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THE・ログインvo1  作者: 秋葉時雨
36/40

FILE:36『戦争(ウォーズ)』

ーードン!!

「うわぁ!!」


アウトローの攻撃でバルハラ・ルミナがまた大きく揺れる。そのせいで、バランスを崩したハジメが倒れそうになるが、その前にアカネが素早く駆け付け、少年を支えた。


「ハジメ・・・大丈夫?」

「あ、ありがとう!アカネ」


ハジメの感謝の言葉でアカネの顔が赤くなるが、今はそれ所ではない。

外では蘭丸率いるアウトロー軍団がバルハラ・ルミナに集中放火を浴びせているのだ。


「サラ様!神殿自体はグラフィックなのでダメージはありませんが、このままではイベント運営が出来ません!

いかがいたしましょう!?」

「何を呑気な事を!!早く防衛機能を作動させるのです!」


慌てふためく天使達に、サラが怒鳴り声を上げる。

しかしWB社の社員である天使は、上司である彼女の指示に驚きの表情を浮かべた。


「て、天の雷ですか!?しかし相手はアウトローとは言え、一般ユーザーなのですが・・・」


何故か神殿を守る事に天使が躊躇いを見せる。

その「防衛機能」と言う奴は、恐らくユーザーに使うにはマズイ物なのだろう。

だが躊躇する部下に対し、サラはゾッとする程冷たい笑みを浮かべた。


「フッ、構いません。愚かなアウトローにシステムの力を見せてやるのです!」

「りょ、了解しました」


女神が再度、指示すると通信が途絶え、モニターがまた『エデン』の様々な場所に切り替わる。

と、それまでシステムのやり取りを見ていた焔がおもむろに神殿に繋がる転送装置の方へ歩き出した。


『焔、何処へ行く?』


勝手に外へ出て行こうとする鬼人を、ヴァーカードが静かに止める。すると焔は振り返らず、落ち着いた口調でこう答えた。


「すいません、ヴァーカードさん。俺も外の連中片付けて来ます。

奴らだけは、どうしても俺の手でケリを着けたいんです」


口許に笑みを浮かべる鬼人だったが、ヴァーカードはすぐに気づく。

その手が怒りに震え、力強く握られている事を・・・そして彼が冷静な態度を取る時、その胸には静かな決意が燃えている事を・・・

こうなった時、彼を止めるのはまず無理だ。

長年の付き合いでその事を知っているヴァーカードは長い首を振り、小さくため息をついた。


『分かった。だが外では何が起こるか分からん。十分に注意して行くんだ』

「・・・はい!」


全てを悟った上で自分を送り出してくれる白竜の言葉に焔が力強く答え、転送装置へ乗り込む。

その姿を何故か冷ややかな眼でサラが見ていた。


「彼を止めた方が良いですよ。今、外に出たら間違いなく防衛機能の巻き添えを食いますから」


あまり興味がない様子でサラがヴァーカードに忠告する

彼女にとって焔も蘭丸も、どうでも良い存在なのだろう。


『ご忠告感謝する。だが、焔も今まで死線をくぐり抜けて来た猛者。自分の身は自分で守れる』

「そうですか?なら、構いませんが」


大して心配した様子も無くヴァーカードがニヒルに笑う

すると、つまらなそうに表情を歪めたサラがまた端末を操作し始めた。


「ではそこで見ていなさいシステムの力を・・・。ここでアウトロー達がまるでゴミの様に駆逐されて行く姿を」


そう言うとまた画面が一つの映像を映し出し、サラが端末のボタンを押す。

画面に映し出された光景ーーそれは外でバルハラ・ルミナを攻撃しているアウトロー達の姿だったーー。


ーードカンドカン!ボカン!!

「撃て撃てぇ!!ドンドン撃つっスよ〜!!」


才蔵の号令で周囲から耳をつんざく様な爆音が響き渡る。

アウトロー達がリーダーの指示によってバルハラ・ルミナに一斉射撃しているのだ

こちらは蘭丸がいる山の向かい側。

バルハラ・ルミナを挟む様に配置されたこちら側では、阿国と才蔵が部下達を取り仕切っていた。


(たくっ、蘭ちゃんも無茶苦茶なんスよね〜!チェイサーの本部に殴り込み掛けるなんて!!)


