行きたい所があったらどこだってつれてってやるぞ。」
結婚してから数ヶ月経つのに、俺達の間に子どもができない事を、彼女が少し気にしているのは知っていた。
しかし、俺はそういうのは本当にめぐりあわせだと思っている。
…まあ、いつかは彼女との子どもがほしいとは思うが、まだ若いのだし急ぐ必要はないだろう。
しかしそう言っても、彼女はますます落ち込むだけなので、別の話題を探す。
(…そうだ、忘れていた。今日一番腹が立った事。)
「そういえば、昼間男達に絡まれていただろう。ああいうのには毅然とした態度を取らないと、離してくれないぞ。」
「すいません…男の方に慣れていなくて。でも、大丈夫です!私には旦那様がいらっしゃいますから。」
「…まあ、今度からは気をつけなさい。」
「分かりました!」
「なあ…。」
「はい?」
…向けられる信頼の心がとても嬉しくて、同じくらい恥ずかしいと言ったらどうなるだろうか。流石に自分のキャラではないと思い、精一杯感謝の心を伝えようとする。
「また、どこか行きたいところがあったら言いなさい。…一緒に行こう。」
「…はい!」
帰りはそれ以降、二人とも何も話さなかった。しかし、居づらさは全く感じず、穏やかな時間が車内に流れていた。
お読み頂きありがとうございました。