3つの剣
今まで生きてきた14年間で、こんなアホな体験したことなかった。
『あなたが欲するのは、金の剣ですか? 銀の剣ですか?
それとも鉄の剣ですか?』
「…………」
どっかで聞いたような三択です。
ただし、これは夢なのだ。
夢だとはっきり自覚できる夢。ここ最近学校で噂の“呪いの夢”、なんだろう、多分。
本当にこんなことが起きるなんて。
『あなたが欲するのは――』
わたしはさっきから延々、この質問を聞かされている。特にタイムリミットはないみたいだ。だけど答えない限りは夢からも覚められないってことだろう。
ええと。どんな話だっけ、これは。
ちゃんと友達の話を聞いておけばよかったんだけど……
「とりあえず鉄の剣は……」
軽くのぞき込んでつぶやく、と。
『鉄の剣は“武力”です』
答えがあって、びっくりした。
泉の女神みたいな仕様のこの……人? は、てっきり決まり文句しか言わないものだと思ってた。
「じゃ、じゃあ……銀の剣は?」
『銀の剣は“知力”です』
「……金の剣は?」
『金の剣は“財力”です』
「なんかよくわかんないんだけど」
それぞれの象徴ってこと? それともどれかを選んだら、たとえば金の剣にしたら、お金がざくざく…とかいうことに?
『あくまで手にするものは“力”です。どのように利用するかはあなた次第です』
……心、読まれた?
さて。昔話のセオリーでいくと、回答は「全部いらない」が正解。それで全部が手に入るはず。
だけどこんなもん全部手に入るってのも、なんか気持ち悪いなぁ。
いっそのこと「全部ほしい」とか言ったら、どうなるんだろう。
『すべてを欲するということは、すべてが等価。
欲するものなしと判断いたします』
ああ、そうですか。
『ただし、“力”は使わずにいることもできます。必要に応じて取り出すことのできる力、それがこの剣』
……
てことは。
選ばないっていう選択はありだけど、全部は選べないと。
選ぶとしたら一つだけと、そういうこと、かな。
…………
『あなたが欲するのは、金の剣ですか? 銀の剣ですか?
それとも鉄の剣ですか?』
“金”、は危険だ。お金ばっかりほしがって破滅したってのは、よくある話。
かといって“鉄”も…特にほしいわけじゃないな…
うん。よし。
「銀。わたしは銀の剣がほしい」
言うと、泉の女神(仮)は微笑んだ。
『それではこれを、お持ち下さい』
あっさりと、柄まで銀色の剣を渡されて。
わたしは夢から覚めた。
『――では次のニュースです。
昨日夕方、××市、○○高校の女子生徒が、学校の屋上から転落し死亡しました。
警察が調べたところ、女生徒の部屋には、「すべてを知ってしまった。世界に飽きた」との謎の書き置きが遺されており、自殺の可能性が高いと見て、捜査を――』
END