傍らで退屈そうに岩に寄り掛かりながら、髪の毛を弄ってる阿国を見つつ、才蔵が大きくため息をつく。

蘭丸の命令で、メンバーを集めたのは自分だ。荒くれ者であるアウトロー達の中でもチェイサーと戦うと聞き、渋る者もいる。

それらを何とか説得し、時には脅しも使ってようやく集めたのだ。

一番隊ではNo3に収まっているが、様は隊の面倒事を全て任される役に過ぎないのだ。


(いつもいっつも面倒な事は俺っちにやらせるんスよね〜。あのクソチビ!!)


ブチブチ文句を言いながら攻撃を続けるハンターアウトロー。

リアルでも顎で使われているだけに、腹の中では蘭丸への不満が燃え盛っている

しかし反抗する勇気も無く、弱いルーキーユーザー達を狩って、せめてものストレス発散をするぐらいしか出来ない。

才蔵とはそう言うユーザーだった。


「ねぇ、あれ何?」


と、それまで興味なさ気にしていた阿国が神殿の方を指差す。見ると黄金に輝くバルハラ・ルミナが、今まで以上に光り輝き始めたのだ。

そのあまりの光に、才蔵はもちろん周りにいたアウトロー達まで手で顔を覆い始めた。


キュイーー・・ン!キュイーー・・ン!

「うわっ!なんスか、これ!?何事っスか!?」

「ちょっとぉ・・・これ、ヤバイんじゃない!?」


神々しい光景と、それに似合わない妙な金属音を鳴らす神殿に、阿国と才蔵の顔色が変わる。

最近やられ癖の付いて来た二人は、敏感に身の危険を察知したのだ。

確かに彼らの言う通り、それはただ光っている訳ではない。

バルハラ・ルミナの防衛機能が作動したのだ。


「天の雷、チャージ90%!いつでも撃てます!!」

「目標捕捉!敵、アウトロー集団ドラゴンレイン!!」


神殿内部では天使達が特別なメニューを開き、発射に向けて着々と準備を進めている。

そして神殿地下では、大画面を見ながらサラが天使達の報告を聞いている。

大画面に写るアウトロー達の姿には次々とロックオンのマークがついて行く。

そして傍らでハジメ達が見守る中、準備完了と言う報告を聞いて女神が笑みを浮かべた。


「天罰執行!!天の雷、発動しなさい!!」

ーーポチッ!


高らかにサラが言い放った途端、天使達がメニューのENTERキーを押す。

そして、次の瞬間ーー。


ーーキューーン!キューーン!キューーン!・・・ドォオオーーーン!!

「うひゃあ!!」

「きゃあ!!」


眼が開けられない程の光が、神殿から巨大な光線となり天空に向かって発射される。

するとフィールド上を厚い雲が覆い、何と雷の雨がとなってアウトロー達に振り注いで来た。


ーーピシャーーン!!ゴロゴロゴロ〜〜!!

「うわぁ!!何だ!?」

「ぎゃあ!!た、助けてくれぇ!!」


それまでバルハラ・ルミナ攻撃に夢中になっていたアウトロー達も突然の事態に驚く。

ある者は雷の雨に打たれゲームオーバーになり、ある者は悲鳴を上げながら逃げ惑う。

しかし無数に降り注ぐ雷を避け切れる訳も無く、次々と爆音と悲鳴と共に数を減らしていく。

神殿を守る岩山は一点、阿鼻叫喚の地獄絵図と化して行った。


「ひぇえ〜!!何んスかこれ!?どうなってるんスか!!」

「ちょっと蘭丸ぅ!!どうすんのよぉ!!」


アウトロー達の悲鳴が響き渡る中、才蔵と阿国も何とか雷を避け、時には味方を盾にして逃げ回っている。

しかし、向こう側の山を見るといつの間にか蘭丸の姿がない。

彼らはパーティーを組んでいるため、やられればすぐ分かるのだが、まさか自分達を置いて逃げたのか?と最悪の考えが二人の頭に浮かんだ時、背後で足音がした。


「ここにいたのか」


突然呼びかけられ蘭丸か?と思い、振り返った二人だったがその顔が一瞬で凍り付く。

そこにいたのは仮面ユーザーではなく赤髪の鬼人。

不敵な笑みを浮かべ、肩にアックスギターを乗せた焔だった。


「よう!探したぜ?お前ら」

「嘘ぉ!?な、なんでお前がここにいるんスか!?」


ある意味、蘭丸より質の悪い相手に思わず才蔵が叫ぶ。ハジメ達が神殿の中にいるのは分かっていた。

だが、この雷の中をくぐり抜けて来たのが信じられない。

周りにいたアウトロー達も焔の悪名は知っているのか?逃げるのを止め、ただ呆然と立ち尽くしていた。


「あの蘭丸とか言う仮面野郎を探してたんだがな?見つからねーんで、隣の山見たら逃げ回ってるお前らを見つけたって訳だ。

それにしても・・・」


喋りながら焔が辺りの惨状を見回す。時折、彼の頭上にも雷の雨が降って来るのだが、まるでハエでも掃うかの様にアックスギターで切り払ってしまっている。

その光景に、阿国も才蔵もア然とするばかりだ。


「システム相手にこれだけの大敗・・・。

ゲームオーバーになった連中は間違いなくアカウント停止だろう。

《ドラゴンレイン》だってタダじゃ済まねぇ。

・・・どっち道テメーらはもう終わりだな」


何故かそうつぶやく焔の表情には、憂いの様な物があった。それはまるで、故郷が失われたかの様な淋しげな表情である。

彼の胸中を一体、今どんな感情が支配しているのだろう?

それは誰にも分からないが、アウトロー達が次々とやられていく光景を前にして、鬼人の表情が突然変わった。


「テメーらのアウトローとして道は終わった。

もう二度と会う事もねーだろ?なら最後くらいきっちり片着けてやる。

それが俺の・・・先輩としての落とし前だ!!」

「なななな何、訳の分からない事言ってんスか!!」

「そうそう!調子に乗るんじゃないっつーの!!」


言い放った焔を前に阿国も才蔵も身構える。

周りにいたアウトロー達も我に返り、いつの間にか鬼人は十数人の敵に囲まれる形となっていた。


「ヒャハァ!!数は減ってもまだまだこんだけいるっスよ!!」

「私らは終わらない。アンタを狩って、まだまだこの世界を楽しむんだから!!」


多勢になった途端、態度がデカくなった阿国と才蔵が凶悪な笑みを浮かべる。

今だから分かる。

あれがバーカードが言っていた濁った眼の連中だ。

自分の事しか考えず、相手を傷付け喜ぶ外道の眼である。

自分も以前あんな眼をしていたのかと思うと、虫酸が走る。

そしてそんな連中が《ドラゴンレイン》を語っている事に、心底腹が立った。


「覚悟しな?テメーらに・・・《ドラゴンレイン》に弔いの歌を聞かせてやるぜ!!」


相棒のアックスギターを前に突き出し、焔が叫ぶ。

赤髪の鬼人とアウトロー軍団の戦いが今、始まろうとしていたーー。



「どうですか?システムの力は?」


一方、神殿の中ではアウトロー達がやられて行く姿を見てサラが、優越感たっぷりで聞いて来た。

圧倒的な力を見せたのでその背中には、どうだと言わんばかりの自信が満ち溢れている。


「これがユーザーと監視者の差。野蛮なアウトローがいくら集まっても、決して私達に勝つ事など出来ないのです」


惨状を見ながら笑うサラの表情には、アウトロー達を憐れむ様子は一切無かった

確かに相手は人を傷付けるアウトローだが、こんな恐ろしい力をユーザーに平気で使う女神に対して、ハジメは恐怖を感じずにはいられなかった。


(これが監視者?シュウ兄ちゃんはこんな仕事をしてたって言うの?)

「・・・これは人に使って良い力じゃない」


と、それまでハジメの背後にいたアカネが急に前に出て来てつぶやく。

その非難的な言葉に、女神の肩がピクッと動いた。


「何ですか?言いたい事があるんならハッキリとおっしゃって下さい」

「・・貴女の判断は間違ってる。システムとしてアウトローを規制するのなら、あんな乱暴な方法を使わなくても済んだ筈。

貴女はただ自分の力を見せびらかしたいだけ」


珍しく雄弁に答える少女の言葉に一瞬、振り返ったサラの顔が真っ赤になる。

だが、すぐに落ち着きを取り戻し、平静を装う。

そして、今の醜態を取り繕ろう様に無表情で応え始めた。


「・・なんと言われようとこれが私のやり方です。

部外者である一般ユーザーが余計な口出しをーー」

ーービ〜!!ビ〜!!ビ〜!!ビィ〜〜ッ!!


せっかく澄まし顔で語っていた女神の反論は、突如鳴った警告音によって掻き消される。

これにはさすがのサラも不快感を露にし振り返ると、大画面にまた天使達の姿が映し出されていた。


「サ、サラ様!!緊急事態です!」

「いい加減にしなさい!!今度は何ですか!?」

「そ、それが神殿内に侵入者が・・・ぐわぁ!!」


慌てた様子で報告をしようとした天使だったが突然、苦痛の表情を浮かべて倒れ込む。

その背中に突き刺さっていたのは赤い大きな刃・・・!

そして、その背後で狂笑を浮かべていたのは、白装束に身を包んだ仮面ユーザーだった。


「ヒャハハハッ!!ご苦労さん!!」

「ぎゃあ!!」


大斧を引き抜き、振り上げた蘭丸はもう一人いた天使にも切り掛かる。

天使も応戦しようとするが、あっという間に間合いを詰められ、敢え無く切られてしまった。


「ぐわぁ!!」

「ハハハッ!おい、クソルーキー見てるか!?早く出て来ねーと、テメェのせいでチェイサー二人がゲームオーバーになっちまうぜ?」

ーーガン!!ザーーーッ!!


天使が使っていた通信機を奪い取り、蘭丸が捨て台詞を言い放つ。

その後通信機を破壊されたのだろう。天使達との交信はそこで途絶えてしまった


「何と言う事!アウトローユーザーがこのバルハラ・ルミナに!?」


予想外の緊急事態にサラが唇を噛む。

部下がやられた事より、蘭丸が侵入した事にショックを受けている様だ。


「・・害虫を駆除して来る。ハジメとヴァーカードはそこにいて・・」

「駄目だ!!そんなの許さないよ!!」


と、そんなサラに軽蔑の眼差しを向けながらアカネが上の神殿へ戻ろうとすると、屋中にハジメの絶叫が響き渡る。

驚いたアカネが振り向くと、少年は血が出そうな程拳を握り、小刻みに体を震わせている。


「ハジメ?」

「アカネ、ボクを守ってくれるのは嬉しい。だけど、もう一人で戦おうとはしないで!ボクはもう自分のせいで君が傷つくのを見たくない!!」


少女の身を案じ、ハジメが振り返りもせず言い放つ。

少年は怒っていた。以前岩窟王との戦いで何も出来なかった自分に・・・。

そのせいで焔だけでは無く、アカネにまで危ない眼に合わせてしまった。もうこれ以上、誰かが傷付いて何も出来ないのはたくさんだったのだ。


「ボクも行くよ。蘭丸の目当てはボクみたいだからね」

「ハジメ・・・」


キッと顔を上げた少年の顔には、強い決意が秘められていた。それは、守られている者が出来る表情ではない。

この三日間の特訓で得た戦士としての面構えである。

自分を心配し、前より格好良くなったハジメの姿を見て、またアカネの頬が赤くなった。


『よし、ならば私も行こう。女神サラは念のためここで待機してて戴きたい』


そんな二人を見てヴァーカードも苦笑を浮かべる。白竜に命令された女神は不満げな態度を見せたが、やがて肩を竦めた。


「・・・分かりました。どうやらアウトロー達が襲って来たのも貴方達が原因の様ですし、敢えて止めません。

ですが、何があっても一切私は責任を負いませんので、そのつもりで」

『了解した。でわ少年、アカネ。パーティ会場へ出向くとしよう』


端末を捜査するサラに見送られながら、ハジメ達が転送装置である床の紋章に足を踏み入れると、広大だった部屋が、あっという間に金色の大神殿へと変わる。

そこで少年達が眼にした者ーーそれは天使達にトドメを刺す蘭丸の姿だった。


(続く)

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